足踏み台からサポートへ さてさて、今回の演奏はこの3曲です。
1.ミノアカ Mino‘aka
2.トップ・オブ・ザ・ワールド Top of the World
3.レッティン・ゴー Letting Go
以下に解説しておきます。
1.ミノアカ Mino‘aka
アローハ!
前回と同様、ケオラ・ビーマーの
教則本からハワイアン・スラッキーギターをトップバッターにもってきた。前回の「イサ・レイ」はFワヒネ・チューニング(CFCGCE)だったのに対し、今回の「ミノアカ」はタロパッチ(オープンG)・チューニング。正直、オープンGはあまりおもしろくない。「サンバースト」や「ムーンタン」で使い続けてきたダブルドロップDと1音しか違わないし、バンジョーもオープンGだから新鮮味を感じられないのだ。また、スラッキー・ギターは、文字通り、「緩い弦」であるところに特徴があって、とりわけ5弦と6弦の音の低さを強調したい。FワヒネのC-Fのほうが、タロパッチのD-Gよりも1音低く、よりスラックな表現が可能となる。それに、開放弦の響きもmaj9th系のFワヒネのほうが美しい。で、別のFワヒネの曲にしようかとも思ったのだが、その曲はなんと歌付きで、これはかなわないと判断し、タロパッチで演奏することにした。

もちろん、この曲は少しずつ練習していた。ただ、このレベルだといつでも演れるという安心感があり、なかなか本気で取り組む気にならなかった。困ったものだ。結局、「
奥の細道」のホテルでオリンピックをみながら練習し、なんとかいちおう暗譜し終えた。1曲めなので、もちろん緊張していて指も動かず数ヶ所間違えたが、アコギのスチール弦でもあり、サムピックの違和感はそう感じなかった。ギターはモーリスS92。足踏み台使用。
ちなみに、ハワイ語のMino‘akaとは、「笑って!」という意味だそうです。
2.トップ・オブ・ザ・ワールド Top of the World 
ご存じ、カーペンターズの大ヒット曲。第7回の練習会に鞄持ちとしてついてきた
Mくん、その練習会の帰り途に「次はデュオでいこう」、さらに「六弦倶楽部の演奏はスローバラードが多いからアップテンポの曲にしよう」という思惑で一致。で、かれの選曲が「トップ・オブ・ザ・ワールド」だったということです。編曲は江部賢一さん(『デュオ・ギターのしらべ』リットーミュージック、2007)。リードパートはMくんで、わたしは伴奏を受けもった。最初は1番と2番でパートを入れ替えようと提案したのだが、Mくんは伴奏パートはできない、というので、わたしが伴奏に徹した。伴奏はわたくし得意の3フィンガーでして、だいたい初見で弾けるんですが、じつは難しいところもあります。サビで、メロディ平行のコーラス旋律を弾きながら、オルタナティヴ・ベースを続けるところはシンコペーションがきつく、なかなかやっかい。言い換えるならば、伴奏パートはダブルリードギターの下側の旋律と伴奏をいっぺんにこなさなきゃならない。単純な3フィンガーでは決してない、と言うことです。で、このダブル・リードをあわせるのに結構苦労しました。爪が消えた原因の一つかもしれません。世の中に簡単な曲なんてないんですね。

