第8章 馬道婆の呪法p.48-53:小山訳
1.やがて元妃(元春)は多くの姉妹達と賈宝玉に大勧園に転居するよう命を
下した。薛宝釵は「傷「蕪苑」に引越し、林黛玉は「瀟湘館」に住み、賈宝玉は
「怡紅院」、李恕lは「稲香村」に住み、迎春、探春、惜春はそれぞれ「綴錦閣」
「秋爽斎」「蓼風軒」に分かれて住んだ。
2. ある日、賈宝玉はとりとめもない悩みが湧き上がってきた。若い召使の茗烟は
それを見て、読むことを禁じられている書物の一つである『会真記』を彼のため
に探してきた。
【セリフ】
茗烟:「お坊ちゃま、どんなことがあっても他人に見せてはなりませんよ!」
3. 陽春三月、賈宝玉は桃花の下の石の上に座って、『会真記』を読んでいた。
春風がすり抜けて往き、桃花の多くが散り落ちた。
4.賈宝玉は落ちた花が踏みにじられるのを恐れ、すぐに花びらを(着物の裾で)
くるみ、池の畔までやってきて(裾をふるって)水中に入れたらどうかと考えて
いた。すると、林黛玉が庭鋤を担ぎながら歩いてくるのが見えた。
5.林黛玉は言った。
「あなたにはここらへんの水が清らかに見えるかもしれませんが、
民家が軒を連ねているところや、庶民が物売りをしているようなところまで
流れていくと、水は汚くなっていくのですよ。私は、散った花びらを拾い
集め、埋めておくための花塚(花びらの墓)をもっています。私たちが花を
塚へ埋めたほうが、汚くないでしょう。」
賈宝玉は何度もうなずいた。
6. 二人が話をしていると、例の『会真記』が(懐から?)出てきてしまった。林黛玉は
とても興味を抱き、賈宝玉といっしょにその本に目を通したいと要求し、一心不乱に
読みふけり始めた。
7.賈宝玉はそれ(二人で禁断書を読んでいること)が人に見つかるのを恐れて言った。
「とりあえず私たちは、花びらを集めて埋葬してやりませんか?」
林黛玉は夢から覚めたばかりのようになり、二人は花びらをきちんと埋葬した。
8.賈宝玉のおばの誕生日が来たので、鳳姐(王熙鳳)、薛宝釵と賈宝玉はおばの元へ
行き、長寿を祝った。王夫人だけが家に残って、賈母の面倒を見ていた。
9. 王夫人は賈環を来させて、写経させた。賈環は機に乗じて(虎の威を借りて)人に指図
するので、女中たちはみな彼に取り合わなかったが、彩霞だけが彼にお茶を入れた。
10.賈宝玉が戻ってきた。王夫人は彩霞に、賈宝玉の肩を叩かせた。賈環は、賈宝玉と
彩霞が仲良く談笑しているのを見て、ひそかに腹を立てていた。
11.賈環は賈宝玉をやけどで失明させようと思い、火のついた蝋燭を(眠っている)賈宝玉
の顔めがけてちょっと押し倒した。賈宝玉は「わあっ」と声を上げ、建物中の人を驚かせた。
12.鳳姐(王熙鳳)もちょうどその家にいて、賈宝玉がやけどさせられているのを見て、
動揺している賈宝玉に代わって賈環をこらしめた。さらに王熙鳳は言った。
「趙家の妾も、息子の賈環をちゃんと教育しないとね!」
13.王夫人(正室)は趙夫人(側室)を呼びつけて、一度怒って罵倒した。趙夫人は日頃
から王熙鳳と賈宝玉のことを嫌っていたので、さらに彼らを妬み憎むようになった。
14. 趙夫人は心の中に悪だくみが生まれ、銀貨を浪費して、「装神弄鬼の馬道婆」の
呪法を習得させ、王熙鳳と賈宝玉を殺してしまおうと思った。
15. ある日、賈宝玉と林黛玉がおしゃべりをしていると、突然、賈宝玉が叫んだり跳ね
たりしながら、わけのわからないことを喋りだした。女中達はあわてて賈母に来て
もらった。
【セリフ】
賈宝玉:「ああ! 頭がとても痛い! 私は死にそうだ!」
16. みんなが賈宝玉のことを心配していると、王熙鳳は刃物を持ちながら、庭園に突進
して入って来て、どんなものを見てもたたき切った。幸いにも幾人かの若い奥様方に
取り押さえられた。
17.気が狂って、散々わめき散らしたのち、賈宝玉と王熙鳳はすぐに昏睡状態に陥り、
目覚めなかった。賈家の人達はさまざまな治療法を試したが、どれも効き目が
なかった。とうとう賈家に僧侶と道士の二人づれがやってきた。和尚が、賈宝玉の
玉(ぎょく)を手にとって念仏を唱えたところ、ようやく二人の命を救うことができた。
【訳註】
*この二人は、天上の太虚幻境から人間界に下って、放浪しながら賈宝玉たちの
成り行きを見張っていた僧侶と道士である。
第1章を参照。
*絵本版『紅楼夢』の翻訳シリーズは以下でご覧いただけます。
『紅楼夢』翻訳
オリエンテーション 『紅楼夢』翻訳
第1章 『紅楼夢』翻訳
第2章 『紅楼夢』翻訳
第3章 『紅楼夢』翻訳
第4章 『紅楼夢』翻訳
第5章 『紅楼夢』翻訳
第6章 『紅楼夢』翻訳
第7章 『紅楼夢』翻訳
第8章 『紅楼夢』翻訳
第9章
- 2009/07/18(土) 00:01:56|
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