
10月28日(火)、智頭町板井原で下記のような座談会を開催しました。今回の座談会は過疎化が進行する鳥取県山間地域の代表例として板井原集落をとりあげ、板井原集落にそれぞれ異なった関わり方をしている3名の方と対話をすることで、「文化的景観」の制度がどの程度集落再活性化への可能性をもっているのかを検討することを目的としています。
座談会「限界集落と文化的景観」 会 場: ごはん処「火間土(かまど)」
参加者: 喫茶店「野土花」の先代オーナー(2002~2005経営)
喫茶店「野土香」の現オーナー(2005~経営中)
板井原集落保存会長(「火間土」のオーナー、2004~経営中)
司 会: 教授
事務局: 鳥取環境大学環境デザイン学科浅川研究室
次 第:
15:30~15:40 自己紹介
15:40~15:45 趣旨説明(教授)
15:45~16:00 卒業研究概要プレゼンテーション(部長&ヒラ)
16:00~ 座談会
「限界集落と文化的景観」と題する卒業研究を進めているわたし(ヒラ)が、夏休み後半から連絡を取ってきていた座談会がついに開かれました。座談会といえば、昨年も加藤家住宅のパンフレット作成のために同家のロフトでおこないましたが、今回はそのときと違い、最初から最後まで自分が調整係でして、てこずりました。また、面識がほとんどない方に「自分がどういう者で、何をしており、どういう目的で、何をしたいのか」を分かりやすく伝える難しさも学びました。いろいろ収穫のある会でした。

会場の「火間土」は2004年にオープンしたお食事処。民家の所有者ご夫妻の経営です。日曜日以外は予約日しかあけていませんが、水車で精米し、村の水を使って炊くご飯はとても人気が高く、県内のみなならず全国からお客さんがやってきます。「火間土」のオーナーは「板井原集落保存会」の会長もされています。もう10年以上も会長をされているとのことでした。今回は急遽奥様も参加してくださいました。ご夫妻は今回の座談会では、唯一板井原集落で生まれ育った参加者であり、発言に重みがあります。板井原の歴史・民俗・生業などをくわしくお話しいただき、古写真の複写も許可いただきました。
喫茶店の初代と二代目のオーナーにもご参加いただきました。喫茶店の名前は「のどか」と読みますが、初代は「野土花」、今の二代目は「野土香」と別の当て字を使われています。この記事では先代を「花」オーナー、二代目を「香」オーナーと略称させていただきません(ごめんなさい!)。
まず初代「花」オーナーは兵庫県尼崎市出身なのですが、以前から自然に親しむ生活に憧れがあり、板井原集落にIターンという形で2001年に移住していらしたそうです。そして、その翌年かに喫茶店「野土花」をオープン。3年後の2005年、結婚を契機に経営から手をひくことになりました。ただ、いまでも智頭町の那岐地区に住まわれています。現在の「香」オーナーは県内八頭町出身で、10年ばかり関西で生活されていたそうです。その後、鳥取に戻ろうとしていたとき、新オーナーの募集を知って応募。Jターンという形で2005年から喫茶店を「野土香」と改称して再オープン、今に至るとのことです。なお、メニュー等の受け継ぎは初代と二代目でなかったと聞きました。


さて、座談会ですが、はじめのうちは全員緊張していたのか声も小さめだったのですが、だんだん緊張もほぐれ、笑い声が溢れるようになりました。最後は予定時間をオーバーしてしまうほど盛り上がった会となりました。この会で感じたことは、3組の立場がことなるがゆえに集落に対する想いも異なっているということです。すなわち、
1)板井原集落で生まれ育った
2)自然に囲まれた暮らしに憧れ、その生活を実現させた
3)田舎で育ったが、一度離れて都会生活を経験し、再び故郷に戻ってきた
という背景の違いがあります。それを踏まえて、1)の方からは「この暮らしをこのまま続けていきたいと思うけど、戻ってくる人がいなくなったらもう終わりじゃないかな」と半ば諦めも滲ませるような内容の発言がみられました。この考え方は、夏休みのヒアリングで、集落の他の居住者からもうかがいました。一方、2)の方は「憧れ」が実現したのと同時に、想像以上の経験ができたことから、集落の居住者の温かさに心から感謝し、「集落とその住民にはこのまま変わらないでいてほしい」と強く感じていらっしゃいました。「別に人が多くなくても構わない、今の状態が心地いい」という想いが、おそらく集落のどの方よりも強いのではないかと思われるほど、発言の端々にあらわれていました。そして、3)の方は、生まれ育った地域で煩わしいと感じていた田舎の社会関係も、今体験してみると、それまで感じていたものが覆され、「この集落がなくなってほしくない」と感じるようになったそうです。しかし、それは2)の方とは少し異なり、「このままでいてほしい」とこだわるのではなく、「どんな形でもいいから集落が残ってほしい」という想いでした。
わたしはこの3つの考え方はどれも間違っていないと思います。
「残したい、けれども、その想いを受け継いでくれる人がいないから諦めるしかない」
「たとえ人が多くなっても姿形が変わってしまっては、この集落の良さが失われてしまう。だったらこのままがいい」
「残したい、だからどんな形であっても集落に住み手がいてくれるのがいい」
今回座談会の参加者はわずか3組4名だったのですが、上の3つの主張は集落の構成員全員の気持ちを代弁しているかのように感じました。そしてこういった、それぞれの想いをひとつにしてまちづくりを進めていくことの大変さを改めて知ることができたと思います。最後に「香」オーナーがおっしゃった言葉が胸にじんと響きました。
「
この集落が他の似た集落に先駆けて、
突破口、モデル地域のようになったらいいな」
卒業研究の完成に向けて、気合を入れなおされた言葉であり、座談会でした。(ヒラ)
- 2008/11/01(土) 02:33:36|
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ヒラさん、座談会の準備、お疲れさまでした。日程調整、プレゼンの準備と発表、座談会の資料作成、ほんとに大変でしたね。でも、良い経験になったと思います。なにより、卒業研究にとってこれ以上のものはありませんでしたね。
座談会に出席された4名の皆様にも、この場を借りて、深く御礼申し上げます。ありがとうございました!
- 2008/11/01(土) 15:40:01 |
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- asax #90N4AH2A
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