3連休を利用して、半年前に買った教則DVDをいくつかみた。なかでも印象深かったのが、ケオラ・ビーマーの『ハワイアン・スラッキーギターの芸術』とポール・メスリングの『ジャンゴ・スタイル ジプシージャズギター』の2作。時間がないので、今夜は『ハワイアン・スラッキーギターの芸術』だけとりあげておこう。
わたしとスラッキーギターの出会いは10年ばかり前になる。当時、
オータさんのウクレレにはまっていて、ハワイの弦楽器音楽を漁っており、日本にも山内雄喜というスラッキー・ギタリストがいることを知った。たしか1~2枚CDを買った記憶がある。そのころの印象は、ともかく「ゆるゆるの
変則チューニング」というぐらいのもので、何度か6連奏チェンジャーに納まったが、まもなくお蔵入りした。
そもそも、ハワイにギターが伝来したのは1830年頃のことで、当時、マラヨ・ポリネシアンたちはギターの正式な調弦を知らないでいた。自分たちの民謡にあうチューニングを独自に考えて伴奏楽器としていた。模範となる調弦がないのだから、大げさにいうならば、ギタリストの数だけ調弦があるような状況がしばらく続いていたらしい。それが、19世紀末になっていくつかのスタイルに収斂していき、それでもなお私的な場での演奏しか認められていなかったという。公の場でスラッキーの演奏がおこなわれるのは1950年代以降のことである。
ケオラ・ビーマーがまず紹介するのはFワヒネ・チューニング。ワヒネとは「女」を意味する。開放弦でCFCGCEという並び。厳密に表現するならば、A音を抜いたFmaj9コードで、1弦の1フレットと3弦の2フレットをおさえればFコードとなる。ビーマーは「とても美しいチューニングだ」と自賛している。これを試してみたところ、たしかに開放弦で見事な和音を奏でられる。DADGADに比肩しうるチューニングであろう。
ビーマーが次に紹介するのはB♭ワヒネ・チューニング。開放弦でFB♭CFAD。こちらもB♭キーのmaj9コードである。ネットで調べると、ワヒネ調弦にはさらにCワヒネ(CGDGBD)、Dワヒネ(DADF#AC#)もあるようで、前者はやはりmaj9コード、後者はmaj7コードである。maj7やmaj9はジャズバラードで最もよく使うテンション付きの主和音であり、はたしてスラッキーに古くからジャズの影響があったのかどうか。常識的にはハワイアンのスケール(音階)がmaj7やmaj9とよくあっているということなのだろうが。
ビーマーはオープンGチューニング(GDGDBD)も紹介している。ハワイではこれをタロパッチ(タロイモ畑)と呼ぶ。ほかにも何種類かチューニングがあるようだが、きりがないので、このあたりでやめておく。
ここで、どうしてもオープンチューニング・アコースティック・ギターとの関係が気になってくる。ハワイアン・スラッキーギターは現在お盛んなオープンチューニング・アコースティック・ギターの原型であったのか。ペンタングルなどが早くから取り入れていた変則チューニングとスラッキーギターに系譜関係はあるのかどうか。おそらく「否」ではないか、と思うのだが、完全に「否」と言い切るほどの自信もわたしにはない。奏法があまりにも似ているからだ。
ケオラ・ビーマーの奏でるスラッキーギターは、じつに美しい。何種類もの変則チューニングを熟知し、開放弦を多用した不協和音の使い方も絶妙である。爪を伸ばして弾くフィンガースタイルで、ギターはアンプにつないでいる。エフェクターは使っていない。どうなっているのかよくわからないが、生音に近くて、非常によい音がする。正直、挑戦してみたくなって、教則本等を注文してしまった。
いずれ成果をご披露できるときがくるかもしれない。
- 2008/02/12(火) 00:09:56|
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教則本は届いたのだが、タロパッチ(オープンG)だけのテキストでがっくりきた。なんとしてもワヒネに挑戦したい。
- 2008/02/15(金) 02:11:41 |
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- asax #90N4AH2A
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