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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

居住の技術 -弥生時代(Ⅶ)

洞の原住居03壁の編物圧縮


壁の構造と壁溝

 縄文建築シリーズ(『縄文時代の考古学』第8巻に修正加筆掲載)の主役として登場した岩手県一戸町の御所野遺跡では、西区で縄文中期末の焼失住居群がみつかった。とりわけ大型住居では炭化材の残存状況が良好で、垂木や梁・桁と推定される材だけでなく、竪穴の壁に並ぶ土留めの丸太材もしく半裁材が直立した状態で残っていた。この焼失状況は「壁溝」の機能を決定づけるものとして注目される。すなわち、竪穴のエッジで検出される浅い壁溝は、土留めの壁材の裾を納める基礎として理解されるのである。
 ところが、弥生時代以降の壁材は大きく変化している。群馬県の黒井峯遺跡(古墳時代)では、竪穴住居の壁に張り付くように植物質の編材が付着しており、鳥取県米子市古市宮ノ谷遺跡の焼失住居跡(弥生後期)では、薄いヘギ板の編物が壁土に付着した状態で床面に崩落していた。こういう出土状況を参考にして、妻木晩田遺跡では洞ノ原2号住居の壁材に編材を用いて復元している。
 こういうアンペラ状の壁材の場合、壁溝を壁材基礎としてとらえることはできない。これについては、近年、大阪八尾南遺跡の住居群が圧倒的な情報をもたらしている。ここでは最も保存状況が良好であった竪穴建物9の壁と壁溝に関わる記載[報告書第1分冊:p.218-223、第3分冊:p.458-459]を抜粋・要約しておこう。

 壁構造: 東壁の周壁下半では斜方向に貼り付けられたヨシの茎束のような植物繊維が検出され、他の周壁際でも剥がれ落ちた貼り壁が壁溝の上に載っていた。茎束は網代のように完全に編まれた状態ではなかったが、黒色粘土を挟みつつ数枚を異なる方向に貼り付けており、剥落した貼壁の一部では部分的に編まれている状態も認められた。この数枚の壁材を貼り付ける造作は一度の施工なのか、数度の補修を反映するものかは分からない。また、貼り壁を押さえた方法については不明とせざるをえない。
 壁溝: 特筆されるのは、竪穴建物2や6の壁溝で部分的に認められた溝の蓋受けと考えられる造作が良好な状態で検出されたことで、壁溝全体にわたって100本に及ぶ横木が溝に直交して渡されていた。これらの横木には、ミカン割りや半裁した材、あるいは板・角状に分割した材が用いられており、小枝を使用していた竪穴建物2や6に比べると一段と手間が掛けられている。横木の設置に当たっては、一端を壁面に刺し込み、もう一端の上に貼床を施すことで固定を図っており、加えて南壁側では横木をより安定させるために約2.4mの板材が壁の溝の内肩に沿って埋め込まれていた。横木の上に植物の茎束や樹皮が溝に平行して被せられ、その上に周壁に貼られた茎束が連続して垂れ下がっている様子を観察することができた。以上から、壁溝は除湿・排水のための暗渠溝であったことが判明した。

 八尾南遺跡竪穴建物9の出土状況をみる限り、弥生住居の壁溝は暗渠溝であり、それを跨ぐ横木をたくさん渡して板などで蓋をし、その蓋をおそらく壁材の裾で覆っていたのであろう。一方、床面に注目すると、「床面全体にわたって茶褐色を呈した薄い有機物層の広がりが認められ、植物質の敷物が敷かれていた可能性」が想定されている[報告書第1分冊:p.219]。常識的には、信州秋山郷の茅壁中門造の土座住まいにみるように、枯草で下地のパウンドを作り、その上に筵状の編材を敷いたのであろう。想像の域をでないけれども、壁溝の蓋はまず壁材の裾で隠し、次にその全体を床面のマットで覆ったのではないだろうか。

 さて、暗渠としての壁溝は中央ピットの機能とも深く相関性をもって存在したようだ[報告書第1分冊:p.225]。八尾南遺跡竪穴建物9の中央ピットは3段掘りになっており、その2段目から下に箱状の構造物が設置されていた。そして、中央ピットから西に排水溝がのびて壁溝と合流し、その溝は周堤を貫いて周堤溝と合流しつつ、さらに西にのびる(総長約11m)。この排水溝も、室内では壁溝と同様の横木が渡され、蓋で覆われていた。こうしてみると、中央ピットと壁はともに土中から滲みだした水分を溜める水溜であり、排水溝はその水を竪穴住居の外側に排出することを目的として設置されたものであろう。ただし八尾南遺跡では、他の竪穴建物の中央ピットで「炉」とみられる遺構もあるらしく、機能を水溜めに限定することを控えるべきとしている[報告書第3分冊:p.459-460]。

洞ノ原復元住居2号01全景圧縮
↑上下2枚の写真は妻木晩田遺跡洞ノ原地区2号住居。内部の中央ピットから排水溝がのびて周堤を貫き周堤溝に合流し、さらに外にのびている。

  1. 2008/10/13(月) 20:45:45|
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