第1期フォープレイの演奏は、凄まじく洗練されてポップなジャズです。これはあきらかにジャズなんだが・・・どこか懐かしい匂いがする。3つの音楽が頭をかすめた。
まずはスタッフ。1970年代から80年代初頭に東海岸で大活躍したイージー・リスニング系のグループですが、かれらの根っこにあるのは、ジャズではなく、リズム&ブルースで、いま聴きなおすと、コーネル・デュプリーやエリック・ゲイルのギターはそれほど洗練されていない。スタッフは、やはり肉食系でしょうね。R&B指向は後のガッドギャングでさらに鮮明になっていった。クルセイダーズのことを思い起こすと、ラリー・カールトンはむしろ「スタッフ→ガッドギャング」系のバンドのほうが活きるかもしれませんね。
次に浮かんだのが、高中正義。「ブルーラグーン」、懐かしいでしょ。歌のないチューブですよね。夏のインスト・ミュージック。学生時代、助手席にガールフレンドを乗せて流す音楽といえば、高中かボズ・スキャッグスってところでした(さらに音楽通ならルーサー・ヴァンドロス?)。いま聴いても、高中の作曲力はたいしたもんだと思いますが、しかし、あのギターは紛れもなくロックですね。草食系に分類してもよいけれど、ジャズでは決してない。

わたしが行きあたったのはナベサダなんです。渡辺貞夫。これまた学生時代に遡るんですが、『カリフォルニア・シャワー』(1978)から『オレンジ・エクスプレス』(1981)あたりにかけての爽やか資生堂CM系フュージョン時代のナベサダですよ。メンバーを調べてみるとおもしろい。『カリフォルニア・シャワー』のリズム・セクションは、デイヴ・グルーシン (p)、リー・リトナー (g)、 チャック・レイニー (b)、ハービー・メイソン (d)。ほら、フォープレイのうちリトナーとメイソンの2名が入ってる。この音楽はジャズです。当時、「フュージョン」という枠にくくられていたけれども、ジャズメンでなければできない曲作りと演奏になっている。ロック系のミュージシャンでは不可能な草食系の洒落た都会の音楽。当時、ナベサダは、一方でグレイト・ジャズ・トリオ(H・ジョーンズ、R・カーター、T・ウィリアムス)と共演し、『アイム・オールドファッション』というパーカー系ハードバップの真髄ともいうべきアルバムを作ってましたからね。こういうルーツをもっているミュージシャンがポップな路線に踏み出してできあがったのが『カリフォルニア・シャワー』だ。
結論を急ぎましょう。一つの大胆な仮説として読んでいただければ幸いですが、フォープレイの音楽はナベサダが創り出したジャズ系のポップ&フュージョン・サウンドに根ざし、そのサウンドからホーンを抜いて音楽の洗練度を高めたものと言っていいんじゃないか・・・反論もあるでしょうね。
以下、強調しておきます。リー・リトナーという怪物ギタリストにとって、フォープレイほど自身の良さを表現できている音楽集団はない、とわたしは思う。リトナーのリーダーアルバムよりも、フォープレイにおけるリトナーのほうがはるかに素晴らしい。リトナーがもっている本来の凄みを引き出している点で、ボブ・ジェームスの存在は大きい。ネイザン・イーストのスキャット・ベース、そして繊細なメイソンのドラムスとの相性も抜群だが、なによりリトナーの表現力をフル稼働させているのはジェームスのコンセプトではないかな。おそらくリトナーはこのことに気づいていない。自らがプロデュースするリトナーのほうが上だと思っているのだろう。でなければ、どんなに忙しくても、フォープレイを脱退するはずはないもの。
脱退からすでに15年近い歳月が流れている。いちど解散して再編成すればいいんだ。カールトンに悪いかな。(完)
- 2009/04/12(日) 00:01:21|
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