仙台市縄文の森広場 銀幕に覆われた山田上ノ台(仙台市縄文の森広場)は、すでに名勝地の風格を漂わせている。竣工後7年を経て、市街地の歴史公園は着実にその存在感を増していると実感した。
震災の被害はなかった。垂直壁のない伏屋式の竪穴住居は強い。ときに「柱が太すぎるのでは?」というご批判を頂戴しているようだが、検出された柱径よりもやや太くすることで耐震性は増す。そういうねらいが設計段階からあった。3.11大震災で倒壊もしくは破損していた場合、昨日も述べたように、土屋根竪穴住居の復旧は優先順位の最下位に回されたであろう。現実には、かの大震災に際して、3棟の竪穴住居は微動だにしなかった。構造と木柄の勝利である。

メンテナンスも良好だ。大雨が降ると10号住居で雨漏りするが、煙出にビニールシートを被せれば雨漏りはとまる。樹皮葺きの棟飾りに似た煙出キャップを工作してはどうか、と提案した。大雨の前にキャップを被せておけば、雨は漏らないはずだ。それにしても、なぜ10号住居だけ雨が吹き込むのか。骨組の模型をみなおして、その理由が分かった。棟飾の転びが10号だけ緩いのである。他の2棟はもっと外側にせり出している。10号もそれに倣えば、雨水の吹き込みはなくなるだろう。
それにしても、木材の艶光りは素晴らしい。小屋組の材は真っ黒、柱はこげ茶色で、燻蒸煙の拡散量がよく分かる。壁の堰板は薄茶色で、中間部にシミができているけれども、水分の浸透量は少ない。北海道常呂の竪穴住居では、5年で堰板が腐った。山田上ノ台では垂木や堰板にカビもキノコもまったく埴えていない。白いカビがひろがると、まもなく垂木は腐り、屋根が崩落する。富山の北代で、その恐ろしい現実を知り、震えがきた。山田上ノ台の竪穴住居は、内部が明るく、カラッと乾燥している。土屋根の下に隠した二重の防水シート、周堤内側のコンクリート壁、地面の三和土(たたき)すべてが良好に機能している。
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- 2012/02/03(金) 00:00:16|
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