第15章 鏡の内側p.88-95:岡垣訳
1.賈母は体に疲れを感じたので、休息をとるため稲香村に行って休みたいと思った。
鳳姐(王熙鳳)はあわてて人を呼び、竹の椅子を持ってきて賈母がその上に
座るのを手助けするように命じた。二人の侍女が賈母を担ぎ、鳳姐、鴛鴦たちは
その後をついて行った。賈母の面倒をしおえると、鴛鴦はまた劉ばあさんを
訪ねて来た。
2.鴛鴦は劉ばあさんを連れていろんなところを歩き回った。一同もみな、
後について冗談を言った。しばらくして「省親別墅」という牌坊の下に到着した。
3.劉ばあさんは寺廟だと思い、腹ばいになって叩頭の礼をし、さらにまことしや
かに言った。
「この牌楼の上の字ぐらい、私もすべてわかりますよ。」
4.続けて劉ばあさんは、自信満々に言った。
「これは、まぎれもなく「玉皇宝殿」の四文字ですよ。」
一同は、手をたたき足を踏み鳴らして笑った。
5.突然、劉ばあさんは腹が痛みだしたので、すぐに侍女を探して彼女を連れて
お手洗いに行った。侍女は、劉ばあさんにその場所を教えると、すぐに戻って
行った。
6.劉ばあさんは少し腹を下し、長い間しゃがんでいたが、やっと終わったので、
やおら立ち上がると、頭がくらくらして目が眩み、帰り道がわからなくなった。
7.劉ばあさんは道なりに歩いて行った。やっとのことで一つの入口にたどり着き、
ただ頭に花を挿した老婆が部屋に入るのが見えた。
8.劉ばあさんは笑って言った。
「あなた世間を知らないにもほどがあるでしょ、頭に花を挿すなんて。」
その老婆は笑うばかりで返事をしなかった。
9.劉ばあさんは、富貴な家柄には姿見の鏡があることをとっさに思いつき、
心の中で考えた。
「鏡の中にいるのは私かもしれない!」
10.劉ばあさんが触れると、やはり鏡だった。まさか鏡の上にスイッチがあるとは
誰が知ろうか、劉ばあさんは無意識のうちにそれを押し、別の部屋に入って
いった。
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- 2010/01/05(火) 00:01:12|
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