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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

ライブ・ベック!

 ジェフ・ベックについては、『ブロウ・バイ・ブロウ』(1975)と『ワイアード』(1976)の2枚のLPだけもっていた。この2枚はジャズ・ロック=フュージョン系ギターインストの金字塔である。これに匹敵する作品といえば、ラリー・カールトンの『夜の彷徨』ぐらいしか思い浮かばない。
 信じていただけないかもしれないが、学生時代、『ブロウ・バイ・ブロウ』収録のバラード「哀しみの恋人たち('Cause We've Ended As Lovers)」をよく練習したんですよ。今でもコード進行、覚えてるもの・・・出だしは、Cmadd9→A♭maj7→Fm7(13)→Csus4/C でしょ? 
 『ブロウ・バイ・ブロウ』 以前のベックについてはまったく興味がなく、『ワイアード』 以後のベックについては期待していたのだが、期待はずれのまま長い時間が過ぎて興味が失せてしまった。「哀しみの恋人たち」のような情感に訴えるギターは聴かれなくなり、ただ機械のように技巧的な演奏が耳障りになっていった。

 この一月たらずのあいだに、その評価が反転した。またしてもユーチューブですよ。2006年の日本でのライブをみたんです。ジェフ・ベックは速弾きをなかば放棄し、音の選択とコントロールを最重視するギタリストに豹変していた。ずいぶん以前かららしいけれども、ベックはピックを使わず、ジョー・パスのような4フィンガーの肉引きで、小指は振動アームにひっかけて一つひとつの音に微妙な彩りを添えている。これを堕落とみる若いロック・ファンもいるようだが、インスト・ギタリストとしての頂点に近づく凄い進化だとわたしは感じた。
 ふと、ジャコ・パストリアスの演奏が頭をかすめた。1970年代、ウェザー・リポートのステージで「トレーシーの肖像」や「ティーン・タウン」を演奏するジャコの姿は神がかっている。ジャコの音楽は計算しつくされていた。じつに慎重に音を選択し作曲しており、即興のパートでもいたずらに指を動かそうとはしていない。
 ベックも音を慎重に選択している。ジャコと違うのは、ベック自身、ほとんど作曲しないことだが、無駄なアドリブを避けて元曲の良さを引き出そうとしており、アドリブの部分もあらかじめ使う音を決めているように思われてならない。これと真反対のギタリストがアル・ディメオラであり、スティーヴ・ルカサーであり、渡辺香津美だ。どんな曲を弾いても同じアドリブで、指を速く動かせばよいと思っている。

 わたしの手元にはすでにベックのCDが4枚届いている。開封したのはまだ2枚だが、『ライヴ・ベック3 - Performing This Week... Live at Ronnie Scott's』(2008)はとくにお気に入りで、九州のレンタカー紀行以来、長距離ドライビングには欠かせない音楽になってしまった。
 今年、最も衝撃をうけたギタリストはジェフ・ベックだった。ハリーの『ゲイトウェイ』とジェフ・ベックのライブシリーズはしばらく車の6連奏チェンジャーに納まったままだろう。

  1. 2008/12/31(水) 00:22:41|
  2. 音楽|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:3
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コメント

門永です。ご無沙汰しています。実は当方「ブロウ・バイ・ブロウ」の信者でして、先だって長年紛失していたバンド譜を落札したばかり。
ダイヤモンドダストをアコギデュオでやりいたいな~とここ数年おもっているのです。
  1. 2009/01/01(木) 18:22:10 |
  2. URL |
  3. 門永哲郎 #-
  4. [ 編集]

門永さん

コメント、ありがとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
さて、ジャズというのは即興演奏のための音楽ですが、即興演奏は出来不出来の差が大きいので、音楽として必ずしも成功を納めるとは限りません。というか、即興演奏が音楽の質を下げてしまう場合がままあります。これがジャズに「名盤がない」と言われる最大の要因ではないか、なんて思ったりするのですね。コルトレーンのコンボに、エリック・ドルフィーがゲスト参加して、二人が即興のバトルを繰りひろげるさまを視て、「やっぱり、ドルフィーのほうが凄いわ」なんて思いながらも、かのドルフィーですら同じような即興演奏を繰り返している。現場でライブに接すればど迫力に圧倒されるかもしれませんが、CDで聴いても、もう一つってとこがあります(映像のないトミー・エマニュエルの演奏も似たような感じがします)。一方、ジャコは音楽のフレームをきちんと作り上げていて、即興のパートでも、即興ではあるけれども、ある程度の道筋を予め決めているように思われてならないのです。だから、「よい音楽」になるのだと言ったら言い過ぎかもしれませんが、手癖に近い無駄なアドリブを排除し、作曲パートも即興パートも慎重に音を選択している。ベックの最近の演奏もそれに近い域に達してきたんじゃないでしょうか。フォープレイの演奏で、リトナーのほうがカールトンより好まれるのも、そのあたりの違いかもしれません。余談ですが、わたしはネイザン・イーストというベーシストに前から注目してました。クラプトンのバックも完璧だし、フォープレイでは見事にボブ・ジェームスのコンセプトを表現している。イーストなら、ボブ・ジェームスにもカールトンにもあわせられるけれども、カールトンとジェームスのあいだに音楽感の差があって、これが埋まりきらない。だから、リトナーの時代のほうが良かった、と言われるのではないでしょうかね・・・つまり、リトナーのほうがジェームスのコンセプトをよく理解して、慎重に音を選択している、ということなんじゃないか、と。
  1. 2009/01/01(木) 21:54:36 |
  2. URL |
  3. asax #90N4AH2A
  4. [ 編集]

門永です、こちらこそ挨拶を忘れておりました、今年もよろしくお願いします。
新年会でいろいろ話が聞けるかと楽しみにしていましたが、春までおあずけ残念です。当方昨今アコギ音楽への偏差が著しく、反省せねばとおもった矢先、高校時代のハードロック仲間から電話で、今月先輩とライブをやるから来たれたし、演目はくらぷとん先輩「ジェフ・ベック」。レインボー大好き君は「フォープレイ」!
  1. 2009/01/04(日) 11:33:30 |
  2. URL |
  3. 門永哲郎 #-
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