
2010年末に杵築、臼杵、佐伯、豊後高田、湯平温泉、大分市中戸次など、大分県内の町並み保全地区を訪問し、翌年
1月3日にレポートした。それらの町並みはすべて重要伝統的建造物群保存地区ではない。それぞれの町が独自に町並み保全を実践している。当然のことながら、重伝建地区とは風情がちがう。いつものように気取った言葉使いをするならば、オーセンティックな景観ではない、「作られた町並み」の匂いが感じられる。極端な話、伊勢の「
おかげ横丁」を彷彿とさせる町並みがそこにはある。そして、正月のおかげ横丁ほどではないが、町は旅客で賑わっている。だから、オーセンティックであろうとなかろうと、旅客を呼び寄せることはできるのであって、重伝建に選定されることが「まちおこし」と同義では決してないことが分かる。

大分県内の重伝建地区は日田市豆田地区のみである。皿山の「小鹿田焼の里」から20分ばかり車に乗れば豆田の市街地に着く。駐車場の対面に小鹿田焼の専門店があり、驚いて店だなを覗き込んでべらべらしゃべっていると、「あぁぁ、皿山に行って来られたんですか!?」と内側から声がかかり、引き込まれるように店内に入って器をみた(↑)。
良い器が揃っている。窯だしの日は戦争だと教えてくれたのは、この店の人だ。こういう小売り店が良品を買いあさっていくのである。値段も、それほど高くはない。しかし、1軒めで買うのは愚かなので、いったん外にでた。目の前には土蔵造の大きな町家がみえる。どうやら、重要文化財「草野本家」のようだ。このあたりで、塗籠の防火建築は「土蔵造」でも「塗家造」でもなく、「居蔵造」と呼ぶらしい。建築年代は江戸時代中期以降で、最も古いのが享保10年(1725年)ころの仏間、その他の部分は安永元年(1772年)の大火後、江戸後期から明治初期に建て増しされたものという。付属建物では、座敷蔵の瓦に享保16年(1731年)の銘があり、仏間に近い年代を示している。大分県最古の町家として価値は高く、2009年に県指定文化財から重要文化財に格上げされた。草野本家を含む豆田(10.7ヘクタール)が重伝建地区に選定されたのは、その5年前の2004年のことである。
2月後半から3月末まで、日田は「雛祭り」一色に染まる。草野本家でも豪壮な雛壇の飾り付けがあり、雛祭りに係わるさまざまな道具や人形が展示されており、そのなかに用瀬の流し雛も含まれていた。

↑草野本家 ↓草野本家の雛壇
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- 2012/03/25(日) 01:08:59|
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