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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

ワゴンRで  -スコットランドの寒い夏(Ⅳ)

8月27日  エジンバラ→オークニー諸島: ストーン・オブ・スタネス、リング・オブ・ブロッガー、スカラ・ブレー、アールズ・パレス・アット・バーセイ、アース・ハウス、アールズ・アンド・ビショップズ・パレス、セント・マグヌス大聖堂

 昨晩読んだシェトランド諸島の資料に衝撃を受けてしまい、オークニーを一日短縮して、シェトランドに飛ぶしかないと決意した。朝の8時半にはエジンバラ空港に着いていて、チェックインを済ませるや否や、ブリティッシュ・エアウァイズのカウンターに方向転換、チケットの変更手続きに臨んだ。幸い、29日午前の便でオークニー→シェトランド、翌30日午後の便でシェトランド→グラスゴーのチケットが予約できた。差額は140ポンド、3万円余りである。
 エジンバラからオークニーにむかう飛行機はプロペラ機だった。数年前、シアトルからバンクーバーに飛んだ時もそうだった。プロペラ機は小さいが、安定感は抜群で、低空飛行のため地上の景色がよく見える。
 11時半にカークウォール空港に着陸。昨晩、イーストバンク・ハウスというB&B(古い医院を改装した民宿)のマスターに電話していて、段取りは決めていた。まずはタクシーでB&Bへ、そしてマスターに連れられて街のレンタカー屋へ。道すがら、かれは言う。
 「今日と明日、隣町のストロムネスでビール祭りさ!」
 「どのビールが一番好きなんですか?」
 「それはね、次のビール。いま飲んでいる次のビールさ。ストロムネスの祭りではね、世界中のビールが勢揃いするんだけど、いちばん美味いのは、やっぱり次のビールだよ!」
 レンタカー屋で、1日28ポンドのワゴンRを2日借りることにした。いま、わたしが日本で乗っているスウィフトと同じスズキの車で、ついでに言うと、ワイフの車はワゴンRそのもの。なにやら因縁めいてラッキーだと思ったのは束の間、クラッチがマニュアル式で、思うように動かない。どうも左足を上げるタイミングが早すぎるようだ。

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↑↓ステネスの立石(前3000~2500年頃)
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↑↓ブロッガーの環状列石(前2500~2000年頃)
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 オークニーは美しい島だ。なだらかな地形に石造りの民家が点在し、畑地と放牧地が入れ替わるように連続する。リアス式の海岸線は波に洗われた絶壁の下に短い砂浜をつくる。余計なものは何もない。昔から「島」と聞けば疼く質で、数年前まで日本の島めぐりを続けていた。いま自分がいるのは、スコットランドとノールウェイの境にある離島であって、おまけに、この島は遺跡だらけ、廃墟だらけ、古民家だらけ。今日半日でみたものをまともに紹介すると、朝までかかりそうだ。
 今日はなにより当初の目標であった3つの世界遺産をあっさり踏破した。ストーン・オブ・ステネス、リング・オブ・ブロッガー、スカラ・ブレーである。前2者は先史時代のストーン・サークル、スカラ・ブレーはゴードン・チャイルドの発掘調査で知られる青銅器時代の石造集落である。
 スカラブレーの集落を構成する住居の壁面と、オークニーに現存する古民家の壁は、いずれも板石の横積みで、基本的に変わるところがない。ヴィジター・センターの脇に原寸大の遺構を復元していて、テント状の円錐形屋根をかけている。おそらく屋根材が遺構面に散乱していないので、植物質の屋根に復元したのだろう。しかし、そのテント風屋根は壁から下の構造と大きく乖離している。古民家にみるように、板石葺きにすれば趣きも変わるだろうに、と思うのだが、板石葺きならば、その葺材が出土するはずだから、研究者たちは植物質の屋根を選択したのだろう。こういう復元住居を、遺跡の外側に築くのは悪くない。けれども、レプリカはレプリカであって、これでもまだ無粋だと非難する人がいると聞く。
 昔のスカラブレーを知る人たちは、ヴィジター・センターも復元レプリカもないころのほうが良かったと懐かしんでいるそうだ。素朴な整備がなによりだから。
 
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↑↓ご存じ、スカラ・ブレ(前3000~2500年頃)。下は復元。遺跡外に原寸大のレプリカを展示している。
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 オークニの民家と廃屋。木造の構造を石壁で囲み、板石葺きの屋根を被せる。石積み壁の構造は、新石器時代や青銅器時代とほとんど変わらない。シェトランドと比べると、オークニーは廃屋が非常に多い。廃屋と遺跡の境は微妙だ。ちなみに、人口はシェトランドが22000人、オークニーは17000人。

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  1. 2005/08/27(土) 23:32:16|
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