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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

中国少数民族の住まい

 中華社会の周辺には古代から東夷・西戎・南蛮・北狄と蔑称された少数民族がいて、漢族と対立しながらも交流を続け独自の文化を紡ぎ出してきた。そのような背景を映し出して住まいは驚くほど多様であり、「アジアの縮図」と言うべき様相を示している。

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↑図1 ↓図2
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1.テントと竪穴住居
 数ある住居のなかで最もシンプルな類型はテント。北方や西方の狩猟民・遊牧民の住まいとして知られるが、狩猟民は円錐形で遊牧民は円筒形という違いがある。前者の代表は興安嶺の狩猟系ツングースであるエベンキ(鄂温克)族やオロチョン(鄂倫春)族の「仙人柱」(図1)。森林で伐採した股木付の樹木で三脚を組み、垂木を円錐形にめぐらして白樺樹皮のマットかノロ鹿の毛皮で骨組を覆う。同じツングースでも、黒龍江南岸のホジェン(赫哲)族(ロシア側のナーナイ)はサケ・マス漁に依存する漁撈定住型の生活を営んでおり、竪穴住居に住み、高床倉庫を付設する。かれらの竪穴住居は片面もしくは両面を切妻にする独特の形状で、屋根全体を土で覆っている(図2)。
 遊牧民の円筒形テントとしてよく知られるのはモンゴル族の「包」(パオ、蒙古語でゲル)であろう。かれらは毛皮のマットだけでなく、壁・屋根・煙出の構造材を持ち歩きながら遊動する。円錐形テントから一段進化した構造であり、内部空間も円筒形のほうが格段とひろくなるが、コ字形の座による平面空間の構成は円錐形と円筒形でよく似ている。新疆のカザフ(哈薩克)族のユルタも同型のテントである(図3)。このほか、多数の杭を直立させて毛皮で覆う「黒テント」がチベット(蔵)族の一部や甘粛のユーグ(祐固)族で用いられている。黒いテントについては旧約聖書に記載があり、中央アジアを中心とする広範な分布の末端に位置づけられよう。

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↑図3 ↓図4
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2.冬の家
 狩猟民・遊牧民とも通年でテント居住する場合もあるが、夏と冬で住居の住み替えをするほうが一般的である。たとえば、新疆の南山で移牧するカザフ族は、夏にユルタで山の斜面を転々と移動するが、厳寒の冬になると校倉のような累木壁をもつ小屋に定住する(図4)。累木壁の隙間に泥土を塗り込んで外界の寒さを遮断するのである。こういう「冬の家」が、地域によっては通年居住の住まいになっていった。チベットに近い雲南の西北地域は『史記』などに遊牧民の地として描写されているが、累木壁住居の卓越地でもある。わたしはこれを遊牧民の「冬の家」の通年住居化と理解している(図5)。

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↑図5



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↑図6 ↓図7
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3.吊脚楼と高床住居
 「南蛮」と蔑称された一群の人びとがいったいどの民族をさしたのかは不詳だが、一説に山地の焼畑農耕民ではないかともいう。とすれば、現在のミャオ(苗)族やヤオ(瑤)族の祖先をさすのであろうか。ミャオ・ヤオ系住居の原型は海南島でみることができる(図6)。海南島ミャオ族の住まいは2室構成の妻入平屋建。正面に開放的な庇をつける。屋根は茅葺、壁は木舞壁だが、日本のように木舞に藁縄を巻き付けたりしない。木舞に直接泥土を塗りつけているので壁面が剥がれやすい。この素朴な土間式住居が発展すると「吊脚楼」になる(図7)。床面の山側を土間として削りだし、谷側を柱で支える半高床式で、日本密教の「懸造(かけづくり)」に近い構造形式である。漢族建築の影響を濃厚に受けた貴州・湖南のミャオ族は山肌の傾斜面に「吊脚楼」の集落を形成している。
 一方、渓流沿いの低湿地にはタイ族系の少数民族が水田農耕を営み、高床住居に住む。雲南省シーサンパンナの「竹楼」がその代表例(図8)。主要構造材を広葉樹とする以外は床材、壁材、垂木などの屋根材にすべて竹を用いる。注目したいのは「竹楼」の壁。古式のものは垂直壁ではなく、外転びの傾斜壁になっている。このような船底形の壁は新石器~青銅器時代の家形模型にも確認できる。貴州・湖南のトン族や水族もタイ系の民族で、やはり高床住居に住んでいるが、近隣の「吊脚楼」と同様、漢族建築の影響が強い(図9)。貫を多用する南方漢族の穿闘式構法がのぼり梁や傾斜壁に取って代わっている。漢族の住居と異なるのは「分厚い外壁がなく、屋根を杉皮葺にする」こと、そしてなにより「高床(2階)に住んで、1階を家畜舎・作業場にする」ことである。

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↑図8 ↓図9
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  1. 2007/12/04(火) 01:18:37|
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