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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

廃墟の力  -スコットランドの寒い夏(Ⅶ)

8月30日 シェトランド諸島→グラスゴー: ブロッホ・オブ・バーランド、クロフト・ハウス・ミュージアム

 今日は打ってかわって、快晴。まさに極楽だ。島には悪魔と女神が同居している。
 農家のB&B(民宿)をチェックアウトして、ただちにサンウィックのはずれにあるフェリーポートに向かったのだが、モウサ島への便は午後しかないと知って、がっくりきた。しかし、ターミナルの展示パネルをみると、歩いて1.5kmのところに、ブロッホ・オブ・バーランドという廃墟があると書いてある。その案内板をたよりに、フィヨルド地形の波打ち際を歩いて、歩いて、また歩いた。片道35分は歩いたから、1.5kmというのはあきらかに間違いで、おそらく1.5マイルが正しい。要するに、昨晩とほぼ同じ距離を、また今日も歩いたのである。
 ブロッホ・オブ・バーランドは、モウサ島のブロッホの対岸にあって、両者は意識して計画された可能性が非常に高い。モウサ島のほうが残りがよくて有名だが、バーランドも素晴らしいブロッホの遺跡である。バーランドのブロッホは、おそらく本格的な発掘調査がなされていない。円筒形構造物の内側に石板材の破片が散乱している。調査していないのだから、整備をするわけもなく、それが、このブロッホにとてつもない迫力を与えている。後世の人間がさわっていない遺跡、つまり、修復整備がなされていない廃墟や廃屋をみてしまうと、整備された遺跡がどこか嘘くさく映る。
 廃墟の迫力を、いったいどうしたら、後世の人びとに伝えられるのか。放置しておけば、モニュメントの劣化は進む。劣化を恐れるから、整備を試行錯誤する。ところが、その整備によって、モニュメントの迫力が失われる。だから、劣化そのものをみせるという視点が必要となる。そうすると、最後にモニュメントは塵埃と化すのだが、それでもよいという意見だってあることを日本人は知るべきではないだろうか。

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 一晩泊まったB&Bの近くにクロフト・ハウス・ミュージョアムがあった。クロフトCroftとは、スコットランド英語で「小作農」を意味する。要するに、古民家の野外博物館である。石積みの壁、A字形の小屋組、茅葺き屋根とその石おさえ。内部では暖炉の火が赤々と燃えている。かつて、こういう民家がシェトランドやオ-クニーに満ちていたのだ。ミュージアムからシェトランド最南端の遺跡、ネス・オブ・ブーギをめざしたのだが、岬の手前で車道が途切れた。そこから岬の鼻まで歩かなければならない。距離は目測で1.5マイル。もう一度1.5マイルを歩く体力が残っていなかったわけではない。時間が尽きていた。グラスゴー行きの飛行機に遅れるわけにはいかない。

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↑ボートをひっくり返して屋根にしている納屋。



 
  1. 2005/08/30(火) 23:46:53|
  2. 史跡|
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