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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

居住の技術 -弥生時代(Ⅸ)

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コンクルージョン

 以上、松菊里型住居の構造復元から出発して、焼失住居跡および八尾南遺跡建物9から復元される細部と構造の検討を経て、最後に隅入の問題を構造と結びつけて考察した。
 これまでの考察を整理しつつ、そこから展開する重要事項を補筆してまとめとしたい。

 1)弥生住居の原型といえる松菊里型住居の構造は、三脚もしくは四脚をベースとす円錐形テントの煙出部分を2本柱で支えた越屋根で塞ぐものと推定される。とくに2本柱との関係を考えた場合、四脚をベースした左右対称構造の可能性が高い。
 2)弥生住居は在地の縄文住居と融合することによって、周囲に多角形配列をもつ「北牟田型」に変容する一方で、それとは独立の動きとして屋根に土をかぶせる変容がおきた可能性がある。ただし、土被覆については、朝鮮半島西南部から北九州への伝来時期から発生した可能性もあり、必ずしも松菊里型住居の縄文化と断言できるわけではない。
 3)焼失住居では炭化材の上面で茅がしばしば検出されるので、土屋根住居の下地として茅葺きがなされていたことを示している。それはまた、弥生時代に茅葺き屋根がひろく普及していたことの証拠ともいえる。一方、縄文時代の住居跡で茅がみつかることはほとんどなく、縄文住居の葺材・下地材としては樹皮が多用されたものと想像される。
 4)焼失住居跡の大半は土屋根に復元される。ただし、竪穴の掘削土はほぼ周堤で使いきってしまうので、屋根の被覆土はどこか他の場所から運搬してきたものであろう。ただし、焼土層は地山系の粘質土が一般的であり、これをどうして確保したのか、検討を要する。
 5)これと関連して、屋根土の範囲には全面被覆と部分被覆の両方があったものと推定される。小型・中型の住居では全面を覆うだけの土を確保しえたであろうが、打出遺跡SI01にみるように、大型住居ではおそらく梁・桁のあたりまでしか土で覆われていなかったであろう。全面被覆か部分被覆かは、焼失住居の出土状況によってある程度判断できる。
 6)屋根を土で覆う技術は縄文時代から継承されたものだが、その第一の目的は「防火」であった可能性が高い。防火という点では、できるだけひろい範囲を土で覆うほうがその機能を期待できる。
 7)周堤は屋根の木組を安定させる機能をもつ一種の基礎である。竪穴を掘った土をいったん取り置き、木組を組んでからその木組の裾に土を塗りつけるようにして周堤を築いていったものと想定される。
 8)弥生時代の竪穴住居の壁はアンペラ状の材を周壁に貼り付けたものだが、その留め方はあきらかでない。縄文時代においては壁材の基礎であった壁溝は、弥生時代においては排水用の暗渠として機能した。暗渠としての壁溝は中央ピットと放射状の排水溝で結ばれ、周堤を貫いて住居外に排水される場合もあった。
 9)壁溝はそれをまたぐ横木の上に板で蓋をした。その蓋はアンペラ状の壁材の裾で隠され、さらにその上に床面を覆う植物質のマットが覆った可能性が高い。
 10)弥生住居のなかには隅入の平面構造をもつものがあり、上部構造にケツンニ(三脚)を用いると、隅入の構造を実現できる。
 11)柱のない無柱型の円形平面が3本主柱や4本主柱の構造に変化していくのは、上部構造を受ける3本ないし4本のサスを柱で支持したものと想定され、その結果として、隅にサスを配する構法が生まれた可能性がある。これはとくに多角形主柱配列の場合に採用された可能性が高い構法である。この「隅サス」構法は、構造に安定感をもたらすけれども、隅入の平面構造とは矛盾する。隅入を実現させるには、主柱の位置(すなわち梁・桁の接合位置)ではなく、主柱間の梁・桁上にサスを配する構法が有効な場合もあることを示している。

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  1. 2008/10/20(月) 00:43:41|
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