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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

風鈴

 わたしが学期末でどたばたしている間、佐治の父母が奈良に1週間ばかり滞在し、家内や孫たちと遊んで帰ってきた。孫たちはいま期末試験の真っ最中だが、父母は金曜日の夜に家内を佐治の実家まで連れて戻ってきてくれた。家内の御国入りはじつに10ヶ月ぶり。作秋の引っ越し以来である。翌土曜日、わたしは佐治まで家内を迎えに行った。
 この夏最高の熱さと言われた一日だった。が、佐治の家に入ると涼やかになる。父母は奈良の熱さにめげてしまっていたことだろう。佐治の実家には相変わらず「空調」というものが存在しない。扇風機で十分なのである。風通しの良さはこの上なく、窓外にひろがる緑をみているだけで、少しく癒された気分になる。
 
   「そうだ、今夜は土曜夜市だよ、ふたりででかけてみたら」

と提案したのは義母だった。そうだな、久しぶりに「土曜夜市」を味わうのもわるくない。昼食をいただき、荷物をまとめて車を出した。しばらくして、家内の携帯が鳴った。ほかでもない、おばぁちゃんからで、

   「土曜夜市に出るなら風鈴を買ってきて!」

という娘への伝言であった。長く使った風鈴がぼろぼろになってしまったのだという。

 夕方七時をすぎてから、寺町の下宿をでた。袋川まで南下し、西に折れて若桜橋へ。そこで、案内係の方に訊いた。「風鈴を売っているお店はありますか」と。案内係の方はあるお店を教えてくださった。わたしたちは県庁向きに歩きはじめた。
 人通りは多くない。子どものころを思い出した。小学校のころ、家族で土曜夜市にでるのが楽しみだった。そして、若桜街道は隅から隅まで賑わっていた。高校のころになると、友人たちと一緒に夜市に通うようになった。大学に進学してからも、帰省すると友人たちと夜市を冷やかした。そのころは、夜市そのものが目的というよりも、浴衣を身に纏った高校時代のマドンナたちとの遭遇を期待する下心のほうが大きかったのだけれども、そのような野心が報われたことなど一度もない。

 風鈴をおいているというお店は、陶器屋さんだった。軒先にひとつだけ風鈴が吊されていたのだが、すでに短冊は破れていた。

   「いまはね、空調が普及して、どの家も風鈴は買わなくなりまして、もうその1個しか
   ないんですよ。それで良ければ、500円で結構ですけどね・・・」

 そうか、風鈴と空調は両立しない物質文化だということがよく分かった。短冊の破れた風鈴を500円で売ろうというご主人の思惑は甘いと言わざるをえない。そんな風鈴、買うはずがないでしょ。
 今年の夏は、東北に行く。空港には、南部鉄の風鈴がいまでもたんと吊されているだろう。少し値ははるが、南部鉄の鈴は心地よい風の音がする。
 佐治の家だけが、あの涼やかな音を聞ける場所になってしまった。

 
  1. 2008/07/29(火) 00:09:05|
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