
夏休みに入ったばかりのころだっただろうか、出雲の高校から出張講義の依頼があると入試広報課から連絡をうけた。出雲大社に係わる講演を出雲の高校から依頼されるのは、まことに名誉あることなので、もちろんふたつ返事で受諾した。ちなみに、わたしの演題は、以下のとおり。
「天空の神殿 -出雲あるいは杵築の大社-」
正直なところ、気楽に構えていた。2年次の必修授業「建築と都市の歴史」の1コマ分をやや圧縮して、できるだけ分かりやすく話せばいいだろう、それで事足りるはずだ、と。どうやらムードがちがうと感じ始めたのは東南アジアから帰国した後で、講演は数日後に迫っている。
今回のイベントは高等学校が主催する大学講義の見本市というか、オリンピックのような催しであった。20以上の大学から49名の大学教員が招かれて講義をするのですよ。まぁ、次のリストをごらんください。招聘された大学と教員の数(カッコ内の数字)です。
9月17日(水): 11大学11名 岡山(1)・九州工業(1)・島根県立(1)・国際医療福祉(1)・法政(1)・早稲田(1)・近畿(1)・
岡山理科(1)・美作(1)・比治山(1)・広島国際(1)
9月18日(木): 12大学21名 北海道(1)・鳥取(1)・岡山(5)・広島(6)・島根県立(1)・専修(1)・京都女子(1)・
京都ノートルダム女子(1)・岡山商科(1)・広島経済(1)・徳山(1)・松山東雲女子(1)
9月19日(木): 5大学17名 岐阜(1)・島根(12)・岡山(1)・島根県立(2)・鳥取環境(1)
19日午後3時40分、17名の講師がいっせいに80分の講義を始めた。さらに質疑応答20分。さらにさらに、生徒諸君(1・2年生)には感想レポートが課された。こんなことなら、もっと周到に準備しておくのでした。ほかの大学の先生方よりも、魅力的で分かりやすく、進学の道筋を誘導するような講義。それはそれは難しいけれども、それぐらいの意気込みで臨むべき出張講義であったと今は深くふかく反省しております。

ちょっとした奇遇がありましてね。前日(18日)の午後、平田高校訪問の直前に某埋蔵文化財センターをひやかしたんです。そこで、二人の若い神主さんにおめにかかりましたよ。驚いたことに、二人ともわたしが講演する高校のOBだって言うから、さっそく二人の写真を撮影し、パワーポイントに流し込んで、その見出しに「■■高校OBの地元考古学者」と入れたんです。でも、講義ではさっぱり受けなかったな。最初から最後までシ~ンとしていて、二人の画像をみせても、なんにも反応がない。いや、結構つらい講義でしたね。静かに聞いてくれてはいるけれども、ほとんどリアクションがなくてね。だもんで、質疑応答の時間には、出席した生徒さん全員にひと言ずつコメントしていただきました。ところが、結構、スルドイ質問が連発されましてね。してみれば、あんまり興味がなかったわけでもなく、じつは静かに細々(こまごま)と鑑定されていたのかもしれない、という恐怖心が湧いてきたりして、やっぱり準備不足が否めなかったな・・・猛省が必要です。

講義を終え、レンタル・デミオを宍道湖沿いに走らせて松江駅に戻り、JRの切符を買ったんだけど、米子での乗り換え時間が長くて、わたしはついにストリート・ミュージシャンならぬ、ステーション・ミュージシャンと化してしまいました。トイレに近い階段下の薄暗がりにあるベンチに坐り込んで、ひたすらスラップとタップでハーモニクスを鳴らす練習を始めたんです。すると、隣のベンチに女子高生が2名やってきて腰かけた。
「すいませんがね、このデジカメでわたしを撮ってくれませんか?」
と頼んだら、怪訝そうな顔しながらも撮ってくれましたよ。特急電車に乗り込む前、「ありがとう」と挨拶して立ち去ったんですが、また不思議そうな顔してました。当たり前だわね。
- 2008/09/25(木) 00:55:19|
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