5人の建築史家が、出雲大社境内遺跡で出土した巨大本殿跡の復元で競い合っている。平成19年春に開館する島根県立古代出雲歴史博物館に、5つの復元模型(1/50)が並列展示されるのである。この夏は、一人ひとりが中間検査をおこなっていて、わたしは5人のなかのラストバッターとして、本日、京都市右京区の株式会社さんけいを訪れた。島根県古代文化センターの錦田くん、丹青社東京の榛沢さんの立ち会いのもと、垂木までのった模型をみた。わたしたちの案の細部設計は、ほとんどキム・ドク(別名タイガー戸口)に任せていたのだが、キムは大学院受験の準備で鳥取に残ったまま。ときどき電話で連絡をとりながら、検査を進めた。制作は順調に進んでいる。扉口、高欄などの細部修正以外、とくにおおきな問題はなかった。
出雲大社の場合、
1)かつてはものすごく大きかったという総高48m説
2)大きいことは大きかっただろうが、高さ40m前後にどまるだろうという説
3)現状と同じ総高24m説
に分かれている。今回の模型では、1)と2)が2名、3)が1名で、わたしは2)の立場をとる。こういう仕事をしていると、奈文研時代を思い出す。奈文研で過ごした後半の7年間、平城宮跡の復元事業に明けくれていた。当時は、こうして複数の復元案を検討したあと、大勢で議論して一つの方向性に収斂させ、最終的には原寸大の建物を建てた。今回はあくまで5案併列である。
他の4案も順調に制作が進んでいるので、じっくり拝見させていただいた。聞けば、みなさん自信満々なのだそうである。わたしも自信がないわけではない。裏返せば、みんな他の案はダメだと思っているのであろう。人間と同じで、他人のアラはみえても、自分のアラには気づかない。復元模型は、まさに作者の分身である。


以前にお伝えした「第2回大社造シンポジウム」では、上記5名のうち3名が自説を発表し、議論を交えます。オブザーバー参加希望者は、asax*kankyo-u.ac.jpまでご連絡を。
◆鳥取環境大学(浅川科研費)・島根県古代文化センター共催
1.日 時 2005年9月20日(火)~21日(水)
2.会 場 タウンプラザしまね 6階大会議室
(島根県市町村振興センター ℡0852-28-4850)
〒690-0087 松江市殿町8番地3(県博南向かい)
3.参加者 討論者+オブザーバー =約30名前後
4.発表者、内容、シンポ、日程、次第(以下、敬称略。題目はすべて仮題)
◎総合司会進行、コーディネーター 浅川滋男・松本岩雄
9月20日(火) 09:00 開会挨拶: 松本岩雄(島根県古代文化センター)
趣旨説明: 浅川滋男(鳥取環境大学)
Session01 大社の創建と大社造の成立をめぐって 09:10-09:40 錦田 剛志(島根県古代文化センター)
「『神社』の成立をめぐる研究視座」
09:40-10:10 林 一馬(長崎総合科学大学)
「記紀にみる神社の創立伝承と出雲の特殊性」
10:10-10:40 松尾 充晶(島根県埋蔵文化財センター)
「古代における出雲大社境内遺跡とその周辺」
10:40-10:55 Coffee Break
10:55-11:55 Comment & Discussion
Session02 考古学からみた山陰の掘立柱建物跡 12:55-13:25 高田 健一(鳥取大学)
総論Ⅰ「古墳時代までの9本柱遺構」
13:25-13:50 岩橋 孝典(島根県古代文化センター)
総論Ⅱ「島根県の古墳時代末~鎌倉時代の掘立柱建物跡集成」
13:50-14:15 中原 斉(鳥取県教育委員会)
総論Ⅲ「鳥取県の古墳時代末~鎌倉時代の掘立柱建物跡集成」
14:15-14:30 Coffee Break
14:30-14:50 椿 真治(島根県埋蔵文化財センター)
各論Ⅰ「渋山池遺跡」
14:50-15:10 熱田 貴保(島根県埋蔵文化財センター)
各論Ⅱ「三田谷Ⅰ遺跡」
15:10-15:30 宍道 年弘(斐川町教育委員会)
各論Ⅲ「杉沢Ⅲ遺跡」
15:30-16:00 今岡 一三・松尾 充晶(島根県埋蔵文化財センター)
各論Ⅳ「青木遺跡」
16:00-16:15 Coffee Break
16:15-17:15 Comment & Discussion
9月21日(水)Session03 出雲大社境内遺跡出土本殿遺構の復元 09:00-09:20 石原 聡(出雲市教育委員会)
出雲大社境内遺跡Ⅰ「大型本殿跡の建築的基礎情報」
09:20-09:45 藤澤 彰(芝浦工業大学)「復元案A」
09:45-10:10 浅川 滋男(鳥取環境大学)「復元案B」
10:10-10:35 三浦 正幸(広島大学)「復元案C」
10:35-10:50 Coffee Break
10:50-11:50 Comment & Discussion
Session04 中近世の杵築大社造営をめぐって 12:50-13:10 石原 聡(大社町教育委員会)
出雲大社境内遺跡Ⅱ「室町~江戸時代の遺構変遷」
13:10-13:40 目次 謙一(島根県古代文化センター)
「文献にみる中近世の遷宮と造替」
13:40-14:10 西山 和宏(文化庁建造物課)
「延享造営録と出雲大社本殿」
14:10-15:00 Comment & Discussion
15:00-15:20
Session04 総合討論 17:00 閉会挨拶(松本岩雄)
17:15 全日程終了 解散
- 2005/08/16(火) 21:46:21|
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「県立古代出雲歴史博物館(歴博)〔島根県出雲市〕」に関連するブログ記事から興味...
- 2006/02/27(月) 23:44:05 |
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