FC2ブログ

Lablog

鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

安土城見寺再建学生コンペ(Ⅰ)

そう見寺01本堂跡02全景


 桜のつぼみが徐々に色濃くなり、春の足音が一歩一歩近づいて来るのを感じる。別れの三月、始まりの四月。チャック、けんボー、トマトさんやハルさんが卒業して一週間、新生ASALABが徐々に動き始めた。ついに我われ5期生が舵取り役となる。先輩方の握っていた舵は大きく重たい。しかしながら1期生から今まで培われた航路と残された財産は、我われに更なる向上と冒険心を掻き立たせる。
29日、ASALABは新しい航海に出た。

P1160827.jpg


  「それは建造物が被りうる最も完璧な破壊……壊れた物の誤った説明を伴う破壊である。」

 ジョン・ラスキン『建築の七灯』の一文が頭の中を駆けめぐった。ここでいう「それ」とは「復原」 のことである。昨年後期の「建築の保存と修復」講義で、K.E.ラールセン『Architectural Preservation In Japan』(1994)を通して日本建築の保存修復について学ぶなか、このラスキンの言葉を耳にした。遺跡や建造物の「復原」など、おこなうべきものではない、というのがラスキンの主張であり、その考え方は「ベニス憲章」(1964)として結実し、世界的な文化遺産保護のスタンダードになっている。

そう見寺01本堂跡01説明01

 今年度初の研究室活動の切り出しとなったのは『見寺再建学生コンペ』のための事前説明会への参加である。昨日29日に現地説明会があり、近江に向け車を走らせた。

 「見寺」は、安土城内にある臨済宗妙心寺派の寺院である。天正年間の安土城築城に伴い、織田信長は甲賀など近郷から堂塔などを移築して、見寺を創建した。150余年前に本堂と付属の庫裡や書院が焼失してしまい、現在はそれらの基壇と礎石、および仁王門と三重塔のみが残る。仁王門および三重塔は中世和様に則り、禅宗様の要素は仁王門の拳鼻を例外としてみうけられない。また、5間四方の本堂も、礎石配列をみる限り、禅宗様の仏殿ではなく、天台系の内陣・礼堂造りに復原できよう。そもそも臨済宗ならば、境内の主要堂宇は「仏殿」と呼ぶはずだが、見寺では「本堂」と呼んでいる。ところが、驚いたことに、近江名所図絵をみると、その本堂は「法堂(はっとう)」のような2階建に描かれていて、内側に2名の人物(あるいは木偶)が描かれている。天台系の山寺を移築し、本堂のみは法堂風に造り替えたということであろうか。

近江名所図絵01
↑↓近江名所図絵
近江名所図絵02部分01

近江名所図絵03解説



仁王門03複合

 「見寺跡」は境内の西側が開けており、そこから「西ノ湖」が望める。遺跡と風景が一体した美しさをみても、はたしてここに本堂を再建することがよいことなのか疑問にも思われた。それにしても、遺跡の現場に立つのは本当に面白い。ここにどのような建物があったのか、ここで何をしていたのか往時の人びとは何を感じていたのか。目で見る遺跡を通して、頭の中でかつての姿を自由気ままに想像する。周囲の雰囲気に呑み込まれ、自分がタイムトリップしたような幻覚に襲われる。

 問題は「復元」である。「世界遺産条約」は、遺跡/モニュメントのReconstruction(復元/再建)を容認しているが、「当初の姿に関する完全かつ詳細な証拠に基づき、推測による拡大解釈をともわない場合に限る」としている。また、ベニス憲章第9条には「復原は推測が始まるところで止めなければならない」とあって、ベニス憲章は「復原」Restoration以上に、「復元」Reconstructionを強く戒めているのである。
 どのような「復元」的アプローチが今回のコンペに適しているか。あるいは「復元」そのものを回避すべきなのか。教授は「実施ではなく、ゲームなのだから、ゲームとして楽しめればよい」と言われた。「楽しむ」ためにはどうすればよいのか。舵取り役となった我われ新4回生の責任は重いのか、軽いのか・・・(Mr.エアポート)

仁王門02横


  1. 2008/03/31(月) 00:38:22|
  2. 史跡|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0
<<安土城見寺再建学生コンペ(Ⅱ) | ホーム | 薬研堀慕情(Ⅱ)>>

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://asalab.blog11.fc2.com/tb.php/1345-024e8df0

asa

12 | 2020/01 | 02
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

Recent Entries

Recent Comments

Recent Trackbacks

Archives

Category

Links

Search