
最終日は
昨年と同じく、午前中をのんびりホテルで過ごしたかったのだが、わたし以外のメンバーはまだまだ元気があるようで、午前9時半にチェックアウトすることになった。ひとつには初日に
ハノイ城に振られていることが頭にあって、早く行かないとゲートを閉められてしまうのではないか、という疑心暗鬼にかられていたのかもしれない。

というわけで、午前10時にはハノイ城正門の「瑞門」にわたしたちはいた。北京やフエの紫禁城午門にあたり、それらと同様、「
闕」の形式をとっている。コ字形の台上に残る建築物は中央の「五門楼」(五門と午門は音声相通)のみ。左右の「両観」はすでに消え失せ、台上に植栽が施されている。ここで大発見。昨年の調査以来、ずっと分からずじまいであった、あの植物の名称が判明したのである。
2006年9月15日のブログ「
教えてください、ベトナム寺廟の樹と記号」をご参照いただきたい。カオヴァン寺の前庭に植えられている樹はベトナム寺廟の境内に必ずある樹で、ベトナム語では「CAY DAI」というところまでは分かっていた。しかし、学名も日本語名も不明のまま。その樹が瑞門の台上に植えられていたのである。しかも説明板がついている。それによると、CAY DAIの学名は「
Plumeria rubra Linn」、その下に「APOCYNACEAE」とある。


ネットでまず「APOCYNACEAE」を検索した。英文のサイトがずらりと並んでいるが、わずかに日本語のサイトもあり、APOCYNACEAEは「キョウチクトウ科」を意味するようだ。次に「
Plumeria rubra Linn」で検索。こちらも英文サイトが多いのだが、中国語のサイトがかなり混ざっている。そのなかの『植物天地』の解説を少し読んでみた。
鶏蛋花 Plumeria rubra Linn. cv. Acutifolia : 鶏蛋花は「緬桅子」「印度素磬」「番仔花」ともいう。キョウチクトウ(夾竹桃)科の熱帯落葉樹。花弁が真っ白で花心が淡黄色であるところから、卵の黄身を白身が包んでいるさまにとてもよく似ており、鶏蛋花(たまご花)と呼ばれるようになった。起源地はメキシコからヴェネズエラのあたりだが、現在では世界中の熱帯・亜熱帯地域に生育している。中国では西暦1778年以前、史籍にすでに「蛋花」の記載がみられる。広東および周辺の亜熱帯地域は鶏蛋花の生育に適しており、緑化、庭園美化に多用される。さらに、花びらを乾燥させて茶葉に混ぜ「泡茶」にする。
最後に日本語の「プルメリア」を検索。写真をみる限り、「鶏蛋花」と同一種であるのは間違いないだろう。プルメリアPlumeriaとは学名で、キョウチクトウ科プルメリア属の総称。つまり、案内板にみえる「Plumeria rubra Linn」が属名、「APOCYNACEAE」が科名ということになる。驚いたことに、英名は「Temple tree」。熱帯各地で、街路や公園や寺院などに植えられることに由来する名前であるという。
ハノイ城瑞門から文廟に移動。もちろん、文廟の庭にもたくさんプルメリア=「鶏蛋花」が植えられている(↓)。まさにテンプル・トゥリーだ。


8月29日のブログに「
湯島聖堂」訪問記がアップされている。ハノイの文廟と江戸の湯島聖堂は兄弟のようなものだ。いずれも孔子廟(聖廟)なのだが、たんなる廟ではない。それは儒学を学ぶ「大学」でもある。儒学を学びながら、孔子を祀る。孔子やかれの弟子を祀る儀式が釈奠(せきてん)であり、日本では文武天皇の時代に「大学寮」ではじめて釈奠がおこなわれた。わたし自身、平城京朱雀門前の推定「大学寮」跡を発掘調査した経験がある。
今年は幸運だった。孔子を祭る太成殿では内部写真が許され、孔子の祖先を祭る崇聖祠の修復が終わり、2階にまで上がることができた。ちなみに太成殿は双堂形式、崇聖祠は権現造形式(中国では「工字殿」という)である。

↑太廟崇聖祠後殿2階内部 ↓同左建築細部

さらにありがたいことに、崇聖祠の前殿(平屋)では古典音楽を演奏していた。もともと釈奠の儀式に音楽は不可欠で、ふだんでも演奏用の楽器が陳列されているようだが、今日はその演奏が聴けるのだ。いやいや、この音楽は釈奠とは無関係の民族音楽なのかもしれない。しかし、それにしても、今の自分は音楽に弱い。民族衣装に身を包むかれらの演奏レベルは高く、
「渡辺香津美よりずっといいわ・・・」
なんて呟きながら、不思議で愉快なアンサンブルに聴き惚れていた。
いちばんおもしろかったのは、バンブー・シロフォン(マリンバ)をバチで叩くのではなく、竹の切断面の横で手を叩きその反響でメロディを奏でる奏法。ホーンとパーカッションの一人二役をシロフォンで演じているわけ・・・あとでお決まりのCD販売になり、10ドルのCDを1枚買った。これはストリングス系の演奏で、バンブー・シロフォンのCDも欲しいなと思っていたところ、かの奏者が近づいてきて、「自分の作品だから」とせがまれ、2枚めを買わされてしまった。わたしが厚化粧の女性に弱いのではなく、あきらかに「音楽」に弱くなっている証拠である。ただし、2枚で15ドルにまけてもらったけれどね・・・

↑演奏風景 ↓シロフォンの木口側でクラップ・ハンズ

↓CD買って、買ってぇ・・・(疲れた顔してますね、あたし)

最後の訪問地はタイ湖に張り出す鎮国寺。熱くて、熱くて・・・ここでは正殿の正面に菩提樹を植えていた(↓右)。また、九重塔近くの小祠では、渦巻き線香の下にぶらさげられた
吉祥文字を発見(↓左)。これもまたカオヴァン寺にみられるものと同じである。某準教授は、道教の呪符に似ているというのだが、さてどうだろうか? また旅していれば、どこかでヒントを得られるだろう。


↑鎮国寺の部材にはりつくヤモリ。中国語では「
守宮」と書く。家の守り神である。
- 2007/08/30(木) 23:47:46|
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