2007年度は3種類の研究助成を受けました。その実績報告提出のシーズンでして、その要旨を転載し、関係事項とリンクさせておきます。まずは、
とっとり「知の財産」活用推進事業から。
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山陰地域の弥生時代建築に関する実証的復元研究
-史跡整備のための資料集成と復元マニュアルの作成- 2007年度におこなったのは以下の3つの活動である。
1. 竪穴住居の復元 焼失住居跡の復元研究成果に基づきながら、縄文・弥生・古墳各時代の代表的な遺構をとりあげ、1/20サイズの復元模型を制作した。縄文時代は智頭町枕田遺跡SI01、弥生時代は鳥取市の下味野童子山遺跡SI01、古墳時代は倉吉クズマ遺跡5号住居である。これらの復元に共通するのは円錐形テントの構造であり、円錐形テントの構造システムである3脚もしくは4脚構造を随所に採用した。これにより、近世的な草葺き屋根構造よりも一段古式の屋根に復元でき、またクズマ遺跡などで検出されていた隅入りの出入口の復元が可能となった。以上の研究成果は、加藤家住宅で開催された
シンポジウム「弥生建築の実証的復元はどこまで可能か」において横田研二が中間発表し、最終的には
卒業論文としてまとめた。この論文に対して卒業研究論文部門の
銀賞が授与された。
なお、竪穴住居模型の復元制作については、環境デザイン学科2年の宇田川・太田、同3年の福井が全面的に協力し、上記シンポジウム会場ほか、プロジェクト研究2&4の
発表会、
卒業研究展(県民文化会館フリースペース)に展示された。
2. 青谷上寺地遺跡出土建築部材による弥生時代掘立柱建物の復元 今年度は青谷上寺地遺跡部材検討会で陳列された弥生時代「最長の垂木」を主要な対象として、その材と複合する部材をほぼ100%青谷上寺地出土材として「大型建物」のCG復元を試みた。梁間約4m、桁行8~10mの規模の大型建物を2パターン復元した。この成果については、11月7日に
記者発表し、11月18日に一般向けの
講演会を開催した。さらに、妻木晩田遺跡で実施設計中の高床倉庫SB-207(1間×2間)、MKSB-34(1間×3間)にこの成果を応用し、やはりCG復元をおこなった。以上の研究成果は、加藤家住宅で開催された上記シンポジウムにおいて嶋田喜朗が中間発表し、最終的には
卒業論文としてまとめた。この論文に対して卒業研究論文部門の
金賞が授与された。
なお、青谷上寺地の建築部材に関しては、
講演記録や
論文を刊行、平成19年度
中国地方建設技術開発交流会と
竹中大工道具館セミナーでも講演した。また、復元データを活用した
集落復元CGがETV特番「人間国宝 弥生の謎に迫る」で放映された。
3. シンポジウム「弥生建築の実証的復元はどこまで可能か」 2007年11月30日~12月1日、表記のシンポジウムを加藤家住宅(登録文化財)で開催した。県内外の考古学・建築史学の研究者が約30名集まり、弥生時代を中心として先史建築の実証復元の可能性と限界について意見を交換した。
1~3の成果を報告書として刊行するが、副題に示した「マニュアル作成」までは行き届かなかった。ただし、以上の研究成果は、妻木晩田遺跡で現在進行中の復元整備事業に直結し、竪穴住居・高床倉庫・掘立柱建物の復元実施設計に直接的に影響を与えるであろう。というよりも、上のような基礎研究を積み重ねない限り、上質の復元建物を設計・施工することはできないはずである。
また、青谷上寺地遺跡でも県埋蔵文化財センターが2008年度に「建築部材考察篇」を刊行予定であり、上の成果の一部はほぼそのまま「考察篇」の論文として採用できるであろう。また、青谷上寺地では整備のための基本計画策定が進められており、今後の遺跡整備や展示に向けて上の研究が大きく貢献することになるであろう。
- 2008/03/28(金) 00:16:12|
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