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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

サテンドール(Ⅹ)

01常乃屋03


常乃屋

 木綿街道町並みシンポの前夜、松江に前泊し、東京からやってきたチャックを誘って「常乃屋」で飲んだ。いちども行ったことのない、そのジャズ喫茶は、県庁近くの旅館(廃業)の土蔵を改装した店である。1階はカウンター、2階は団体用のお座敷にしている。建物は古くみえる。古色の上塗りはしているものの、部材などの摩耗が激しく、小屋組も湾曲梁を使った古風なものだ。江戸時代に遡るのはまちがいなく、18世紀に入るもしれない。
 カウンターの席につくと、硬くて太いギターのソロが流れていた。パット・マルティーノだ。カウンターの目の前に「Now Playing」という小さな衝立があって、マルティーノの『Undeniable』というライブ盤のジャケットが立てかけられている。
 ギターを40年以上弾いている、と告白すると、マスターは、

  「どのギタリストがいちばんお好きなんですか?」

と問いかけてきた。

  「ギターという楽器はほんらい歌伴のために生まれたもので、ジャズという
   ジャンルに向いていない。とくにソロをとる楽器としては迫力が足りない。
   伴奏の楽器として最もふさわしい演奏をしているのは、フレディ・グリーン
   かもしれませんね」

という持論を述べると、「なるほど」とかれは頷き、

  「パット・マルティーノはどう思いますか?」

と質問を変えた。

01常乃屋02
 

 パット・マルティーノは19歳でプロになった天才である。しかも、伴奏役のサイドギターをおいて、縦横無尽にアドリブを展開するソリストとして知られている。言ってみれば、ジャズ界における寺内タケシだね。Mr.リズムを評価した私に対するあてつけのようにも受け取れるが、

  「いいギタリストですよ。代理コードとかテンションとか、
   すごく新しいセンスを感じるギタリストですよね」

と答えると、

  「そういう技術的なことはよく分からないんです」

と彼はぶっきらぼうに感想を述べた。代理コードが分からないと、ジャズという音楽は掴みにくい。

  「40年以上ギターを弾いてきて、昨年の秋、初めてD♭7が
   G7の代理コードになることが分かった」

なんて口走ると、ますます彼の顔は難しくなった(わたしにとっては実際、革命的な大発見だったんだけど)。


01常乃屋01
  
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  1. 2012/03/03(土) 01:34:07|
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本家魯班13世

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