大学院授業のオリエンテーションを終えました。
中国語のテキストを読みます。テキストは『紅楼夢』。冗談だと思うでしょ? まともに中国語を学んだことのない修士課程の1年生に『紅楼夢』を読ませる??
『紅楼夢』の原文なんか、帝国大学の院生に読ませても、わたし自身が読んでも、間違いだらけの訳になってしまいます。読むのは『紅楼夢』の絵本です。図書情報を示しましょう。
原著: 曹雪芹 高鶚
書題: 中国古典四大名著『紅楼夢』 児童注音版連環画(192p.)
出版社: 北京少年児童出版社
出版年: 2007年7月
ISBN: 978-7-5301-2024-8/1・745
定価: 18元
『紅楼夢』は日本の『源氏物語』と比肩される中国貴族の恋愛小説です。ただし、『源氏物語』は平安時代で、『紅楼夢』は清の時代のお話。両者は恋愛小説ですが、じつは当時の貴族住宅を理解する上で欠くことのできない史料でもあります。それが証拠に、池浩三氏は寝殿造住宅に関する専門書として『源氏物語-その住まいの世界-』(1993)と題する大著を刊行しています。『紅楼夢』については、これに匹敵する建築史学的業績はないように思うのですが、いわゆる「四合院」系の貴族住宅がどのように使われたのかを知る文献資料としてこれ以上のものもないでしょう。いずれだれかが『紅楼夢』の建築史学的解釈を試みる大著をあらわしてくれることを期待してます・・・なんちゃって書いたら、「おまえがやれっ!」て野次が飛んできそうですね・・・

この絵本の良いところは、中国語文章を構成するすべての漢字の上にピンイン(併音)が併記してあることです。漢字の発音が分かるだけでなく、中日辞典を引きやすい。部首索引に頼る頻度が大きく減るでしょう。この絵本を読む目的は、もちろん中国語の基礎を学ぶことですが、「会話の基礎」を身につけるためではありません。中国語を「読む力」を身につけることが目標です。辞書を引きながら、報告書レベルの中国語を読めるようになってほしい。後期には適当な論文もしくは報告・紀行文などを探し、それを輪読し翻訳したい。前期はその講読のための基礎を『紅楼夢』の絵本から学ぶのです。
さて、中国語を学んだ経験のない院生諸君に対して、どのような教育方法をとるべきか。今回、わたしはアナログに徹することにしました。各自、原稿用紙を用意し、以下の手順でホームワークを進めます。
1)原著の漢字を筆写する。原稿用紙の1マスに漢字1文字が対応するように書き写します。
2)筆写した漢字の真下の欄にピンインを筆写していきます。
3)筆写した漢字は中国の簡体字なので、これを日本の漢字に改めて原稿用紙のマスを埋めていきます。本来は正式な「繁体字」に直したいところですが、これは煩わしい作業なので日本の「簡体字」に改めることにします。
4)そして、訳文を日本語で書いていきます。
以上がホームワーク。授業でホームワークを発表します。おそらく訳文は間違いだらけでしょうから、それを教師が修正していく。ここでわかりにくい文法等についても、説明します。
こんな具合に授業を進めていく予定です。さて、うまくいくかどうか?
絵本版『紅楼夢』の翻訳シリーズは以下でご覧いただけます。
『紅楼夢』翻訳
オリエンテーション 『紅楼夢』翻訳
第1章 『紅楼夢』翻訳
第2章 『紅楼夢』翻訳
第3章
- 2009/04/23(木) 00:56:39|
- 小説|
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コメント:2
こんにちは。コヤマです。実は、わたしの名前は中国の『瑶(ヤオ)民族』に由来しているので、中国には非常に親近感を持っています。(父親が中国好きだったことからきているみたいです。本当は日本史が専門なのですが。)中国語マスターできるようにがんばります。よろしくお願いします。
- 2009/04/23(木) 13:32:47 |
- URL |
- yo_oko #ncVW9ZjY
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そうですか、焼畑民族ヤオの末裔ですか・・・語学は楽しい! 期待していますよ!!
- 2009/04/23(木) 18:05:56 |
- URL |
- asax #90N4AH2A
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