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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

公開ワークショップへむけて(Ⅱ)

集合


1期生とのプレ・ワークショップ

 7月12日(日)、加藤家住宅でプレ・ワークショップを開催しました。プレ・ワークショップの目的は、おもに建具の納まりについて、数奇屋大工と建具師の立場からのアドバイスしてもらい、修復手法を実演しビデオに録画することです。この録画は、今後、学生たちの重要な教材になるでしょう。もちろん、12日の成果は公開ワークショップの下準備となるものであり、公開ワークショップは、さらに主任技師、池田住研の大工さんたち、学生、地域住民を巻き込んでのおおがかりなものになる予定です。
 昨日、タクオさんが報告されたように、今回招聘したのはASALAB1期生の岡村さん(数奇屋研究所「心傅庵」大工)、 山本さん(若林建具)の2名です。

04岡村の道具


 私が加藤家に着いたのは、9時40分ころ。急いで準備をしていると車のエンジン音が聞こえてきて、タクオさんがあらわれました。建具師の山本さんも一緒で私は面識がなかったのですが、とても気さくでおもしろい方でした。私が準備をしているあいだ、タクオさんが山本さんを案内してまわられました。山本さんは「きれいになっている」と、現在の加藤家を絶賛してくださいました。10時になって、先生と岡村さん(縁の修復でお目にかかったことがあります)が到着し、ワークショップが始まりました。まず、式台、土間のスドを見ていただき、我われの修復の考えに問題があるのか質問しました。

 それから、建具の納まりに関する問題点を先生が説明されました。先週木曜日に池田社長と議論されたのと同じ内容です。柱に歪みや倒れが発生していて建具の納まりが悪くなっており、これをどう修正するか、というのが最大の課題です。やはりウチモン(打物)で処理するのが一般的だということですが、それを柱に打ち付けるのではなく、建具に打ち付けるのがよいという結論に至りました。
 さっそく実演です。まずはお二人の道具を紹介していただきました。岡村さんは一部でしたが、山本さんはひごろ使われている道具をほぼすべてもってきておられました。なかなか圧巻です。と、ここでお昼になり、全員でそば切り「たかや」で美味しい蕎麦を食べました。

05山本の道具


 1時からはただちに作業再開。実演に使った建具は加藤家のものではありません。タクオさんが但馬の工務店に勤務されていたとき、廃棄物となった「襖百枚」のうち20枚ばかりASALABであずかっており、それを使って框と引手金具の解体、日本画や書が書かれた貼り紙の切り取りを実演していただき、ビデオで録画したのです。まず、山本さんが使われた用語に倣いますと、框は上側が「上棧(カミザン)」、下側が「下棧(シモザン)」、左右を「框(カマチ)」と呼びます。一方、岡村さんは左右の長軸部材を「縦棧(タテザン)」と呼ばれていました。
 はじめに縦棧の隅から椹木(アテギ)してゲンノウで叩きはずしていきます。はずすとねじ釘が何ヶ所か打ち込まれていました。古い建具では蟻の継を使うようです。引手金具は、椹木で内側から叩くと取手がはめ込まれている部分に少し隙間が生まれ、金具を固定している小さな釘があらわれ、その釘から金具を外すようにして取ります。あっと言う間に一通りの工程が終了しました。もう一つの古めかしい襖には表装に日本画や書が貼り付けてあり、それをカッターナイフで切り取りました。この作業ぐらいなら学生でもできると思います。表装については、専門の業者に下請けに出して貼り直してもらうそうですが、問題は裏紙に古文書が使われていることで、一家の歴史どころか日本の社会史を覆すほどの文献が埋もれていることがあり、なんとか保存したいと先生は述べられましたが、業者はいやがるだろうと山本さんは答えられました。
 襖の蟻 金具取り 取除いた金具



04岡村の修理(障子)

