
昨日報告しましたように、9日のP1&P3では、久しぶりに池田住研の社長さんが視察され、鳥取市のSさんもご同席いただきました。それはもちろん加藤家住宅修復の完成にむけての打ち合わせのためですが、夏休み以降、2度の公開ワークショップを開催する必要があり、そのワークショップをいつごろどのような形でおこなうかについての最初の検討をおこなったのです。今回の視察・協議で浮かび上がった点は以下のとおりです。
左官作業、来週からスタート! 加藤家の庭には修理前の小舞壁の土が取り置いてある。これに新しい土とスサ(藁)を混ぜて1~2ヶ月養生させる必要がある。加藤家の壁土、屋根土については、庭にブルーシートを敷いて、篩にかけた土を堆積させる。それに新しい土とスサを混ぜる。全体の形状はモンジャ焼きのようにして、中央のカルデラ?部分に水を溜め長靴を履いた足で土をこねる。16日(木)にピヴォさんが倉吉の左官業者さんのトラック(新しい土と藁を載せている)を誘導してきて、加藤家の庭で土練りを始める。
建具の納まり 2006年度の修理で傾斜した柱を矯正したために、鴨居・敷居間の内法寸法に変化が生じている。鴨居・敷居間に納まっていた襖・障子類が納まらなくなったり、納まっても外れやすくなっている部分が少なくない。また、傾斜の変わった柱との接触面に細長い三角形の隙間が生じているところも多々みとめられる。これについては、いわゆる三角形の打物を柱に釘打ちしている処理するとのことだが、加藤家住宅の場合、建築年代が18世紀前期以前に遡る可能性が高く、一部の柱はチョウナ仕上げではないか、と思われる痕跡もあり、当初柱に釘打ちするのは問題がある。また、細長い三角形の打物を学生が加工するのは難しい。これについては、12日(日)にゼミOBの数寄屋大工と建具師がやってくるので、かれらの意見も聞き、さらに公開ワークショップでは文化財建造物修理の主任技師を招聘して意見を聞くこととした。
床束の修復・補強と土台下の石詰め 一部の縁束が腐朽し始めている。差し替え可能なのものは差し替える。差し替えが難しいものは、添束を新設して大引を受ける。一部の束や柱の根本が白色化しており、苔菌類が付着した可能性があるのため、河原町林業試験場の技師さんに来ていただいたところ、雨落の水分が犬走の石材を粉化して吹き上げたものと推測されるというコメントをいただいた。ただごく一部には薄緑色の苔菌類が付着している部分もあることが分かった。白色化した部分に傷みはないが、薄緑色の部分は若干劣化し始めているので洗いとる必要がある。
一方、地面と土台の間の隙間に石を詰めて安定した基礎を作る予定であったが、この2年間、柱下の部分だけに石を詰めただけで、他の部分は空隙ができたいる。じつは2006年度に学生がいちどすべての部分に小石を詰めたのだが、ゆるゆるの状態だったので、詰め直しということになり、施主が石工業者に依頼することになっていた。しかし、3年間放置されたままであり、もういちど学生たちでしっかり詰めなおしことになった。
軸組の構造補強 2006年度の調査で加藤家住宅主屋は大黒柱を中心に左まわりで大きく歪んでいることがあきらかになった。この補正のために、建物の4隅の4本柱による「コア」構造を作ろうと予定していたのだが、結局、土間に1本の柱を立てただけで、「コア」となる構造が北側にしか出来なかった。反対側(南側)についても、2ヶ所の隅で「コア」構造を作り、建物の再傾斜を防ぐこととした。この工事は学生ができるものではなく、職人さんにお任せすることにした。
竹の雨樋 屋根まわり全体に竹樋をつけた場合、積雪処理が問題となる。雪よけの方法を検討する必要がある。
裏門の復元 裏門については2007年度に研究室で発掘調査をおこない、礎石などを検出して遺構平面を復元した。その後、扉板が残存していることも判明し、復元断面・立面図も作成している。この門についても廃材・古材の再利用(ゼロエミッション)を実践するが、それだけでは足りないので、新材で製作した場合の材料費を池田住研で見積もりしていただくことになった。社長によると、それほど材料費はかからないだろう、とのこと。問題は基礎工事だが、2本の棟柱は礎石建ちとし、控柱をコンクリート基礎として安定させる案が提示された。屋根については杉皮かこけら(コア)を使おうということになったが、林業試験場職員さんによると、杉皮の入手は難しいとのことなのでこけら葺きにすることになるだろう。
今後のスケジュール7月12日(日):数寄屋大工の岡村さんと建具師の山本さんを招聘して、プレ・ワークショップ
を開催。お二人ともタクオさんと同期の環境大1期生。建具修理などの実演をしていただき、
意見交換する。公開ワークショップのための実践的な下準備。
教授、タクオさん、黒猫くんで対応。
7月16日(木): 加藤家住宅に壁土搬入。土練りスタート! 手があいている学生は土台下
の石詰め、ロフト階段の簾による修景などに取り組む。
8月下旬:
第1回公開ワークショップ開催。壁土の養生を終えたころを見計らい、
左官仕事に関するワークショップを開催。左官業者さんに模範作業をみせて
いただき、学生はじっさいに壁塗りに挑戦する。
9月中旬:
第2回公開ワークショップ開催。建具再設置のための工程について
主任技師の指導を受けながら、職人・大学関係者等全員で方針を協議し、実践する。
最後になりましたが、本日は社長さん、佐々木さんお忙しい中本当にありがとうございました。本日の話し合いで加藤家プロジェクトがまた一歩進むことが出来ました。これからもお世話になると思いますがこれからもアドバイスをよろしくお願いします。(ガード)
- 2009/07/13(月) 00:25:34|
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