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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

フットサルボールの苦悩

 京都の大学でサッカーをしていたころ、わたしは工学部の学生なのに「文学部サッカー同好会」に所属していた。大学にはサッカー同好会の学内リーグがあり、文学部サッカー同好会は優勝の常連だった。いちばん弱かったのが薬学部サッカー同好会。薬学部や医学部のサッカー同好会は練習は、みているだけで呆れるほどにつまらない。おまけには、練習後には隊列をなしてのランニングだ。どこか軍事練習をみているようで、その雰囲気は体育会のサッカー部(同好会ではない、大学が正式に認めるクラブ)と通じるところがあった。
 こういう軍事練習系のチームは練習時間が長く、練習日数も多い。

 わたしたちは違った。正式な練習日は木曜の夜だけ。月曜夜は自主練習で、参加を強制されなかった。しかし、練習のための準備に首脳陣は頭を使っていた。監督は「世界最高のチームの戦術を取り入れよう」と豪語していた。たしかに、日本の大学生チームだって、ミケルスのアヤックスとかバイスバイラーのボルシアMGの戦術や練習を吸収できないはずはない。練習は短かったが、楽しかった。良いチームに所属したと今でも思っている。
 われわれのチームには高校時代の「県代表」レベルの選手が少なくなかった。浜松市代表、広島県代表、大阪府代表としてインター杯出場などの選手が顔を揃えるなかで突出していたのが京都府代表のセンターフォワード。かれはどんなチームと試合をしても必ず2点とった。1点でも3点でもなく、必ず2点であるところがおもしろい。わたしは当時、右サイドバックだったが、このセンターフォワードがいたので、強いチームと試合しても我慢できた。必死で守っていれば、いつかヤツが2点とってくれる。そう信じているからこそ、守備に集中できたのだ。
 この強力なセンターフォワードのおかげもあって、かの薬学部同好会と試合をすれば、5-0、6-0の圧勝があたりまえ。ところが1度だけ、その薬学部に0-1で負けたことがある。薬学部は弱いチームだったが、リベロ(スウィーパー)だけは別格で、体が大きく、頭も良かった。薬学部はうちのチームのセンターフォワードにさんざん痛いメにあわされてきたのだが、1-0で勝利したその試合、大柄のリベロは何度も大声で他のメンバーに指示をだし続けた。

    「あたるな! もたせとけ!! 
    そいつにはボールをもたせといたらええんや!!!」

 「そいつ」とは、いうまでもなく、うちのセンターフォワードのことである。うちのセンターフォワードのキープ力、瞬間的な速さ、シュート力は尋常ではない。その強力なストライカーがボールをもったら、ただ「壁」をつくってボールを奪いにいくな、という指示である。
 京都代表の経歴をもつセンターフォワードが、この大声の指示と指示に従って形成された「壁」のディフェンス陣に驚かなかったはずはない。「壁」はボール奪取に来ないから抜き去ることもできず、シュートも打ちにくい。いざ、ピンチになると、大柄のリベロがあらわれて大砲のようなクリアを浴びせ返す。センターフォワードは苦しみ、味方にパスを出す。リベロはしめしめと嗤う。そうして60分が過ぎ(学内リーグは30分ハーフだった)、われわれは屈辱の一敗地に塗れた。

 なにが言いたいのか、もうお分かりであろう。ピヴォ対策である。ソックスダービー第4戦、AソックスはSソックスの戦略に苦しんだ。長さ1.5mのゴールにはエアポートが仁王立ち、ピヴォがボールをもつとその前方に2~3人で「壁」をつくったままボール奪取にはむかわず、ピヴォが他の選手にパスを出すのを待った。
 あとで正直な感想を述べたのだが、前半の20分まで点をとれる気がしなかった。黒帯が奪った先取点は「奇跡」に近いものであり、先取点をとられたからといって、Aソックスは戦術を変える必要はまったくなかったのだ。われわれがエアポートに対して「前に出てこい!」と挑発したのは、エアポートをゴールラインから切り離したかったからであり、その挑発にのってポジション・チェンジをしたのが第4戦の最大の敗因である。エアポートが前線にいてもまったく怖くないし、攻めたがりのガードはゴールラインから大きく離れた位置取りをするので、隙がありありとみてとれる。捻挫を抱えていなければ、この日もピヴォは3点シュートを決めていただろう。ガードとゴールとの間にはそれだけのスペースがあった。
 

