カマド土台の破壊分析 教授によると、文化財の世界では、X線を使った「非破壊」分析が盛んにおこなわれているようですが、今回、わたしたちは、はからずもカマド土台の「破壊」分析をおこなってしまいました。その報告です。
加藤家班は1年生が集めてきた発泡スチロールを持って加藤家に移動をし、作業を始めました。まず、七輪の修復をアシガル君が担当し、部長さんと2年生のY君と私で土台の「三和土」について分析を進めました。アシガル君はオレンジの作業着、手にはゴム手袋を装着し何か怪しげな雰囲気を漂わせながらいざ接着開始。接着剤にボンド「クイック30」という、30分で接着する優れ物?を使っての作業です。七輪の接合修復は短時間で終わり、アシガル君は後述する土台修復に参加したあと、最後はカマド本体の足りないパーツを発泡スチロールで型どりできるかどうか補えるか、検討をしました。しかし、これが思いのほか難しく、手先が器用なアシガル君でさえ難航し、最終的に粘土を使ったほうが型をとりやすいであろう、という結論を得ました。

その間に私達は「三和土」の1部を慎重に剥ぎ取っていきました。部長さんと私が剥ぎ取った三和土を砕き粉末状にし、2年のY君が水を加え練っていきます。この時の部長さんは激しくかつ繊細に斧を振り回し、三和土を砕いて私を圧倒してくれました。部長さん熱かったです!
Y君が練っていた三和土の一部は徐々に土に近づいていきました。

この作業を繰り返しているうちに、教授が加藤家に到着。教授はまずアシガル君の作業をみていました。七輪の接合復原はほぼ完成していたのですが、接着剤がテカテカ艶光りしていて、先生とアシガル君は「被熱」の対処が必要だろうとほぼ同時に考えていたようです。
それから、教授は土台の設計図と土台本体の状況をじろじろ観察しながら、「この断面図はおかしい」と言われたのです。わたしたちの設計断面図には土台の床(とこ)部分を1層で表現していたのですが、下側の石板と上側の三和土の2層に分層しなければいけない、というが教授の指示でした。この断面図を完成させるためには三和土の厚みを知る必要があります。そこで、教授は僕たちに、
「床の一部分の三和土をめくって、下の石面を露出させなさい」
と指示されました。 この作業は困難を極めました。三和土は思ったより厚くて固く、なかなかはぎ取れないのです。いちばん上の写真に示したように、斧を使って叩いたり、ひび割れの部分から梃子を使って上にあげようとするのですが、なかなかうまくいきませんでした。「三和土」とはコンクリート同じくらい固いものだと感心しながら、半時間近く悪戦苦闘した結果、なんとかかんとか三和土をはぎ取ったのですが、その底には先週底に強いた角材がみえます。
要するに、カマド土台の床に「三和土」はなく、床の全体が板石であり、表面に黒灰色の土が薄く張ってあたということなのです。この事実は今回の「破壊分析」によってあきらかになりました。文化財を破壊することはもちろんよくありませんが、部分的な破壊実験によって「真実」を知ることができたのです。それから表面の薄い土塗り面をはがし、ぞうきんがけして石の表面を露出させました。

翌日、3・4年&院生ゼミで、今後の方針をみなで話し合いましたが、およそ以下のようなステップで作業を進めていくことになりそうです。
1.土台基礎となる木枠の加工・組立を加工班が進める。
2.土台修復班はひび割れした石の床の修復を適切な充填・接着剤(エポキシ樹脂orセメントor粘土)で進める。
3.破壊実験によって叩きだされた石の破片のうち大きなパーツは元の部分に戻す。
4.破壊実験によって叩きだされた石の破片のうち小さなパーツは元の部分に戻すことは不可能なので、金槌・ゲンノウなどで叩いて砂粒化させ、接合剤・充填剤に混ぜる。
5.接合剤・充填剤を何にするのかは実験の結果、判断する。
6.接合・充填剤を決定後、石床の下にベニヤ板等を置き、床のひび割れ部分・欠損部分等の接合部・充填部に流し込む。このとき、床の上面が水平になるよう調整する。
7.6の工程後1~2週間程度養生期間をとり、その後、基礎となる木枠の上に修復された土台をはめ込む。
以上、1~7の工程を進める一方、カマド本体の接合も進め、7の作業完了後、その本体を土台の上にのせればカマドの復原が完成します。(4年 ガード)
- 2009/05/18(月) 00:37:05|
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