学生時代に近江坂本の町並み調査に参加していたことがあり、以来、蕎麦好きのわたしは坂本の老舗「
鶴喜」の味が忘れられなくなったんです。今年はどういうわけか、近江に行く機会が多く、
夏の訪問の最後に「鶴喜」に寄ったのですが、残念なことに、おおいに落胆してしまいました。緬は乾麺を茹でたもの、おつゆは缶売りの製品をそのまま使っている(に違いない)。でなければ、あんな味にはなるはずはありません。鶴喜は凋落してしまった・・・
その点、われらがそば切り「
たかや」の充実ぶりには胸を張れますね。とりわけ扇ノ山の辛み大根と蕎麦の相性は最高で、いまや蕎麦会における浅田真央かイチローのような存在に駆け上りつつあります。出雲だろうが、信州だろうが、越後だろうが、どことでも勝負できますよ、「たかや」は。そういえば、京都は御池の「
そば倉」が潰れてしまったから、辛み大根の「おろし蕎麦」と冬季限定「
牡蛎蕎麦」を食せるのは、わたしの知る限り、「たかや」だけになってしまいました。
「たかや」は音楽も良いのです。農業倉庫を改造した内装にバロック系の音楽がよくあう。しかも、ギターのセレクトが多くてね。ジョン・キング(ウクレレ)や
山下和仁の『無伴奏チェロ』もこの店で聴いて、さっそく取り寄せたんだから。いまや、猫も杓子もジャズをBGMにする店ばかりになってきましたが、「たかや」のバロックは、なんていうのかな、蕎麦の爽やかさとの相性という点でこれ以上のものはない、とわたしは思っています。
ところが、ひと月ばかり前、ジャズが流れていたんです。しかも、ガットギターのソロ。いったいだれだろう。ガット・ギターを使うジャズ緬じゃなかった、ジャズメンと言えば・・・アール・クルー?・・・ラルフ・タウナー??
全然ちがうのね。クルーは西海岸のフュージョン、タウナーはECMの代表選手ですからね、流れてる音楽はスタンダードなんです。ふと、ローラン・ディアンスの『
ナイト・アンド・デイズ』が頭に浮かんだんだけど、やっぱり違うよ。ディアンスはもっと難解な和音を多用するし、正直、奏法はこんなに緩くない。
うぅ~ん、いったい、だれなんだ!!???
悔しいけれど、マスターに訊ねるしかない。すると、あっさり、
「ジョー・パスですよ」
ときた。えっ、
ジョー・パスにガットギターのソロがあったなんて・・・恥ずかしい・・・全然知らなかった。頼んでCDジャケットをみせてもらったら、『枯葉』って書いてある。ジョー・パスの『枯葉』??
帰宅し、さっそくアマゾンで検索したところ、ありました。たしかに『枯葉』というアルバムがあった。値段は高いぞ。中古品のみで最低価格が7,999円。ここであきらめてはいけない。注文してもいけません。次に「Joe Pass」で検索するのです。そこに『Autumun Leaves(枯葉)』というタイトルのアルバムはなかったけれども、『枯葉』と同じデザインの『Unforgettable』というアルバムを発見。値段は格安で、caiman_america が906円で輸入盤を売りに出している(送料340円は別料金)。中身を確認して、『Unforgettable』=『枯葉』であるのは間違いないことが分かり、ただちに注文した次第です。
「アンフォゲッタブル」は、ご存知のように、ナット・キング・コールが1951年に大ヒットさせたラブ・ソングで、娘のナタリー・コールが1991年に父の歌声とオーバーダブしたデュエット版をリリースして話題になりました。一方、ジョー・パスのレコーディングは1992年の8月となってます。ナタリー・コールのリバイバル・ヒットにあやかって、『アンフォゲッタブル』をタイトルにしたのかもしれませんね。
さて、ジョー・パスにはもう1枚、ガットギターソロのアルバムがあることも分かりましたよ。1974年録音の『アイ・リメンバー・チャーリーパーカー』。個人的には、こちらのほうが好きですね。いずれも大人っぽいジャズ・バラード集で、蕎麦屋さんのBGMとしては最適ですが、長距離のドライビングにはちと刺激が足りない。明日、刺激のあるギタリストのお話をしますので、本日これまで。
- 2008/12/30(火) 00:06:52|
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