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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

世界遺産悲喜こもごも

 昨夏のハロン湾調査で特別顧問を務めたひらちゃんから6月末にメールが入った。ハロン湾調査のデータ整理が進んでいないことを謝罪しつつ、まもなくカナダのケベックで開催される世界遺産会議に出発するとの連絡である。さすが8年間、虎ノ門と霞ヶ関で高級官僚生活を送っていただけのことはあるね。ケベックでの会議は、事実上、世界遺産の当落を決する場なのだから、かれにはがんばってもらわなければならない。
 あれから2週間ばかり時間が流れた。そして、今日の昼ころ、ハロン湾調査の副隊長を務めた同僚から携帯に短いメールが届いた。

    「ペナン・マラッカ 世界文化遺産登録となりました。めでたし」

とある。かれはマレーシア出身で、2002年の夏休みに、わたしを連れてマレーシア各地を案内してくれた。もちろんペナンとマラッカも訪れた。植民地都市の世界遺産登録をめざしている、という話をそのとき聞いた記憶もある。それが実現したのだから、ほんとうにおめでたいことだ。

 しかし、その瞬間、わたしは平泉のことが頭に浮かんだ。短いメッセージながら、ペナンとマラッカのことしか書いてないということは、平泉は「落選」したのではないか。そう直感したのである。

 猛暑の梅雨は峠を越していた。久しぶりのさわやかな空気のなかを、ビアンキは爽快に走り抜けていく。そして、大学でネットにアクセスし、直感が現実であることを知った。
 いまから8年前まで、わたしは毎年なんども岩手県に足を運んでいた。一戸町の御所野遺跡(縄文中期)の復元整備のためである。御所野の委員会で、県教委の幹部と顔をあわせた。かれらは「平泉の世界文化遺産登録」をよく話題にあげた。わたしは訊ねたものだ。

     「何をテーマにしているのですか」

と。 県の担当者(すでに故人となっている)は即答した。

     「浄土伽藍・浄土庭園です」

 わたしは、(えっ)という顔をして、こう反応した。

     「浄土伽藍・浄土庭園の本場は京都でしょ・・・?」

 平泉に「登録延期勧告」が通達されたとき、だれもが昨年の石見銀山を思い起こしたはずだ。石見銀山の延長逆転満塁サヨナラホームランに国民一同狂喜したことをだれも忘れていないだろう。しかし、柳の下に2匹めの泥鰌はいなかった。


 この衝撃は大きい。次候補の鎌倉は動揺の色が隠せない、と報道されている。さらに文科省は、各県からの公募打ち切りまで検討し始めているという。今回の震度は大きい。地震の余波は鳥取をも巻きこんでいる。文化財関係の県職員は、名詞やメールアドレスの署名(↓)に「三徳山を世界遺産に」というキャッチコピーをつけて活動し始めているのである。わたしは、この「三徳山」単独登録とは別の考えかたをもっているのだが、いずれにしても、今後の活動に大きな影響がでるのは間違いないだろう。

濱田署名


 ユネスコ(あるいはイコモス)に進言したい。600を超えた世界遺産の新規登録をいったん中断し、「危機遺産」に対する処分を強化すべきではないだろうか。先日、ガラパゴス諸島の生態系を脅かす観光開発を摘発する報道番組をみたが、あぁいう環境破壊ともいうべき状況にある世界遺産はいったん登録を解除したほうがいい。わたしが実際にみた例としては、中国雲南の麗江古城(「城」とは「町」の意味で使う)も登録解除の有力な候補だと思っている。麗江大震災の後に復興された町並みは、何百棟もの町家がコンクリートで均質に再建されており、1990年代前半の面影はまったくなくなっている。おびただしい偽物を作っても、「世界遺産」というお墨付きを頂戴すれば、観光客は増える一方。そして、環境は悪化の一途をたどる。

 危機遺産の処分、あるいは既登録遺産の再審査を徹底しておこない、世界遺産の数を調整したうえで、新規登録の審査を再開すべきではないだろうか。もう、そういう時期に来ているように、わたしは思っている。
 「世界遺産」という概念は決して意味のないものではない。とりわけ、過疎地の振興策として決定的な役割を果たしうる媒体である。それは、知床半島や石見銀山の活況をみればあきらかだろう。だから、鳥取を活性化する最終手段もここにあるかもしれないと、秘かに私案を練っているのだが、それだけに、平泉の衝撃が日本政府を弱気にしないことを切に祈るばかりだ。


  1. 2008/07/10(木) 00:42:19|
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