木を喰う虫 一夜あけて快晴。と言っても、東北は暑くありませんよ。今年は梅雨あけも早かったが、せっかちに秋がやってきているようですね。山田上ノ台遺跡(仙台縄文の森広場)では、紫と白のリンドウがまっさかり。竪穴住居もガイダンス施設も、すっかり遺跡公園の景観になじんできています。とりわけ、ガイダンス施設2階の展望室から、高館山を背景にみる住居3棟の景観は抜群ですね。

8ヶ月ぶりに山田上ノ台を訪れた目的は、もちろん土屋根住居の維持管理のチェックのためです。今夏、東北は雨が多かったそうですが、竪穴住居に雨漏りはなし。入口や煙出以外からの入水はまったくみとめられなかったとのこと。安堵しました。なお、東北の大地震でも建物にまったく影響はなし。接地型の建築が地震に強いことが証明されたわけです。全体としてみれば、3棟の竪穴住居はきわめて健全な状態にあります。ただし、微細な変化がいくつか確認されました。

ひとつは床面のクラック。タタキ(三和土)の床面のひび割れが激しくなっているというのですが、これはむしろ自然な感じがして良いとわたしは思いましたね。コンクリートみたいな三和土は、縄文住居には不自然ですからね。できれば、この上に枯れ草とムシロを敷いてほしいものです。


いちばんヤバイのは、10号住居の垂木裾部分で、ごく一部ながらカビが発生していることです。富山市の北代住居ではこれがひどくなって、梁や垂木が折れてしまいました。原因は屋根土がずりおちて周堤ふきんがふくれあがり、そこに水がたまって垂木尻を湿らせてしまうから。これについては、まず防水液剤を木材に塗布し、腐朽木材の直下から燻蒸をおこなって、さらに冬に屋根上の草が枯れた段階で裾にたまった土を一部除去するよう指示しました。
左の写真(屋外の椅子)をみていただきたいのですが、木材というのは放置しておくと、こういうふうにキノコや菌類がばんばん生えてきます。炉の煙と生活する人の熱気があれば、これを防げるのですがね。ともかく土屋根の住居は湿度が高い。これが木材の腐朽を招くわけですが、最近、わたしは屋根に土を被せる最大の要因は「防火」だと思うに至っております。植物質の屋根では、ちょっとした失火で建物がすぐに焼けてしまう。それを防ぐために屋根に土を被せた。ところが、そのために建物は腐りやすくなった。でも、人が住んでいれば、防湿は防火よりも容易であって、建物が腐るまで人はそこに住めばよい。いざ建物が腐ってしまったら、土を剥ぐのも煩わしいし、湿って腐った木材をリサイクルできるわけでもない。だから、建物をわざと焼いて壊した。そうするのが、竪穴住居を平地に戻すにはいちばん楽なんだけど、土を被っているから完全燃焼しない。おかげで、数千年たった今日でも、発掘調査すると、各地で「焼失竪穴住居跡」が発見されるというわけです。

さてさて、もうひとつ、みたことのない虫害を知らされました。3つの住居跡の一部の部材に直径1㎜程度の穴がたくさんあいているのです。その穴から木くずが落ちて、下の部材に堆積したり、周堤の内側に散乱したり、という状態。どうやら小さいちいさいケムンパスのようなイモムシが(たぶん夜中に)木材のあちこちを移動しているらしく、その移動の足跡として穴があき、その穴からトノコのような粉末が下に落ちていくようです。興味深いのはすべての部材ではなく、限られた一部の部材が集中的に被害にあっていることで、ひょっとすると、これも部材の湿度と関係があるのかもしれませんが、実態はよく分かりません。
わたしは、こんな虫害のこと全然知らなかった。造園業者さんの薦めで、防虫剤を一部の部材に塗布すると、その材で虫喰いはなくなったそうです。だから、被害をうけている部材すべてに防虫剤を塗布するしかなさそうです。それにしても、どんな虫が木材の内側を練り歩いて、糞のような木くずを排出しているのか。24時間ビデオをまわして、正体を暴いてみたいものですね。
どなたか、この木喰い虫についてご存じありませんか?
- 2008/08/25(月) 03:40:41|
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