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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

ふりかえって、そして  -スコットランドの寒い夏(ⅩⅠ)

 じつは、出国前、ほんの少しだけ身辺がざわついていた。突然、オファーが舞い込んできたのである。
 わたしは鳥取と島根がとても好きだから、山陰で文化財や木造建築の仕事をしながら生活できれば、それで十分だと思っている。ただ、家族と離反しながら暮らしている生活に耐えきれなくなりつつあるのが悩みの種で、とくに最近、ワイフが脳神経系の疾患を抱えていることが精密検査であきらかになり、ますます家族との同居が必要だと思い始めていたところだった。だから、心が揺らいだ。
 こういう状態で、香港行きのCX502便に乗り込んだのである。
 
 スコットランド視察の成果は素晴らしいものであった。昨年のイングランドにも感動したが、今年のスコットランドでも、再び充実した毎日を過ごすことができた。たくさんの歴史的建造物と遺跡と芸術に接することができて、それがわたしの研究人生を豊かなものにしてくれるのは言うまでもない。しかし、それだけならば、あえてイギリスにこだわる必要もないだろう。わたしは、なにより「田舎」の姿に心を打たれる。英国の「田舎」は、わたしを勇気づけてくれるのである。
 英国のどんな「田舎」を訪れても、町並みと田園は長閑で美しく、そこに住む人びとは遺跡や廃墟をこよなく愛している。かれらにとって、それは当たり前のことであるのだが、これを「当たり前」だと思えるところが素晴らしく前衛的だ。日本の場合、歴史的な町並みとか田園景観を保全しようとするならば、文化財保護法なり景観法に頼らざるをえない。そういう強制力がないかぎり、景観や文化財や環境の保全をなしえないのが日本の実態である。しかし、イギリスでは違う。どの「田舎」を訪れても町並みが美しい、ということは、法規によって強制された結果ではなく、住民が自発的にタウンスケープやランドスケープを守りたいという意識を、ほぼ無意識の状態で共有している証にほかならない。日本人がこういう超越的な思考のレベルに達するまで、いったいあとどれだけの時間が必要だろうか。
 日本の「田舎」が、英国の「田舎」のようになるのは、そうたやすいことではない。しかし、素材はたっぷり蓄えられている。問題は、そこに住む人びとの意識だけではないだろうか。「田舎」で暮らすことがなにより前衛的であり、最高の幸せなのだということを、多くの日本人と分かちあえるようになりたいと思う。だから、それを実践するしかない。そして、それが自分のライフワークになるかもしれない。
 「待つのではない、何かをするのです!」
タクシーが1台しかないアバーフェルディという田舎町で知り合った青年の言葉が、耳にこびりついている。
  1. 2005/09/04(日) 23:18:23|
  2. 地域支援|
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