反省と講評 2日のプロ研1&3は、復元したカマドの「活用」第1弾として蕎麦打ちイベントを開催した。この蕎麦づくりはただの食事会ではない。プロジェクト研究のなかの「実験」として位置づけるものであり、4チームが蕎麦粉の種類や小麦粉との調合比率、さらには火処を変えて蕎麦をつくり、その味の違いを確かめることに目的がある。
この日、ASALABに関わる学部生・院生のほぼすべてが加藤家住宅に集結した。ただし、プロ研1&3は1・2年生の演習なので、このたび復元したカマドは1・2年が使用し、2週間前にコーヒーミルで製粉した岩手産の蕎麦粉についても1・2年が調理に使うことにした。ところが、イベント開始直前に岩手産の蕎麦粉がないことが判明した。加藤家を探し回ってもどこにもなく、だれもどこにあるかを知らない。唯一知っている可能性があるガードは就職活動出張中で、電話してもつながらなかった。
岩手産の蕎麦粉は大学の演習室に置き去りにされたままになっていた。これをアシガルが探し出し、なんとかことなきを得た。ガードのいない状況でイベントの準備をしたのは黒猫だった。黒猫は薪や鍋、そして審査員の星取表などの準備で大変だっただろう。ただ、イベントの目的を理解しないまま準備していた。とりわけ、2年生には岩手産の「十割蕎麦」を指定しながら、1年生に市販蕎麦粉の「二八」を指定したのは大きな過ちであった。自ら挽いた粉を「十割」にする場合と「二八」にする場合の違いを確かめるべきであり、演習開始直後から変更を求めていたにも拘わらず、わたしが買い出しから戻ってきても、1年生が市販蕎麦の「二八」を作っていたのには驚いた。

1年のH君がこの誤りに気付き、自らわたしに報告しにきた。そのときまだ岩手産の蕎麦粉は半分余っていたので、1年生は「二八」を市販粉と岩手産粉で2回作ることになった。これはこれで良かったと思っている。以上の書き方からすれば、今回の失敗は黒猫に責任があって、それをわたしが責めていると思う読者も少なくないかもしれないが、決してそういうわけではない。黒猫一人が準備に奔走したことに問題があるのだ。最初に述べたように、プロ研1&3は1・2年生の演習なのだから、1・2年がリーダーシップを発揮し、準備を進めるべきだった。黒猫はそのアドバイザで良かったのではないか。加藤家に関わる修復活動は一部の4年生の卒業研究のテーマになるから、かれらが主導するのは仕方ないとしても、せめて蕎麦づくりについては1・2年中心の運営がみたかった。この点、今回のプロ研1&3の大きな反省点だと思っている。
そういう不満があったものの、買い出しから帰ってくると、学生たちは蕎麦づくりに熱中していた。その姿をみて安堵し、嬉しく思った。どのチームも、いちばん美味しい蕎麦をつくろうと必死になっていた。チームワークの良さも十分みてとれた。先週の反省から、火力が強まり、麺のできばえは著しく向上した。以下は各チームに対する講評である。
1年生チーム 4名 浅★1.5 福★2.0 林★1.5 計★5.0
二八蕎麦: ①ジャスコで買った市販の蕎麦粉
②岩手県一戸町産の蕎麦実を自ら製粉した蕎麦粉
火処: 復元したカマドの右側
①の市販蕎麦粉でつくった麺(↑)はやや厚みがあるが、そこそこ長さを確保できていて、味も良かった。この麺から審査が始まったので、★は三星の平均値1.5とした。②は4年までの審査が終わってから、最後にでてきた(↓)。2年生の岩手産十割が高い評価を得ていたので、それに中力粉を混ぜた「二八」は期待していたのだが、同じ岩手産の蕎麦粉を使っているにも拘わらず、二八のほうが硬く、粉っぽい。1年生の説明を読めば分かるけれども、中力粉と水を何度も足したことが、あるいは逆効果だったのかもしれない。麺が厚くて太く、長さも十割よりやや短いぐらい。両者を口にいれて、何度も噛み比べてみたのだが、1年のほうがあきらかに硬い(後日「たかや」のマスターに問うたところ、あとで中力粉を足すと、その粉が当初の粉に馴染まず、粒となって触感に残るとのこと)。中力粉を多く加えることよりも、蕎麦粉自体を長い時間をかけてこねることのほうが重要ということだろうか。蕎麦湯は薄味だった。

