
クリスマスの日、あまりの睡眠不足に集中力と体力を欠いていたわたしたちは市内観光のほとんどをキャンセルした。ツアー予定地はいずれも以前に訪問したことがある場所で、なにをいまさらという感もあったから。とりあえず広州でいちばん大きな書店に連れて行って欲しいとガイドさんに頼んだ。
なにせ5年ぶりの中国。「中国はもう辞めた」と言って憚らないわたしだから、ここ数年どれぐらいの専門書が出版されているのかすら知らないでいた。はたして書店の本棚を眺めてみれば、まだみたこともない建築史関係の本がずらりと並んでいる。以前なら全部買った。自分の研究に関係あると判断した本はすべてクレジット・カードで買いあさり、船便で日本に送ったものだ。
もう決してそんなことはしない。梁思成全集と劉敦全集が10巻まで揃っていることを知り、動揺したにはしたんだけれども、すべて買うなんてありえないことだ。ただ、もちろん欲しい本は何冊かあった。某准教授は「買おう、買おう!」とわたしを扇動する。とても悩んだ。結果、4冊だけ買うことにした。買わなければならないわけではない。真剣に中国語の本を読むような時間的余裕があるはずもなく、これからさき中国研究を再開する見通しがあるわけでもない。
しかし、4冊の本を買った。買ったことで、少し心が重くなった。老荘や禅僧が教えてくれるように、「なにもかも捨ててしまえば楽になる」。なにかに執着するから、気が重くなるのだ。わたしの本棚に並んでいる多くの書物、とりわけ中国関係の書物を捨ててしまうのはもったいないが、古本屋に売り払うとかネットのオークションに出品するとかすれば、少しは気が楽になるのに、学者という商売柄捨てるに捨てられない。悲しい性だ。

昼に飲茶してからいったんホテルにチェックインし、午後はまず楽器屋を冷やかした。ひどいギターばかりだった。ひどい楽器とはどのような楽器かといえば、チューニングできない(あるいは、チューニングしにくい)楽器である。数千円だせば1台買えるのだが、安物買いの銭失いの典型だから、もちろん買ったりしない。
それから沙面へ。旧租界地区で、1996年に全国重点文物保護単位に指定されている。1900年前後に建てられた様式建築がずらりと軒を連ね、租界地区のど真ん中を緑地公園が貫く。その緑とアールデコのデザインに癒された。ただ、わたしたちのような訪問客はあまり多くない。ガイドさんによれば、ツアーに沙面を組み込むことはほとんどないそうだ。よく観察すると、店舗は少なく、中央の緑地公園は居住者が活用する近隣公園として機能している。観光よりも生活環境整備を重視していることがよく分かる。
ただ、結婚前の記念撮影をしているカップルが3組もいた。また、綺麗なモデルさんもロケしている。アールデコには美人がよく似合う。そして、スタバを発見。ラッテを飲みながら、のんびりとした時間を過ごした。

夕方、西関地区の老舗レストラン「陶陶居」に移動。ここで日本の留学生Kさんと待ち合わせ。中山大学でKさんを指導するワン先生、華南理工大学で民族建築を専攻するグオ先生にKさんを加え、夕食をともにすることになっていた。ところが「陶陶居」が満員で、会場は「広州酒家」に変更。こちらも西関地区を代表する広州料理の老舗レストランである。ワン先生は日本に10年以上留学されていた文化人類学者で、もちろん日本語はペラペラ。グオ先生はワン先生とともに沙湾地区の調査をされている建築家で、建築史・修復だけでなく、歴史的環境のなかに建設する新建築の設計を得意とされている。
期待していた通り、とても楽しい晩餐会になった。たんなるツアーでは味わえない濃密な空間がそこにはあった。こういう方がたと一緒になにか新しい共同研究が企画できないものか。酔っぱらいながらも、真剣にそのテーマを考え始めていた。

↑沙面の近隣公園 ↓西関商店街の夜景

いや、ひどいギターでした・・・
- 2007/12/27(木) 02:11:18|
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- 2007/12/28(金) 01:29:04 |
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