ここ数日、トイレの壁に吊されている
4文字熟語は「隔靴掻痒(かっかそうよう)」。革靴の上から足の先の痒いところを掻いても、痒いところに手はとどかない。転じて、ものごとが思うように進まなかったり、肝心のところに触れなかったりしてもどかしいこと。
山下楽器から受け取った『カルカッシ 25のエチュード』に、ようやく手をつけました。マテオ・カルカッシは19世紀前半に活躍したギタリストで、作品59番と記された『カルカッシ・ギター教則本』とその続編である作品60番『25の練習曲』という二つのエチュードがあまりにも有名です。要するに、ギター版のバイエルですね。
50にしてバイエルか。男は辛いね・・・
25エチュードの№1を開いてみました。もちろんタブ譜なんかついてないですが、弾けますね、これは。弾けば弾くほどシンプルで美しく、短時間で10回ばかり弾いて気をよくしていたんです。それで、№2に進んだんですが、ここでいきなり挫折。トレモロのような運指がでてきて、こりゃ大変だ、どうやって弾くんだろうと譜面をよくみれば、音譜の真上にpimamamaの記号がついている。
そうか、これが
4フィンガーだ。右手の略表記なんですね。もちろんスペイン語のイニシャルです。以下、スペイン語、(英語)、日本語の順に示します。
p pulgar(thumb) 親指
i indice(index) 人差し指
m medio(middle) 中指
a anular (ring) 薬指
№2はpimamamaを繰り返す練習曲なんですが、mamamaの反復がとても辛い。ジャズギターでは4音コードが基本ですから、ふだんから4本の指を使っているつもりなのだけれど、こうして譜面の規則に従って弾いてみると、薬指がほとんど使えないことに気づきます。mamamaを何度も繰り返していると、肘の内側の筋肉が痛くなってくるんです。ふだん使っていない筋肉を使っている証拠ですね。要するに、いつもは3フィンガーが基本で、稀にしか薬指を使っていないんですよ。
それで、弾けたはずの№1に戻ってみたんです。もちろん右手の記号がついてます。こちらはpamimimiの反復で、pimamamaよりも弾きやすいんですが、やはりうまくいきません。自由に弾けば弾ける曲なのに、右手の「基礎」に倣うとさっぱり動かなくなってしまって、しばし放心状態。ふつう我われの感覚では、4~6弦は親指、1~3弦を残りの3本でカバーするんですが、このエチュードの表記に従うと、4~6弦もpamimimi、すなわち4フィンガーで弾くことになっているんですね。これを克服するには相当の時間が必要です。いや、ショック!
じつは4フィンガーで悩んでいることがもう一つあるんです。それはオープン・トライアドというコードの押さえ方。4音の和音を弾く場合、右手の
i(人差し指)
m(中指)
a(薬指)が3弦連続でくっついていると、押さえやすいでしょ。たとえばAmの場合、ラ(3弦)・ド(2弦)・ミ(1弦)の配列なら誰だって押さえられますよね。こういう配列をクローズド・トライアドというそうです。それがミ(4弦)・ド(3弦)・ラ(1弦)になったら、どうでしょうか。とても押さえにくいでしょ。これがオープン・トライアド。じつはアンドリュー・ヨークの教則本では、このレッスンが真っ先にでてきます。「グリースリーブス」をクローズド・トライアドで演奏するのは簡単なんですが、オープン・トライアドに切り替えた瞬間、一筋縄ではいかなくなります。
もうひとつ、みなさんにヨークのオリジナル曲からサンプルをお示ししましょう。
問題はE7というコードです。6弦の4フレット(G♯)、4弦の2フレット(E)、3弦の4フレット(B)、2弦の3フレット(D)を押さえるとE7になりますね。どうですか、きちんと押さえられますか? E7のオープン・トライアドの一つですよ。左手の中指と薬指が痛くなってきませんか。
では次に、このオープン・トライアドE7の前にG、後にAmをもってきてみてください。GとAmはクローズドでかまいません。それでは、クローズドG→オープンE7→クローズドAmの順にコードを奏でてみてください。どうですか、うまくいきましたか?
これがスムーズに弾ける方は、わたしより技術がありますね。わたしはうまく弾けない。聡明な読者なら、曲目がすでに頭に浮かんでいらっしゃるでしょうが、その曲ではハイポジションでセーハを使うところは難なく弾けるのに、最後までこのローポジションのオープン・トライアドに悩まされているんです。このあたりは、演奏を聴く側の人には、絶対わかりませんよね。もう数え切れないほど反復練習したのに、まだ完全に弾きこなせないんだから。
「隔靴掻痒」です。
できそうで、できない。結局、全然できない。
じつは、昨日のお昼に報告書の校正が2部届きました。こちらも「隔靴掻痒」。ベトナム出発の前日なのに、「
右顧左眄」さんに振り回されています。出発前日に忙しくしていると、いろんな忘れ物をするんです。気をつけないと。
と言いながら、ゲラを読むわたし・・・
- 2007/08/21(火) 00:13:58|
- 音楽|
-
トラックバック:0|
-
コメント:0