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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

ヒマラヤ山麓を往く -ネパール紀行(Ⅱ)

オリ01赤(神聖)02バクダプル01


段畑をぬけて

 カトマンドゥに到着した10日は、ヒンドゥ教の「オリ」というお祭りの日であった。カトマンドゥ空港からバクタプルへ向かう車中から、真っ赤な塗料を顔中にぬった若者たちがあちこちに群をなしていて、袋に入った水を投げあっている姿を何度もみた。プロ野球優勝チームのビールかけにも似た水かけ祭りなら、中国雲南省シーサンパンナ・タイ族の「溌水節」が有名だが、ネパールでは水をかけるだけではなく、顔や体や衣服に赤色の塗料をぬりつける。

バク01王宮03オリ01 自主的にもぬるのかもしれないが、わたしたちがみた限りでは、嫌がる若者の顔や衣服に無理矢理塗料をのしつけている。あとで述べるように、わたし自身がその被害にあった。一種の無礼講を許す非日常の時間にわたしたちは遭遇してしまったのだ。ガイドのシュリさんの説明をいい加減にしか聞いていなかったので、ここに書く内容もいい加減だけれども、なんでも、ヒンドゥ教の「鬼」の妹オリゴを殺した日にちなんでいるらしい。その様は、バクタプル旧王宮の石彫にもみることもできた(←抱かれてひっくり返っているほうがオリゴ。腹から臓物が吹き出している)。赤は「神聖」の象徴たる色で、祭の名称「オリ」はオリゴに由来するという。
 無礼講の1日であるとはいえ、嫌がる大人や旅行客に水をかけたり、塗料をぬりつけてはいけない。これを取り締まる警察官が各所に配備されていた。J社ガイドのシュリさんも、旅行者に向かって水をかけようとする子どもや若者をみかけると、厳しい顔をして注意を促した。しかし、同行していた一人の女性が「あれ、危ない」と危険を察知し始めた。小路の前方で、ネパール人の若者10名以上とサッカーシャツを着たヨーロッパ人男女がじゃれ合い、水をかけ、赤や紫の塗料をぬりあっている。その騒ぎに接し、わたしはトゥールーズとマルセイユでみたフーリガンを思い起こしていた。

オリ01赤(神聖)02バクダプル02浅川 ガイドを含むわたしたち4名は、ヨーグルト屋さんに退避することにした。シュリさんによれば、バクタプルでは一、二を争うヨーグルト屋さんだそうで、たしかに美味しかった。よっしゃ、そろそろ大丈夫だと腰をあげ、バスに向かって歩を進めていったところ、次のチョークで見事捕まってしまった。さすがにネパール人は手をださないが、フーリガンと化したヨーロッパの男女は遠慮を知らない。おかげさまで写真のとおり。車に戻って、ウェットティッシュで懸命にこすったところ、魔法のベストと染めたばかりの髪は黒に戻った。しかし、リュックには紫と朱の染みが残って消えない。まぁ、いいか。ひとつ勲章が増えたようなものだ。

バク04ヨーグルト

ナガルコット01段畑03


 
ナガルコット11段畑01

 バクタプルからナガルコットに向かう途中の山間部には見事な段畑が形成されていた。棚田ではなく、小麦やジャガイモや野菜を栽培する段畑である。日本なら、明日にでも「重要文化的景観」に選定されそうな景観が至るところに展開している。ただ、J社のツアーなので、なかなか車をとめてもらうわけにもいかず、あまり良い写真が撮影できなかった。

 ナガルコットのホテルは古びた建物。このホテルの庭からもすばらしい段畑の景色がみわたせる。夕暮れのデッキに腰掛け、パソコンでデジカメの整理をしていると、中国の団体客があらわれた。審陽からやってきたご一行で、久しぶりに中国語を使ってみることにした。いつもどおりの挨拶で、「中国語が上手いね」とお世辞を言われ、必ず「ナーリーナーリー(いえいえ)」と答える。目の前にひろがる景色に目をやり、「雲南省大理あたりの景色に似てますね」と語りかけると、審陽人たちも「たしかにそうだね」と返してきた。

 いま深夜に蝋燭を2本灯して、この原稿を書いている。電気はなく、水もでない。ネパール中がこういう状態らしい。乾期の真っ最中で、水がなく、水力発電だけに頼っているこの国では1日4時間ばかりしか電気の供給がないのだそうだ。ホテルには自家発電機があると聞いていたが、2~3時間で消えてしまった。そのあいだにデジカメの充電を終えたのはラッキーだった。明日からもこういう生活が続くとすれば・・・頭が痛い。(続)

ナガルコット01段畑02


  1. 2009/03/12(木) 12:56:32|
  2. 景観|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:2
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コメント

ビックリ仰天しました

このお祭り「オリ」のことは初めて聞きました。タイでは「ソンクラン」というお水をかけあう祭りがありますが、どの国も十二分に楽しんでいるようですね。笑
ちなみに写真のおばちゃんと白い物体、これは「美味しいヨーグルト」ですか?
  1. 2009/03/12(木) 14:26:08 |
  2. URL |
  3. sunny #vh1mV2jE
  4. [ 編集]

sunnyさん

コメント、ありがとうございます。
ヨーロッパの男女はさぞかし楽しんだでしょうが、わたしは髪の毛とベストとシャツとリュックにべたべた色がついて、しばらく冴えない顔をしておりました。ヒンドゥーはお祭りが多くて、1年前のバリではツアーの初日に断食(元旦)にあたってしまい、ホテルの外にでられなかったりして、・・・まぁ、すべて「文化」を知るよい経験と思うしかないですね。
おばあちゃんと映っている白い物体は、たしかにヨーグルトです。とても美味しかったですよ!

  1. 2009/03/12(木) 20:26:34 |
  2. URL |
  3. asax #90N4AH2A
  4. [ 編集]

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