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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

ダウラの小后妃

 入試関係業務のため週末を鳥取で過ごしている。土曜(8日)だけかと思ったら、日曜(9日)もだってんだから、人使いがあらいよなぁ・・・

 仕事が終わり、早起きの後遺症がでた。いつものように教授室に椅子を4つならべて、ぐうぐう眠った。目覚めたらお腹がすいている。「ダウラ」に行こうと決めた。スリランカ紅茶のお店ね。あのお店は「魔法の山」プロジェクトのときに、何回か学生とお茶した以外では、ワイフしか連れてったことないから、ほかの女性と行ったりするとまずいんだな・・・なんちゃって、だれも付き合ってくれる人いないから、一人淋しく「ダウラ」に行ったわけ。
 ドアをあけると同時に「今日は一人なんです」って言うと、マダムは「あらっ、付いてきてくださらなかったんですか?」ってニコニコ笑ってる。「だって、ワイフは奈良に住んでるんですからね、連れてこれるわけないでしょ・・・」と言い訳して、窓際のカウンター席に一人腰掛けた。マダムは、憐れんでくれている。「一人横につけましょうか」と言って、わたしを慰めた。もちろん、自分がそこに腰掛けるつもりはさらさらなく、白髭のマスターがお相手しますよっ、て意味でして、チッ・・・ったく、落ちぶれたもんだぜ、おいらも・・・

 で、キーマカレー・セットを注文。ここのキーマカレー、美味しいですよ。鳥取のカレー100選だったか、なんだか忘れたけれども、あんなんより、全然こっちのほうが美味しいから、どうぞ一度ご賞味にいらしてください。しばらくして、なんか、聞き覚えのある音声がするのね・・・綺麗な北京語と北京語もどきの言語が交錯して聞こえてくる。一人の若い女性が北京語を話していて、「鳥取から北海道まで何時間かかるんですか」って質問してるんだけど、まわりを囲む3人の日本人はちゃんと答えていない。いちばんお年を召した男性が、なんとか北京語らしき言語を話そうとしているのだけれども、中国の女性とのあいだで会話が成立していないことはすぐに分かった。

 で、まぁ、しゃしゃりでたんですね。

    「あのぉぉ、わたし、北京語できますから、通訳しましょうか?」
    「えっ、あなた、上海の人??」
    「いやいや、日本人ですよ。以前、北京と上海に留学したんです」
    「北海道までここから何時間で行けるの?」
    「東京経由になりますよ。飛行機で東京まで1時間、そこで飛行機を
    乗り換えて、札幌までなら2時間足らずでしょうね」
    「あ、そうなんですか。謝謝!」

 みなさんにお話を伺うと、彼女は昨日、鳥取に来たばかりで、今日はホームステイの日なんだそうです。たしか3日ばかり前に東京に着いて2泊し、鳥取に移動して、3泊ほどしてから姫路に向かい、さらに北海道に行くんだとか。帰国は22日ころだったはず。なんでも、中国各地から集まった30人ばかりの代表団の一人で、鳥取でのホームステイは若桜のNさん(日本共産党町議)一家が引き受けることになった。ダウラでは、Nさんご夫婦と通訳の男性が彼女を囲んでいた。通訳の男性は、中国で終戦を迎え、戦後もしばらく中国人の家で暮らしていて、中国語を体で覚えたのだという。
 会話はもっぱらわたしとのあいだで弾んだ。

    「あなたはどちらの方?」
    「北京に住んでいるけど、実家は吉林省です」
    「あぁ、そう・・・わたしは、吉林と寧夏と青海だけ行ったことないんです。
    他の省は全部行きましたよ」
    「へぇ・・・、ぜひ吉林にも遊びに来てくださいよ」
    「吉林には行ってませんが、お隣の黒龍江にはなんども行きましてね。
    朝鮮族の村や、オロチョン族、エヴェンキ族の調査をしたんですよ。
    ハルピンだけで5回は行ってますからね」