ちなみに、「トップ・オブ・ザ・ワールド」はポップスというイメージが強いけれども、もとは「ソング・フォー・ユー」という曲名のカントリーであり、実際、コーラス部分はCSN&Yの「ティーチ・ユア・チルドレン」とよく似ていると思いながら練習していた。
さて、本番の演奏にあたっては、なんども試奏させていただき、2つのギターの音量を調整したつもりだったのだが、あとで聞くと、わたしの伴奏が大きく、Mくんのメロディを掻き消していたとのこと。音をよく拾う高性能マイクをMくんのギターに預けたのだが、かれのアポヤンドがもうひとつ大きな音にならなかったようだ。ガットギターを使う場合、アンプもマイクもなし、という状況もままあるから、ギター1台で大きな音をだす訓練をしなければなりませんね。
Mくんはアガッていたそうですが、わたしはこの曲がいちばん楽だった。ガットギターでサムピックが使い難いのは間違いないけれども、サムピックと3フィンガーの相性がわるいはずはないもの。ギターはホセアントニオに変え、足踏み台ではなく、膝の上にのせるサポート(写真左上)をはじめて使った。これはよい道具です。調弦は両者レギュラー。
3.レッティン・ゴー Letting Go 前々回が「
サンバースト」、前回が「
ムーンタン」、そして今回「レッティン・ゴー」を弾いてアンドリュー・ヨークを卒業しようと決めていたのだが、見事に失敗した。サム・ピックでこの曲を弾き通すのは不可能だ。「トップ・オブ・ザ・ワールド」で完全にリラックスしていた神経が、「レッティン・ゴー」イントロのミュート部分で緊張モードにふり戻された。いちばん最初の山はこのミュートなのだが、サムピックをはめた親指の腹をうまく使えない。この段階で、大きな不安を感じ始めた。それから、途中、何度かストップし、演奏を辞めようとも思ったのだが、気持ちを持ち直して、なんとか最後まで弾くことは弾いた。これが、この日の限界だった。

「レッティン・ゴー」は数あるアンドリュー・ヨークの曲のなかで、わたしが最も愛聴している曲で、
日大カザルスホールでのライブ以来、愛車の6連奏チェンジャーにずっとおさまったまま。
楽譜は11ページ、TABなし。チューニングは「3 to F#」だから、EADF#BE。前にも書いたが、これはたしかルネッサンス・リュートの調弦のはずだ。全体を1音下げると、DGCEADとなり、キーがC、D、Gの曲なら弾きやすいことがわかる。「レッティン・ゴー」のキーはE。
この2ヶ月間、「レッティン・ゴー」と格闘してきた。「サンバースト」や「ムーンタン」よりも、はるかに美しく難しい曲だ。何度も山があり、それをクリアしていくのは大変な技巧が要求される。細かい解説は抜きにして、最後は高速アルペジオから、「spacious」と指示されている部分に移り、そのフレーズをもとにして4回8小節のインプロヴィゼイション(即興演奏)が要求される。これもなんとか凌ぎ、次にボーカルをギターの演奏に被せていく。で、わたしがハミングしはじめたところ、代表が離れていたボーカルマイクを口に近づけようとしてくれて、ありがたいのはありがたかったのだが、そのままマイクがギターのボディにドスンと落ちてきた。あのパートはとくにマイクは要らないのですが、代表のご好意には感謝申し上げます。それにしても、きつかった・・・
なんていうのかな、体操の選手がオリンピックのために必死で準備してきたのだけれど、試合の前夜に突然腰痛が発生し(わたしの場合、爪が消え失せ)、吊輪か鉄棒の演技で筋肉の痛みに耐えきれず落下してしまった、っていう感じかな・・・不完全燃焼とはこのことですね。星野監督の気持ちがちょっぴり理解できたりして(それにしても、WBCの監督を委ねては絶対にいけません!)。あ~ぁ、またしても、またしても、捲土重来!だわ・・・
それにしても、代表のエネルギーには恐れ入ります。前夜から集まって午前3時半まで大騒ぎし、朝から会場設営の準備をして、最後は後片付。いつものことながら、頭が下がります。次回は倉吉での開催とのこと。早めに行って会場設営のお手伝いをしますよ。遠慮なく、使ってください。
それと、門永さんから
楽譜2冊頂戴しました。ああいう難しい曲を練習する時間はなかなかとれないかもしれませんが、いずれ挑戦させていただきたいと思います。ありがとうございました!
- 2008/08/28(木) 03:40:59|
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