消えた爪 8月20日の午後6時すぎから、時空が暗転しはじめた。丹波橋のプラットフォームで受けた、たった1本の電話が心に闇を落とし、生活のリズムを少しずつ狂わせていったのである。
まずは翌21日、京都の
ホームデンティストを再訪して仰天した。1週間前にとった歯形の蝋が熱さで変形してしまったので、型をとりなおすのだという。つまり、わたしはもう一度京都室町の歯科医院に通わなければ治療が終わらないことを知ったのだが、いったいいつ京都に通う時間がつくれるのか、いまなおスケジュールの余裕を見つけ出せないでいる。おまけに、馴染みの「そば倉」が閉店しており、
辛味大根のおろし蕎麦がもう食べられないことを知った。
室町から奈良に戻り、すぐに天理楽器に行った。そこで、ガットギター用のピックアップを購入した。8,000円だった。じつは、その1週間前にはアコギ用のピックアップも買っている。こちらは20,000円もした。この出費は大山貸別荘のウッドデッキで開催される六弦倶楽部第8回練習会に備えてのものだった。
天理楽器から戻ると、家の錠が閉まっている。わたしは鍵を持ち歩いていない。オリンピックの重要競技が目白押しだというのに、わたしは家に入れないのだ。ワイフになんども電話し、買い物をしているだろうコープまで2度探しにいったが、彼女に会うことはできなかった。それから散歩道まで探しにいったのだが・・・

22日の深夜、14日ぶりに帰鳥し、翌日午後からMくんと半日、ギター・デュオの練習をした。Mくんの選曲した「トップ・オブ・ザ・ワールド」である。はじめは二人とも、生のクラシックギターで練習した。途中から1台はピックアップをつけ、もう1台はエレガットに替えて2台のアンプから音を出した。昨年のウッドデッキ・ライブでは、マイクを使わず、アンプラグ(生音)かプラグインのどちらかだったのだが、生音で挑戦して、まったく音が通らなかったので、今年は苦手なアンプを使うしかないと決断したのである。だから、計28,000円もの出費をしたのだ。
野球で日本がアメリカに敗れ4位が確定する瞬間を挟んで、まる半日(というか1日?)ギター・デュオの練習に費やした。おそらく「トップ・オブ・ザ・ワールド」を30回ばかり弾いただろう。そのとき、Mくんに親指の爪をみせた。3㎜ぐらい伸びていて、少し切ったほうがいいかな、なんて話をしていたのだが、その長い爪は演奏に抜群の威力を発揮している。ここ数ヶ月、調子が良いのは、その長い爪のおかげだろうと確信していた。
深夜十時、デュオの練習を終え、Mくんが帰っていった。わたしはあまりに疲れていたので、すぐにはソロの練習に移行できなかった。馴染みの店でかるく一杯呑み、少しリラックスしてから練習を再開しようと決めて、久しぶりにその店に入り、大事件を知った。なにが起こっているのか、まだ書けないのだが、その事件を知るにつけ、わたしのメンタルはさらに負の方向にぶれていった。
短時間で店を出て帰宅し、気力を振り絞り、ソロの練習を始めようと動きはじめた。ところが、爪が消えている。親指の先から飛び出た3㎜の部分が「ない」のである。信じられない。ほんの1時間ばかり前まで、その爪で「トップ・オブ・ザ・ワールド」を弾いていたのだ。この曲を弾きすぎたために、爪の付け根が一気に疲労し、なにかの拍子にポキッと折れてしまったのだろうか。
わたしは、もともと肉弾きであった。しかし、この半年ばかり、すっかり爪弾きに慣れてしまい、とくに親指の爪はいまやなくてはならない自前のピックになっている。「
ムーンタン」の成功も、この親指の爪があったればこそなしえたものである。それが消えてしまった。あわてて肉弾きを試みたのだが、うまく弾けない。思い切ってサムピックを使ってみたところ、弾きにくいのは間違いないが、肉弾きよりはマシなことが分かった。かくして、人前で使ったことのないサムピックでの演奏を余儀なくされることになった。この精神的ダメージは計り知れないものだった。

六弦倶楽部第8回練習会は、1年ぶりに大山貸別荘のウッドデッキで開催された。昨年、「
サンデーモーニング・オーバーキャスト」を失敗した因縁の地である。驚いたことに、今回は最高級のコンデンサ・マイクが用意されていた。あらら・・・天理楽器に投資して入手したピックアップ2個はあっさり無用の長物と化してしまったではないか。まぁ、これについては、いずれどこかの会場で使うこともあるだろうから、たいした問題ではないけれども、頭がいたいのはサムピックを使わざるをえなくなった、わたしの親指である。昼食のバーベキュー・タイムでは、爪の管理と星野JAPANの話題で盛り上がった。
やはり日本一になったことのない監督では世界に太刀打ちできない。第2回WBCは来年の3月に迫っている。監督の人選を急がなくてはならない。わたしは、日本人なら野村か落合、外国人ならボビー・バレンタインが良いのではないか、なんちゃって。とくに、落合とバレンタインは、日本シリーズを制した上で、日韓シリーズにも勝利している。落合の神経は太く、バレンタインはメジャーにも精通していて、韓国に対するコンプレックスをもっていない。なんて話をしているうちに、クジがまわってきた。
わたしの出番は9組中4番に決まった。(続)
- 2008/08/27(水) 01:36:30|
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