第6章 元妃の里帰りp.36-40: 今城訳
1. 賈政(賈宝玉の父)の誕生日その日、栄国府・寧国府の一族が集まり、一緒にお祝いを
した。この時、一人の大監(宦官)が賈政に対して皇宮に出仕するように伝令した。
なんと皇帝は、賈府から長年後宮に入っている元春という長姉を賢徳妃(側室)
として封じ、さらに元妃(元春の妃名)が元宵節に帰省することまでも許したのである。
2. 賈政は(甥の)賈を呼びにいった。賈が帰ってきた後、鳳姐(王熙鳳=賈の妻)
は人を呼んで酒と料理を運んで並べさせ、2人はいすに腰掛け食事をした。
鳳姐は尋ねた。
「旦那様はあなたを行かせて何をさせようとしているの?」
賈は言った。
「まだ建てられていない省親園(里帰りを迎えるための庭園)の用事だよ」
【セリフ】 鳳姐「旦那様はあなたを行かせて何をさせようとしているの?」
賈「省親園を建てる件を相談するんだよ」
3. 省親園が竣工して、賈政は多くの客人を引き連れながら庭園を歩き回り、
みなに庭園の名前を考えさせて、しばらくして扁額に名を書き込んだ。
【セリフ】 賈政「先に皆様の字を書いていただき、元春が帰って来てから
決めましょう。」
4. まもなく貴妃が省親園に着こうとしているころ、賈政は走り出てくる賈宝玉
を見た。かれは賈宝玉の才能と学問を試そうと考え、ただちに宝玉を自分
とともに園内を散策させることにした。
5. 門をくぐるとすぐに小山が目に入り、眼前を遮っている。賈宝玉は一刻
思案して、「曲径通幽処」という題字がすらすらと口から出た。
【セリフ】 客人「絶妙!絶妙!最高にすばらしい!」
6. それから、賈宝玉は各所の景色に感応して、古典から語句を引用し、
扁額や対聯の題字を考え出した。多くの人が瞠目せざるをえなかった。
7. 庭園を出ると、賈政の若い付き人たちがやってきて取り囲み、賈宝玉の
ものを奪って言った。
「若旦那は今日散々目立ったから、私たちにごほうびを与えるのが当然です。」
8. 林黛玉は賈宝玉が自分の作った巾着を若い付き人に与えたと思ってとても怒り、
まもなく賈宝玉にあげようとしていた自作の匂袋を、はさみで切ってしまった。
9. 賈宝玉は巾着を(衣服の奥から)取り出して言った。
「君、これが何か見てごらん、君が私に物を作りたくないと思うなら、
この巾着もお返ししますよ。」
10 林黛玉は雨のような涙が流れるほど取り乱し、はさみでまた巾着を切ろうとした。
賈宝玉はあわてて身をひるがえらせ、巾着を奪い取り、
「妹よ、あれこれ言わないでおくれ。」
と謝った。とても長いあいだ謝り続け、2人はやっと元通り仲良くなった。
11. 元宵節(小正月)の夕方になって、元春は金色の屋根と鳳凰の刺繍がついた
駕籠に乗って賈府に到着し、周囲に大監の列が一隊一隊付き従っていた。
12. 駕籠が省親園に入ってから元春は駕籠を降り、船に乗った。両岸の美しい
景色を見て、彼女は感嘆せざるをえなかった。
「なんて豪勢なの!」
13. 船が岸辺に着いた後、元春は庭園を出て、賈母(賈政の母)の部屋の中に到着し、
跪拝の礼をしようとした。賈母はあわてて先にひざまずいて(元妃を)おしとどめた。
14. 賈政は元妃に拝礼して言った。
「庭園の中にある扁額の題字は宝玉が書いたものです」
元妃は大いに喜び、急いで賈宝玉にこちらに来るように伝えた。
【セリフ】 元春「早く宝玉をつれておいで!」
15. 元春と宝玉の気持ちは母と子と同じだった。宝玉が拝礼した後、
元春は彼を抱きしめて言った。
「こんなに大きくなったのね!」
16. その後、元春は庭園中の名所に名を与え、「瀟湘館」「傷蕪苑」と書き記して、
省親園を「大観園」と名づけた。
17. この時、1人の大監が言った。
「お嬢様、宮殿に帰る駕籠を出しましょう」
元妃は捨てがたい気持ちがあったけれども、心の痛みを抑えて庭を去っていった。
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『紅楼夢』翻訳
オリエンテーション 『紅楼夢』翻訳
第1章 『紅楼夢』翻訳
第2章 『紅楼夢』翻訳
第3章 『紅楼夢』翻訳
第4章 『紅楼夢』翻訳
第5章 『紅楼夢』翻訳
第6章 『紅楼夢』翻訳
第7章 『紅楼夢』翻訳
第8章
- 2009/06/29(月) 00:02:30|
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