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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

回想「廃材でつくる茶室」2004-2005(Ⅴ)

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ツリーハウスの棟上げ
 「懸造(かけづくり)」という建築用語をご存じであろうか。いちばんわかり易いのは、京都の清水寺本堂や吉野の長谷寺本堂のような建築様式だ、と言っても、まだおわかりにならないかもしれない。
 「清水の舞台から飛びおりる」という大げさな表現があるように、前方から一望する清水寺本堂はものすごく高い舞台のようにみえる。だから、これを「舞台造」とも呼ぶ。清水に「舞台造」という呼称はふさわしいけれども、われらが三徳山三仏寺投入堂は、おなじ建築様式でありながら、「舞台造」という呼び方では、その姿をイメージできない。やはり「懸造」のほうがしっくりくる。要するに、懸造とは、山の斜面に仏堂を建設する場合、斜面の上側(後方)では建物の床面が接地するのに対して、前方では大がかりな高床構造になるものをさす。だから、宗派に関係なく、山の斜面に立地する場合、敷地を平坦に整地しないかぎり、その仏堂は懸造のスタイルをとらざるをえない。さらに敷衍するならば、この地形適応様式は仏堂に限られるわけではない。人の住まいであれ、納屋であれ、山の斜面や河川敷に立地するならば、なんだって理屈上「懸造」になるはずだ。じっさい、中国四川省重慶の漢族住宅、同じく貴州省ミャオ(苗)族の住居はこの形式をとり、それを漢語で「吊脚楼(ちょうきゃくろう)」と言う。

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 大学裏山に建設することになったツリーハウスは、この「懸造」=「吊脚楼」 のスタイルを採用することにした。理由はいくつかある。まず、大学の裏山には、平坦地に樹木が林立するような敷地がなかった。厳密にいうならば、裏山に平坦地がないことはないのだが、そこは私有地と校有地がいり混ざっていて、学生が自由に活用できなかったのである。校有地は山道に沿う傾斜面にひろく分布しており、構法の安定性からみても、床面上の構造物を支えるには、道に近い位置で接地させるしかないと判断した。
 道から3~4メートル離れた位置に直径30~40㎝ほどの広葉樹が4本立っていた。そのうち2本の股の位置がほぼ水平に近かったので、そこから道に向かって2本の大きな竹をほぼ平行にわたした。もちろん完全な平行でもなければ、水平でもないのだが、この2本の丸竹がツリーハウス建設の基準材となった。
 前々回であったろうか、アメリカで出版されるツリーハウスの指南本を批判した。大地に根をおろし生命をはぐくむ樹木にボルトをねじ込んでなんともない無神経さに呆れかえると述べた。しかし、良好な敷地を求めて、樹木を観察すればするほど、そういう「無神経さ」も無理からぬことがわかってくる。家を建てようにも、樹木が四角形に配列されている場所もなければ、股の高さも違う。今回の敷地でも、斜面下方に樹木は集中しているが、上方の道よりに柱となりそうな大木は存在しなかった。となれば、柱を立てるしかない。敷地まわりの林で太めの雑木を伐採し、はじめに並べた2本の竹(大引)に接して結びつけたてる。そのまま梁を架け、桁をわたし、一気に棟木まであげた。2004年5月27日に着工して、2週間後の6月10日には棟上げをむかえた。
 棟上げの後、竹で作ったグラスに氷と発砲酒を入れて飲んだ。まずいはずの発泡酒をあれほど美味いと思ったことはない。 (続)

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  1. 2006/06/06(火) 19:12:06|
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