アフター 山本さんが襖の框外し作業をされている横では、岡村さんが障子の組子を復元されていました。本人は「あまり見ないでくれ」と言われるのですが、こちらも記録を取らねばならないので、じろじろと観察させていただきました。岡村さんは「職人は手元だけ見せるものと教わっている」から、「あまり顔を映してほしくない」とのことでした。山本さんも岡村さんも作業中はものすっごく集中していて、質問するのも躊躇うほどでした。職人の気迫をひしひしと感じ、話しかけてはダメだと思わされました(それでも勉強のため質問しましたが・・・)。
 明り障子の組子の材が一部破損していたので岡村さんはそれを作りはじめたのですが、板材が太かったため、カンナで削っていきました。さすがは数奇屋大工、ものすごく丁寧で早い。それでもまだまだらしく、親方などにはいつも注意されているそうです。私も何度かカンナを使ったことがあるのですが、そうそうまくいきません。厚さのバラつきは何とかなるのですが、精度が悪く、きれいな仕上がりにはなりません。コツを聞いてみましたが、うまくなるには練習しかないようです。

職人

 山本さんは建具の縦桟に貼り付けるウチモン(打物)の作業に移っていきました。本来は木材を両面テープとボンドで貼り付け、仮釘で固定し1日置いてからカンナで削るそうです。始めから釘で固定してしまうと、カンナをかけている時に釘を削ってかんなが壊れるとのことでした。細かい調整をしながら、少しずつウチモンを削りこんでいきます。柱の横に襖をおいてみると、はじめはあきらかに隙間があったのに、、その隙間がなくなっていました。今回お手本として作ってもらいましたが、果たして学生にこのような仕事ができるか微妙であり、先生はお二人への発注を考えられているようでした。
 組子の製作を終えた岡村さんは奥座敷・ナカノマ境の小壁がだれてきているのをみて、ジャッキと角材でいったんそれを上に押し上げ、墨壺の糸で水平を図りました。柱間中央の束の部分に上部荷重が手中するので、鴨居の中央が下がってしまい、両脇の襖は納まるものの中央2枚の襖は納まらなくなってしまっているです。鴨居の上に短い小壁を挟んで欄間が嵌め込まれています。小壁は小舞壁では木摺板を下地としており、鴨居の溝から何本か長いネジを木摺板まで打ち込んでいることが分かりました。岡村さんはそのネジを外し、柱間中央の鴨居溝から束に向かって打ち込みましたが、鴨居の沈下が元に戻ることはありませんでした。先生とも相談の結果、柱間の中央には取り外し可能な半柱を立てるしかないのではないか、というアイデアも示されましたが、これについてはしばらく保留になりそうです。

鴨居


 最後に今後の方針を決めました。

1)まず、柱間すべての建具の納まりを再チェックし、エクセルの一覧表で示す。
  とくに打物のサイズについてデータをまとめ、山本さんと岡村さんに送る。
  打物は基本的に柱ではなく、建具に貼り付ける。
2)二人はそのサイズにあわせて打物の加工を職場でおこなう。この際の加工は
  やや大きめにしておく。
3)一方、襖については県内の業者に表装の見積もりを依頼。高すぎるようなら、
  山本経由で岡山の業者に依頼する。日本画や書の部分の切り取りについては、
  学生でできないことはない。
4)第2回公開ワークショップ(9月中旬以降)で主任技師の指導を仰いだ上、岡村・山本が
  打物の製作・貼り付けを担当する。
5)左官工事の公開ワークショップ(第1回)は8月中に開催し、学生主体で壁塗りをおこなう。

 上に示したように、学生と魯班営造学社技術員は来週以降、建具ズレ実寸データの一覧表を作成するとともに、土壁の練り、土台下の石詰め、ロフトの階段の修景などをコツコツとおこなっていくことになりそうです。もちろん2度の公開ワークショップの準備も進めなければなりません。

 今回作業する二人の先輩を見ていて、ただただ感嘆の連続でした。先生は建具の修復は学生には無理とおっしゃられていましたが、あまりにもお二人の作業がおもしろそうだったので、目立たないところでも構わないから何箇所かは自分たちの手で修復してみたいと思いました。まずは、17日のゼミでお二人の録画を教材として全ゼミ生にみてもらうところから始めることになるでしょう。問題は山積みですが、研究室一丸となって加藤家をよりよい文化財にしていきたいです。 (4年 黒猫)

07ナカダレ01ボルト


  1. 2009/07/16(木) 00:12:13|
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