
9月4日、松江市の真名井神社と神魂神社の拝殿の調査をOBメンバーを中心におこないました。出雲市青木遺跡の復原模型の建築設計に反映させるための基礎的調査です。神社建築は本殿の資料が数限りなくありますが、拝殿となると驚くほど少なく、今回あらためて出雲地方における拝殿の特性を考えるよい機会になりました。
当日は真名井神社を午前、神魂神社を午後に略測・写真撮影などしましたが、まず神魂神社の拝殿から報告します。神魂神社は、2年前の隠岐出雲巡礼でも訪れています。私はこれで3回目の訪問となり、何かしらの縁があるのではないかと心の隅で思っていた次第です。まずは拝殿の参拝、そして、6名がおのおの担当の作業をおこないました。

神魂神社拝殿はこけら葺き切妻造妻入平屋建で正面に向拝がつきます。平面は梁間1間×桁行3間。低い基壇の上に礎石を配置し、床を少し揚げています。平側に板壁と板しとみ窓がつきます。
神主様からの聞き取りによりますと、前身建物は現在のものより小さく、桁行き2間であったそうです。たしかに、桁には2間+1間の繋ぎ痕跡がみえます。背面側の2間分が大正再建時の当初規模で、正面側の1間分が付け足されたものと思われます。本殿木階正面に拝殿の中央がくるように設計されていることなどが伺えます。
妻飾の虹梁は2重になっていて、おそらく当初の2間分の桁と複合していたものでしょう。桁にのる下側の梁に絵様はありませんが、その下の飛貫の位置にある虹梁には絵葉があり、遠くからみる限り、渦は結構細くて丸くなっています。18世紀後期~19世紀前期のものを桁とともに再利用したのでしょう。
この拝殿は大正年間に再建されたものですが、すでに述べたように、当初は梁間1間×桁行2間の平面でした。ただし、梁間1間は2間分を中央柱を抜いて飛ばしたものですから、平面は2間×2間の正方形に近く、本殿の平面と近似しています。本殿の場合、正面2間の片側に木階をおきますが、その木階の位置を拝殿の中心軸にもってくるため、拝殿梁間中央の柱を省略したという言い方ができるでしょう。これを大正年間に建て替えて、桁行を3間にのばしたわけですが、桁の継ぎ足しが明瞭に看取でき、梁や妻飾(束立)などは江戸期の前身建物の部材を再利用した可能性が想定されます。

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この日は台風の影響で雨が降り続け、実測するにはコンディションが悪く苦戦しました。しかし、木綿街道での実測の経験が活きて、なんとか1時間ほどで自分の担当分を描き終えることができました。
拝殿の調査をご快諾いただいたこと、宮司さまに深く御礼申し上げます。
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- 2011/09/18(日) 01:30:29|
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