重要文化的景観「遊子水荷浦の段畑」 これまでは教授自ら、
近江、
岩手、
北海道の重要文化的景観を訪ね、レポートを書いてくださいましたが、今回はわたしたちが愛媛県宇和島市の「遊子水荷浦(ゆすみずがうら)の段畑」を視察に行きました。メンバーは、部長、ヒラに加え、助っ人のリラックマさん(環境デザイン学科4年)です。女3人の道中、はていかに・・・
愛媛県宇和島市遊子の水荷浦は、戸数40戸、160人余りの集落です。陸では岸辺の急斜面を活かした段畑で芋類を栽培、海ではイワシ漁やハマチ・真珠母貝の養殖など、古くから半農半漁の生活を営んできました。宇和海沿岸の急峻な地形と強い季節風などの風土と調和して、近世から現代に至るまで継続的に営まれてきた半農半漁の土地利用のあり方を示す独特の文化であるという価値が認められ、2007年7月26日、「アイヌの伝統と開拓による沙流川流域の文化的景観」とともに、国内で3番目の重要文化的景観として選定されました。
さて、宇和島市街地から出発し、三浦半島に入ったところで向こう岸(半島の先の方)の、緑が途切れている部分を発見。
「あそこだー!!」
と興奮しながら向かいました。

ふもとの広場まで到着すると、「段畑を守ろう会」のテントと「だんだん屋」という小さなショップが視界に納まりました。残念ながら営業は「土日・祝日および予約日」と書いてあったので、入ることはできないとあきらめましたが、広場から段畑に向かって石段を上がっていったところ、下から男性に声を掛けられました。なんとこの「だんだん屋」を経営している「NPO法人 段畑を守ろう会」の方でした。どうやら、うろうろしていた私たちを見つけてわざわざ来てくださったようです。
「この道をずっと上がったら畑の上に行くことができるから行っておいで。
そこが1番良い景色を見ることができる場所だよ。」
と丁寧に教えていただきました。正直下からでは石垣しか見えず、段になっているのが分かりにくかったので、早速上がることに。
↑下から見た段畑。石垣しか見えず。 段畑の頂上まで上がり俯瞰すれば、下から見あげるよりも迫力があり、圧巻の一言。真下を見るのではなく、少し横からのぞき込むようにして見ると、石垣の石に加えて畑の土の茶色やサツマイモの葉の緑色が段々の状態を分かりやすくしています。ところどころには、育てた作物(主にジャガイモ)を運ぶために使う滑車のレールが走っており、今なお段畑が機能していることが伺えました。また、段畑の先には宇和海が広がっており、真珠母貝などの養殖場が見え、半農半漁の生活を実感することができました。畑は雑草ひとつ生えていないほど丁寧に手入れされているのが印象的でしたが、端のほうはみかんの木が植わっており、やや石垣が崩れているところもありました。段畑だけでは生活していけないという一面も見たように思います。
←段畑の跡か? 下におりると、先ほどビューポイントを教えてくれた方が「だんだん屋」を開けていらっしゃったので、お邪魔させていただくことに。その中に昔の写真を発見しました。今と違って、山一面が段畑になっているころの写真です。およそ50年前の、1850年ころに撮影したものだそうです。お話によると、その頃が段畑の全盛期であったとのこと。確かにこの場に着くまでの道のりの至るところに、かつて段畑であっただろう痕跡をみることができました。今思うと、それらすべてが段畑としての機能を果たしていたら、それはすごい景観だろうと思います。せっかくなので、この方にさらにお話を伺いました。 (ヒラ)
・・・その2につづく。俯瞰写真はその2で。
- 2008/09/18(木) 00:39:54|
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