 後半の終盤、守備専従にじれたエアポートが「壁」の守備陣に対して、「もういいから、だれかボールを取りにいけ!」と大声で指示した。これは間違いである。ボールを取りにいってはいけない。ピヴォを中心とするAソックスには徹底的に攻めさせるべきだ。自分たちのボールキープ率をあげる必要はまったくなく、Aソックスにボールをキープさせ続けることで勝機が生まれる。
 キープを続けているチーム側の心理はどうなのか。相手は攻めてこない。自軍が7~8割ボールを保有している。その時間が長くなると、ゴールを死守していたバックスまでもが攻撃に参加しようという気になって中盤まであがってくる。ここで博打を打つしかない。自軍ゴール前のルーズボールを敵陣めがけて放り込み、2名がダッシュで敵ゴールに迫る。上手くいけば、カウンターで1点がとれる。

 こうして書いていると、全盛期のヴェルディを思い出さずにはいられない。1993年のJリーグ開幕前後の読売クラブ(=川崎ヴェルディ)は、ラモス、カズ、ビスマルク、北澤らスキルフルな選手をそろえて圧倒的なキープ力をみせつけていた。しかし、そのキープが点をとるためのキープではなく、キープのためのキープに陥ることがしばしばあった。その弱点を見抜いていたのが日産自動車(=横浜マリノス)で、ダービーマッチではヴェルディに連戦連勝だった。

 敵チームに戦術を授けるのはこれぐらいにして、フットサルボールについて話さなければならない。日が暮れて暗くなってからでも見やすい白いボールが必要だと判断し、アマゾン経由で「リージェントフットサルボール」を取り寄せたのだが、足になつかない。若者たちが「足に吸い付くようだ」と絶賛しているのは、かれらがドリブラーだからである。わたしのプレーの特徴は、ゴール前から前線への縦のフィードやスルーパスにあって、前線にあがってもワンツーによるダイレクトシュートをよく打つのだが、ボールが重すぎて、思い通りのコースに飛んでくれない。こんなに体重があるのに、体が -「足が」というよりも「下半身全体が」- ボールに気圧されてしまうのだ。いつものフォームで蹴ると、ボールが右に20度ばかりそれた方向に飛んでいく。
 わたしはまだサッカーをしている。若者たちはフットサルに馴化しているのに、わたしはミニサッカーをやっているのだ。あの重いボールにあわせるためには、プレーの質を変えなければいけない。この歳でドリブラーに変身するには無理があり、「スローサッカー」の精神にも反する。さて、どうしたものか。
 とりあえずボールに慣れるために、奈良にも同じボールを一つ取り寄せようと考えている。



  1. 2009/07/28(火) 14:28:32|
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OB会の誘い

浅川へ

ご無沙汰。阿形す。
われわれの解散30周年・萩原還暦を祝って
以下の要領で、兵庫県上郡町近くの人工芝グランドでゼクストン現役とのOB会を開催します。
忙しいとは思いますが、車なら鳥取と奈良の中間なので是非ともお寄りください。みんな待ってます。俺もベストコンディションで臨みます。

