fc2ブログ

Lablog

鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

鳥取県環境学術研究費助成研究 新規採択!

 昨年度までの2年間、加藤家住宅をフィールドにした「古民家のローコスト修復プロジェクト」を進めていた鳥取県環境学術研究費助成研究も一段落し、今年度からの2年間については「文化的景観」をめぐるプロジェクトを申請していましたが、初年度申請の採択内定通知が届きました。
 つい先日、あるロータリークラブから卓話の依頼があり、「わたしの世界遺産構想」と題するスピーチをする予定でしたが、授業とバッティングして果たせませんでした。今回のプロジェクトは、そのスピーチの核となる構想を展開しようというものです。
 さいわい、国外では世界自然遺産ハロン湾で文化的景観に関する調査研究に携わっており、これと連動しながら、文化的景観を核として県内のひろいエリアを対象とした「世界複合遺産」構想を最終的には示したいと考えています。

 申請のテーマ等は以下のとおりです。

研究テーマ: 「文化的景観」の解釈と応用による地域保全手法の検討(Ⅰ)
      -伝統的建造物群および史跡・名勝・天然記念物との相補性をめぐって-
 
研究費  2,302,000円(初年度のみ)



研究概要

 「文化的景観」は、1992年の第16回世界遺産委員会で採択された概念であり、申請者らも2007年度より科学研究費の助成(萌芽研究「文化的景観としての水上集落論」)をうけ、ベトナムの世界自然遺産ハロン湾の文化的景観に関する調査を進めている。
 一方、日本国内では2004年の「景観法」制定にあわせて、ようやく文化財保護法に「文化的景観」の条項がとりこまれたばかりで、いまだ試行錯誤の段階にある。実際、国内では「近江八幡の水郷」(滋賀)、「一関本寺の農村景観」(岩手)、「遊子水荷浦の段畑」(愛媛)の3件が重要文化的景観地区として選定されたにすぎない。
 ところで、2004年度改正文化財保護法における新しい文化財概念としての「文化的景観」は「地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの」と定義されている。すなわち、ある地域の自然環境と物質文化の表象の全体性を映し出す「景観」(「環境」という用語に置き換えても大差ない)を文化財と認識しているのである。残念なことに、鳥取県内では世界遺産登録をめざす三徳山を例外にして、「文化的景観」ストックがどの程度存在するのかさえあきらかになっていない。本研究の一つの目的は、この不確かなストックの掘り起こしを実践することである。
 第2の目的は「文化的景観」の概念を精査し、旧来の文化財概念である「史跡」「名勝」「天然記念物」「伝統的建造物群(伝建)」などとの相補関係を検証しつつ、県内における「史跡」「名勝」「天然記念物」「伝建」の指定・選定・候補物件を「文化的景観」の立場から見直し、新たな保全手法を見通すことである。たとえば、智頭町の板井原集落は県の「伝建地区」に選定されているが、むしろ「文化的景観地区」としてとらえたほうが集落の文化財価値を正しく評価できる可能性がある。倉吉旧市街地(旧陣屋町)における打吹玉川重伝建地区以外の未選定エリアについても然り。鳥取城跡、妻木晩田遺跡などの史跡もまた「文化的景観」としての価値をもっており、この価値の重層性・相補性を活用して、これまで「保存」の網目からこぼれおちていた対象をひろいあげながら、複数の史跡・名勝・天然記念物・集落等を包含する広範囲のエリアを「文化的景観」の対象地として認定する可能性を探りたい。
 この種の試みは全国的にみても進んでおらず、「文化的景観」そのものの発掘と「文化的景観」の概念を利用した地域保全の双方が進展するならば、全国の先駆として模範的な役割を果たすことになるだろう。



  1. 2008/06/02(月) 00:39:42|
  2. 研究室|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0
<<FC2アクセス解析1・2・3月篇 | ホーム | 実績報告(Ⅲ)-科学研究費補助金萌芽研究>>

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://asalab.blog11.fc2.com/tb.php/1422-fdb4b19f

本家魯班13世

05 | 2023/06 | 07
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

Recent Entries

Recent Comments

Recent Trackbacks

Archives

Category

Links

Search