
連休があけて、加藤家の庭は花盛り、白や薄紫や赤いサツキ、黄色い菖蒲が池畔を彩る。また、杉苔はあたかも絨毯のように庭の全体にひろがり、みずみずしい緑の織り糸に露を滴らせている。その姿は芝生にも似ているが、芝生には杉苔のような濡れた艶やかさがない。日本人の心性に訴えるのは、あきらかに杉苔のほうである。

加藤家の庭に繁茂する杉苔をみていて、不思議に思った。苔は樹陰に生育する。陽光のあたらない湿っぽい場所が、かれらの生存に適した環境だからだ。ところが、加藤家では、陽光がふりそそぐ庭の中心部に杉苔がパウンドのような厚みをもってひろがっている。
「水位が高いんですね、とすれば、家の基礎が心配になります」
と指摘したのは、某助手であった。
まことに適格な示唆であった。庭に面する南田石(福部産の凝灰岩切石)が近年著しく破損しているのも、水位の高さという理由で説明できなくはないだろう。水位の変化を誘因したものは何か。ひょっとしたら、裏山で進む姫鳥線(高速道路)の工事と関係するのかもしれないが、もちろん、そういう理解を裏付ける科学的根拠があるわけでもない。

午前中、加藤家に木造住宅推進協議会(木推協)の重鎮をお迎えした。「ローコストによる古民家修復」の意義を切々と訴えたところ、深くご理解いただき、まずは加藤家主屋に顕著な不同沈下の修正について貴重なコメントを頂戴した。さらに、今後は、住宅全体の修復&リフォームに対してプロジェクト・チームを結成すべきという合意にほぼ達した。鳥取環境大学浅川研究室と木推協による共同のプロジェクトが本日をもって胎動することになったとすれば、ちょっとした記念日として後世に語り継がれるかもしれない。
午後はP1&P3(1・2年)に3・4年の3名を加えた測定班が民家内で実測に励んだ。じつは、この日、4年の某移籍選手がデビューした。岡村、ノビタに続く移籍組で、毎年一人必ずあらわれるからおもしろい。いずれじっくり紹介したい。
- 2006/05/11(木) 23:50:53|
- 建築|
-
トラックバック:0|
-
コメント:0

今日は初めての1、2、3、4年生合同でのプロジェクト研究を行いました。加藤家の修復については、以下のA・B・C・D・E班に分かれて活動を行うことになりました。
A:古材バンク班(古材の収集と整理)
B:イロリ班(イロリ・自在鉤・火棚の復原)
C:測定班(柱傾斜、床レベル、伏図・断面図等の実測と修復のための基本設計)
D:模型制作班(加藤家主屋1/30模型の制作)
E:情報発信班(加藤家ホームページの制作)
わたしはA・B・E班の総勢25人余りと旧八東町の保木本家住宅の見学へ行きました。C班は加藤家、D班は大学の演習室で活動しました。
保木本家裏手の駐車場に降りると、見えてきたのが大きな榎(エノキ)。保木本家は別名「榎欅草堂」ともいい、正面にケヤキ(欅)の巨木、背面にエノキ(榎)を配しているのです。エノキの大きさに感動しながら、塀をこえ内部へ入っていきます。この家は長く空き家でしたが、4年ほど前から環境大学の1期生ゴルゴさんがハナレに住むようになりました。しかし、ゴルゴさんは最近大阪で修行中でして、今日はご不在でした。みたところ、屋敷や庭は少々廃墟化しているようです。壁につたがはえ茂りうっそうとした雰囲気。主屋は芽葺。幕末から戦前にかけて築かれた建築と庭園の複合遺産です。主屋内部には囲炉裏があります。火を起こし囲炉裏を囲んでの保木本家住宅の説明をわたしが担当しました。それが終わると、庭園の探索です。庭はまったく手入れがされていなく、緑を掻き分け奥に進んでいきます。ただ、手入れしたらすごくきれいな庭になるにちがいないのでもったいないです。見学が終わると、各班に分かれて活動し、終了しました。(環境デザイン学科4回生Y.A.)

[「榎欅草堂」を訪ねて -古民家探訪Ⅳ]の続きを読む
- 2006/05/11(木) 18:50:17|
- 建築|
-
トラックバック:0|
-
コメント:0