 黒龍江省の省都ハルピンは美女の産地として知られている。中国の客室乗務員(スチュワーデスって言ったらいけないんでしょ?)のコンテストで、毎年のように1位になるのだとハルピンの人たちは自慢する。中国一のリゾート地に成長した海南島の大きなホテルでも、わざわざハルピンの女性をカウンター係にスカウトするのだと聞いた。たしかに、ハルピンの女性はエキゾチックな美しさを備えている。「混血」の産物であろう、という見方が強い。漢族、満州族、そしてロシア人の融合がハルピンの女性を美しくした。たしかに、道理はある・・・


 わたしは白髭のマスターに小声で話しかけた。「この人、漢族じゃないと思う。だって、漢族の女性はこんなに端正で綺麗じゃないもの」。マスターも頷いた。そうだな・・・だれに似ているかと言えば、若い頃の井森美幸がもう少し美人になった感じかな。身長が高すぎるけれども、言葉さえ話さなければ、日本人と言っても疑われないだろう。そういう漢族は非常に少ない。わたしは、正直に感想を伝えた。

    「失礼かもしれませんが、あなたは漢族ではないでしょ?」
    「いえ、わたしは漢族ですよ・・・」
    「漢族には、あなたのように綺麗な女性はほとんどいないですよ。
    吉林は朝鮮族や満州族が多いでしょ・・・そういう民族の顔立ちの
    ようにみえるんですけど・・・」

 彼女は無言のまま、笑みを浮かべた。中国では、自分を「漢族」だと紹介する場合でも、じつは、母方か父方が少数民族の出自をもつケースが少なくないのだ。

 その後、彼女は、服や靴が買いたいと言い始めた。

   「東京のお店を歩いてみたんだけど、高いし、服はそんなに格好良く
   なくて・・・でも、東京の女性が穿いているブーツは素敵だったわ・・・」
   「鳥取で買い物するなら、とりあえず大丸っていうデパートに行ってみる
   しかないんじゃないですかね・・・あそこも高いけど。わたしは無印でよく
   服を買うんだけど、たぶん地味すぎて、中国人はあんまり好まないと思いますよ」
   「そうね、たしかに、派手な服が買いたいの・・・」

 結果、ホームステイ先のご夫婦が大丸に彼女を連れていくことになった。「付いてきてくださったら助かるんですけど」とまで奥様に軽く誘われたのだが、「そこまでくっついてくと、ストーカーみたいに思われますから」と言ってお断りした。

 井森美幸のような吉林の女性は、言葉ではなく、指で数字を示し、年齢を教えてくれた。24歳。いまから24年前の1984年夏、わたしは2年間の留学を終えて日本に帰ってきた。当時の中国は「一人っ子」政策がはじまったばかりのころで、「晩婚晩育」をスローガンに掲げていた。そのころ生まれた赤ん坊が、見事な大人の女性となってダウラにあらわれたわけだ。
 中国の一人っ子は「小皇帝」と呼ばれる。いや、今日の場合は、「小后妃」か。お姫様との一期一会でありました。


  1. 2008/11/09(日) 00:32:45|
  2. 食文化|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:2
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ハクチョウは寝ている。

広告していただきました、「ハクチョウとギターの夕べ」はぶじ終わりました。演者以外にお客さんが30名近く入ってなかなかよい雰囲気の夕、月太郎さんの夕暮れから開始、7名が演奏しました。
ハクチョウは演奏が始まる前次々と帰ってきて、終了時にはギターの音の中眠りについていました。
次はぜひ・・
  1. 2008/11/09(日) 19:44:24 |
  2. URL |
  3. 門永哲郎 #-
  4. [ 編集]

門永さん

さきほど六弦倶楽部のブログをみましたよ。お疲れ様でした。当方、土日の入試業務が終わり、疲れて爆睡しておりました。スケジュールがあうようでしたら参加させていただきますので、またお誘いください。
  1. 2008/11/10(月) 00:44:02 |
  2. URL |
  3. asax #90N4AH2A
  4. [ 編集]

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