本 善 龍穴と天岩戸の参拝を終えたぼくたちは、宇田松山に向かった。まる一年前に訪れた、あの小路の食堂で夕ご飯を食べたくなったのである。というよりも、この日の夕飯はあの大衆食堂にしようとはなから決めていた。
今年もまた、夕暮れに
松山町に着いた。重伝建の町は、少しだけ修景事業が進んでいる。修景部分は白木のままで、古材との対比が目立った。こういう手法があっても全然わるくはない。そしてまた今年も、「奈良一」で瓜と西瓜の奈良漬けを買った。日田で仕入れた小鹿田焼の壺に入れたい。茶漬けをすするのだ。

その後また、ぼくたちは満法寺にぬける小路をめざした。そこに大衆食堂「本善」がある。小路に入って不安になった。本善に灯りがついていない。しかし、扉は開いている。中は暗かった。「ごめんください」と何度か呼びかけると、しばらくしておじいさんがあらわれた。まもなくおばあさんの声もした。コンクリートブロックのインテリアはもちろん健在だ。カーティス・フラーの穏やかなトロンボーンが聴こえてきそうな、やわらかい昭和の空間をコンクリートブロックの障壁が貫く。その不釣り合いな調和のなかに身をおいていると、前衛的なエリック・ドルフィのバスクラリネットがギャア、ギィと唸る。そんな幻聴を捉えたのは、おそらくぼくの三半規管だけだろうが・・・アナログTVのスイッチが入り、ストーブに火が点く。天井の蛍光灯にあかりが灯り、準備万端。ぼくたちは、チキンライスとたまご丼と中華ソバを注文した。10分ばかり待つ。どういうわけか、オムライスと玉丼がでてきた。
「えっ、オムライス、言わはったでしょ?」
「いえ、チキンライスだったんですけど・・・でも、かまいませんよ」

オムライスも、玉丼も美味しい。横に坐ったおじいさんに質問を投げかける。おじいさんは超然としている。82歳で、すでに50年以上食堂をやっていて、本善は矢野家の屋号で、息子たちは後を継いでくるかどうかさっぱり分からん、と言われた。そうこうしているうちに、中華ソバをおばあさんがもってきた。小さなお椀2杯に分けてくれている。こちらも旨い。上下の写真にメニューが映っているけれども、読めないでしょうね。定番料理ばかりですが、お値段は500~600円のものばかり。こういう大衆食堂が減ってしまったでしょう・・・・ぜひ松山町に来て、本善でお食事を楽しんでください。
今日はインテリアをどがどかアップしておきます。看板娘(おばあさん)の写真が撮れなかったのが残念でした・・・


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- 2012/03/29(木) 23:59:19|
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