イントラムノス 時間が前後してしまうが、24日、マニラまでもどって1泊した。
マニラ空港に迎えにきたガイドは、日系2世の女性だった。日本語が非常に上手い。旅行社の正職員で、ユニフォームらしき赤いポロシャツを着ている。年齢は、おそらくわたしとあまり変わらないだろう。フィリピンの首都は健全だと思った。
ホテルに移動するバスのなかで、どんな寝室を希望するか訊かれた。ツインでも、ダブルでも、セミダブルでも、なんでもご用意できますが、と彼女は問う。いや、一人旅ですから、どんな部屋でもかまいません、と答えた。これは伏線ともいうべき問答である。
とても豪華なホテルにチェックインし、あてがわれた部屋は17階のダブルだった。昨日までのツインのコテージとは雲泥の差がある。そこで、女性ガイドは真剣な眼差しに変わった。
「置屋のようなところがあるんです」
まさか、と思った。そういう場所があることは知っている。しかし、女性のガイドからこの種のお誘いをうけるとは思いもよらなかったのである。
「あなたは女性ですから、日本の男が置屋に行って妓を買う手助け
をするのは嫌なんじゃないですか?」
「いえ、これは仕事ですから。うちの会社では、若い女子社員も
そういう仕事をちゃんとしています。」
力強い言いようであった。「仕事」という言葉から分かるように、置屋に入る代金の何パーセントかが旅行社に流れる仕組みになっているのは間違いないだろう。代金は置屋に1万円、妓のチップに5千円だという。

じつは、後日詳報することになるけれども、マクタン島のファクトリーでギターを購入してしまい、すっかり懐が寒くなっていた。
「すっからかんなんですよ・・・からっぽ、です」
「なにが、からっぽなんですか?」
「財布がですよ・・・」
置屋の件は丁重にお断りした。ガイドは、瞬時、不機嫌な顔になった。例外的な日本人だと思ったにちがいない。
『地球の歩き方』に、この手のことで、とんでもない被害を受けた例がいくつも出ている。やっかいなことに、ヤクザと警察ができているというのだ。これはガイドも認めた。妓を部屋に連れて帰り、ことに及ぼうとした瞬間、警察官が部屋に入ってきて、買春防止法をふりかざし、20万ペソを請求されたと書いてある。これは極端な例かもしれないが、最後の最後に余計なことをして、マクタン・ビーチの想い出を台無しにしたくない。
しばらくシエスタをして、夕方からイントラムノス(後出)をめざした。
ホテルを出るとき、何名かの白髪の日本人が小柄のフィリピン女性を連れてミニバスから降りてきた。みな堂々とホテルに入ってゆく。なるほど、これか。置屋帰りの殿様たちというわけだ。伽をする女性と、夕食から朝食まで時間をともにするのである。わたしが2時間ばかり前の誘いに同意していたら、この一行と同じバスに乗っていたのかもしれない。ちょっぴり羨ましいと思う一方で、移動方向が真反対である自分に満足を覚えていた。
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- 2011/03/26(土) 23:37:05|
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