蕨田の棚田 九州におります。目的は全国の重要文化的景観視察でして、個人的には
近江→
岩手→
北海道に続く第4弾、研究室としてはキム姉たちの
愛媛があるので第5弾であります。今日(22日)は佐賀でして、いちばんの目的は唐津市の重要文化的景観「蕨田の棚田」ですが、それだけではもったいないので、有田内山重要伝統的建造物群保存地区と吉野ヶ里歴史公園も視察しました。
最初に触れておくと、わたしが吉野ヶ里に言及するのはまずいのね。とくに復元建物については口を閉ざさなきゃいけない。ただ、「国営公園」の問題は大変ですね。えらい建設ラッシュでしてね。復元事業という名の開発が猛烈に進んでいる。国交省の管轄になると、こうなるんだ。ご存じのとおり、われらが平城宮も「国営公園」化が決まっていまして、当然のことながら、吉野ヶ里みたいに復元建物の建設ラッシュになるということですよね・・・世界遺産登録解除かな?? 世界文化遺産辞退を申告してから、大量の復元建物を建てればいい。


さてさて、唐津市の重要文化的景観「蕨田の棚田」は素晴らしい。参りました、白旗です。北海道の
平取をみて、「これなら全国どこの田舎でも重要文化的景観になれる」と思ったものですが、「蕨田の棚田」は「名勝」指定されてもおかしくないほどの審美的価値をもった「文化的景観」です。これに匹敵する風景を探すとなると大変だ。鳥取県内にはないかもしれない。しかし、「文化的景観」にとって審美的な価値は最も重要な要素ではないはずなんです。その地域の歴史を反映する土地利用の特殊性がみとめられることが重要なはずで、それが美しいかどうか、は二の次だから、ここにいう「景観」とは視覚的風景ではなく、人文地理学的な景観であって、だから平取や本寺だって重要文化的景観の選定対象になるのだと、わたしは勝手に思っている。
「蕨田の棚田」はすでにそうとう大々的な「介入」がなされています。ひとつは石垣の修復ですが、もう一つは棚田のオーナー制度。いちばん高いところにある「大平の棚田」はすでに地域農民による耕作が放棄されたのでしょうが、佐賀だけでなく、長崎や福岡の方々がオーナーとなって耕作が続けられています。こういう制度は棚田に限らず、過疎地の休耕田にもっと採用されるべきでしょうし、板井原のような過疎集落の空家もまたセカンドハウスとして都市居住者に売却もしくレンタルすべき時代を迎えているように思います。いちばんよいのは、空家と休耕田をセットで提供することでしょうが、これには行政がそうとう力をいれて支援する必要があるでしょうね。

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- 2008/12/24(水) 00:38:34|
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