すでにお読みになった方も多いでしょうが、『現代ギター』2007年12月号で「ギターPAを考える」という特集が組まれています[p.33-39]。ここで主役となっているのは、村治佳織スペシャルプロジェクト(2006年3~4月)で採用された「MSデジタルPAシステム」。正直、なんのこっちゃわかりませんが、まず村治嬢自身のインタビュー発言を引用して、ギターPAに内在する問題点を示しておきましょう。
村治: 主催者は、コンチェルト[訳注:コンサート]に関してはできたら
生でやってくれっていう場合が多い。お客さんは、聴こえたほうがうれしい
んですが。お客さんの耳というのはCDバランスで本番も聴けるものと
思っていますから、そこがつらい。CDは本当にいいバランスでギターの
音が全部聴こえている。それで楽しみに来て、いざ聴いてみたら「ギターが
全然聴こえないじゃないか」っていうことになっちゃう。(略)コンチェルト
は他が全部生音ですから、そこにスピーカーの音が加わるというのは非常に
違和感がありますし、指揮者によっては絶対拒否する方もでてきます。
一言でいうと、生音では音量が足りないが、音量をスピーカーを通して拡大すると、ギターの音でなくなってしまう、ということですね。この矛盾に、すべてのクラシック・ギタリストは悩まされてきたわけです。妻木晩田遺跡の
野外コンサートで「ギターの生音が聴いていただけなくて残念だ」という発言があったのはこのことを意味するのでしょう。
一方、アコギ世界の場合、ギターにプラグをつけてアンプに接続し、スピーカーを通して「生音に似た別の美しい音に変換すること」に努力してきたように思われます。プラグを拒否しPAに無頓着であったのは高田渡ぐらいかもしれませんね。この結果として生まれてきたのが、マイケル・ヘッジスに代表されるエレクトリック・アコースティック・ギターの芸術?ではないか、と思うのです。だから、アンプを使わないで勝負できるアコギ・ソロの演奏家が果たしてどれくらいいるのか訝しがるのは、おそらくわたしだけではないでしょう。
さて、村治2006プロジェクトで採用されたMSデジタルPAシステムについて、その実体をわたしはまったく知りませんが、とりあえず前掲誌から基礎情報を引用しておきましょう。それは、富士通テンのスピーカーECLIPSE TDを核に、マイク、マイク・プリアンプ、専用設計されたスピーカー駆動用パワーアンプをセットにしたクラシックギター、アコースティックギター用のPAシステムであります。また、ECLIPSE(イクリプス)TDシリーズは「空気の動きをいかに正確に再現するか」を追求した結果生まれた「タイムドメイン理論」に基づいて命名されたそうです。その性能に惚れた最初のギタリストはジョン・ウィリアムス。TDシリーズはスピーカーの大きさから4つのモデルに分かれますが、大型か小型のどちかを選択するのが標準的だとのこと。
なんちゃって、わたし自身はこんな(高価であろう)PAシステムを購入する余裕はありませんので、六弦倶楽部か山陰ギターオフのメンバーがなんとかしてくれんかな、なんて甘い期待を抱いておる次第です・・・ごめんなさい (続)
- 2008/01/06(日) 19:13:10|
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