蕎麦の原生種があるとしたら、こういう味なのか!?2年生チーム 3名 浅★2.5 福★2.5 林★2.0 計★7.0
十割蕎麦: 岩手県一戸町産の蕎麦実を自ら製粉した蕎麦粉
火処: 復元したカマドの左側
製麺のプロセスではいちばん悪戦苦闘していた。まず驚いたのは薄茶色の粉を練っているうちに黄緑色に変わってきたこと(色の変化については↓の写真参照)。他のチームの麺とはあきらかに違っている。しかし、粉は硬すぎて、なかなか面状にひろがらない。長時間こねにこねて粉を面状にひろげたのだが、二つ折りはあきらめ、そのまま包丁で切って茹であげた。この茹で上がりの麺にはさらに驚いた。わたしは全国で蕎麦を食べ歩いてきた蕎麦通の一人だと自負しているが、これまで出会ったことのない味がした。麺は柔らかく、そこそこの長さを保っていて、咬んでいるとうっすらとした苦みが口内にひろがる。審査会では「蕎麦の原生種があるとしたら、こういう味なのかと思った」と述べた。蕎麦湯も驚きで、黄色くどろんとしたスープにやはりうっすらとした苦みがあり、薬湯のような味がした。この蕎麦や蕎麦湯の味を好むかどうかは人によって違うだろうが、わたしは「想定外」の味に出会えた感激が大きく、しかもそれはほろ苦い「大人の味」であり、4チームのなかで最も高い評価を与えた。残念だったのは、時間をおいて蕎麦が冷えるとともに苦みが強くなり、試食段階では苦くなりすぎて学生諸君に不評だったこと。茹で上がりを味わってほしかった。変色や味の変化は「酸化」によるものなのだろうか。

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浅川ゼミA(3年生チーム) 3名 浅★1.5 福★2.5 林★1.5 計★5.5
五割蕎麦: ジャスコで買った市販の蕎麦粉を使用
火処: カセット・フー
3年生は特別参加。ネットで麺づくりをよく研究していたが、レシピ通りにはいかなかったみたいだね。五割蕎麦はつなぎ中力粉が増えるので、いかにも麺らしい長い蕎麦ができると期待していたのだが、結果は写真(↓)にみるようにマカロニのように短いパスタとなってしまった。味は良かった。ただ、2年の十割があまりにも強烈だったので、「想定範囲内の味」と思ったのと、蕎麦湯が薄すぎた。
浅川ゼミB(4年生チーム) 3名 浅★2.0 福★3.0 林★1.5 計★6.5
二八蕎麦: そば切り「たかや」提供の蕎麦粉を使用
火処: イロリ
4年生はそば切り「たかや」提供の鹿野産蕎麦粉を使用し、十割ではなく、二八でつなぎの中力粉を使えるので、製麺段階からかなり有利な立場にあったと言えるだろう。イロリまわりでの製麺プロセスをみていても順調で、細くて長い麺が仕上がっていた。ところが、茹で上がった麺は切れぎれになっている(↓)。それでも、3年生の五割より麺はずいぶん長く、味も良い。流石、「たかや」の粉だ。しかし、やはり「想定内の味」という印象をぬぐえなかった。蕎麦湯は岩手の十割と真反対で、ほんのりと甘みがあり、濃さもほどよく美味しかった。

以上の審査を集計した一覧表を下に示す。みんな、お疲れさま!
残るはパワーポイントの作成、プレゼン練習、学内WEBのアップですよ!!


↑蕎麦湯の色の違いに注目してください。
- 2009/07/08(水) 00:27:21|
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