-阿形

> 日時: 平成21年10月17日(土)18日(日)の2日間
>
> 場所: 播磨光都(はりまこうと)第2サッカー場
>    http://www17.ocn.ne.jp/~npo-nfa/
>    *社会人用のコート1面と少年用コートが1面隣接
> アクセス: 山陽自動車道の龍野西から播磨自動車道・新宮ICから5分
>     新幹線あるいはJR山陽線 相生駅下車、バスで20分
> http://www17.ocn.ne.jp/~npo-nfa/map.htm
>
> 集合: 現地に現役は17日の午前、OBは昼までの適当なとき
>
> 宿泊: ふるさと交流館(46名まで宿泊可能)
>    http://www.city.aioi.hyogo.jp/_hurusato/
>
> 試合: 2日間4部で構成
>
> 17日の午前の部: 現役の地元チームとの交流戦
> 現役は9時30分までに現地集合
> 10:00-10:25 矢野SC vs SR91 (前半)   審判 ゼック
> 10:30-10:55 ゼック vs SR91 (前半)   審判 矢野
> 11:00-11:25 ゼック vs. 矢野SC (前半)  審判 SR91
> 11:30-11-55 矢野SC vs SR91 (後半)   審判 ゼック
> 12:00-12:25 ゼック vs SR91 (後半)   審判 矢野SC
> 12:30-12:55 ゼック vs. 矢野SC (後半)  審判 SR91
>
> 17日の午後の部: 世代別対抗戦(現役が審判) *人数によって変更あり
> 1:00-1:25 50代 vs 40代 (25分)
> 1:30-1:55 30代 vs 20代 (25分)
> 2:00-2:25 50代 vs 30代 (25分)
> 2:30-2:55 40代 vs 20代 (25分)
> 3:00-3:25 50代 vs 20代 (25分) *50代は温泉に出発
> 3:30-3:55 40代 vs 30代 (25分)
> 4:00-4:25 現役 vs 途中から来た人・もっとやりたい人チーム
>
> 18日の午前の部: 公式OB戦
> 9時集合
> 10:00-11:05 公式OB戦(現役 vs OB最強チーム)
> 11:05-11:25 公式OB戦(現役 vs OB50代チーム)
> 11:30-11:55 公式OB戦(現役 vs OB40代チーム)
> 12:00-12:25 公式OB戦(現役 vs OB30代チーム)
> 12:30-12:55 公式OB戦(現役 vs OB20代チーム)
> 12:55-13:00 OB戦結果報告・授与式
>
> 18日の午後の部: 楽しむ部
> 13:00-16:00 適当に食事してから世代を越えたチームで
>       みんなでサッカーを楽しむ
> イベント:
> 初日の試合後のペーロン温泉
> 初日の夜の中華料理やでの宴会 & 開祖--萩原茂の還暦祝いパーティー
>
> 予算:
> 各自の運賃
> 温泉--750円
> 宿泊費--1500円
> 朝食--500円
> 宴会代--5000-7000円(現役はタダ)
> グランド代--約2000円/人(現役はタダ)
>
> ということで、OBは約1万円 + OB戦賭け金 + その他
> 現役は2,750円と交通費
>
> 世代別幹事:
> 現役:  主務の小倉
> 20代OB: 神尾守人
> 30代OB: ???(サテライトを含む?)*誰か指名してくれ
> 40代OB: 俣野・野瀬
> 50代OB: 竹安
>
> 参考 50代OB東京組の旅行予定
> ------------------------------------------
> 10/17(土)東京発6:50 のぞみ101号 ⇒姫路着9:59
>       姫路発10:08 山陽快速   ⇒相生着10:27
> *10:30に相生駅に車で迎えに行く
>
> 10/18(日)相生発12:46 ひかり474号 ⇒新神戸着13:25
>      新神戸発13:45 のぞみ26号 ⇒東京着16:33
>
> 参加予定
> 現役:  13名
> 20代OB: ?
> 30代OB: ?
> 40代OB: ?
> 50代OB: 12名
>
> ---------------------------------------------
> 阿形清和
> 〒606-8502 京都市左京区北白川追分町
> 京都大学・大学院理学研究科・生物科学専攻
> 生物物理学教室・分子発生学講座
> Tel: 075-753-4200, Fax: 075-753-4203
> e-mail: agata@mdb.biophys.kyoto-u.ac.jp
>
> Kiyokazu AGATA D.Sci.
> Department of Biophysics
> Graduate School of Science, Kyoto University
> Kitashirakawa-Oiwake, Sakyo-ku,
> Kyoto 606-8502, Japan
> Tel: 81-75-753-4200, Fax: 81-75-753-4203
> e-mail: agata@mdb.biophys.kyoto-u.ac.jp
> http://mdb.biophys.kyoto-u.ac.jp/
> http://gcoe.biol.sci.kyoto-u.ac.jp/gcoe/index_j.php
>
  1. 2009/08/31(月) 09:06:35 |
  2. URL |
  3. 阿形 #-
  4. [ 編集]

阿形くん

OB会と萩原さんの還暦祝賀会へのお誘い、ありがとう!
われわれの世代だけじゃなくて、全OBが集結する会なんですねぇ。今年は、肥満対策でミニサッカーをやっていますが、フルコートで現役とやるなんて、まぁ元気がありますね、みなさん。
行こうかな、と思って、いま日程を確認しました。17日はすでに先約は入っています。18日は、文化庁等と調整中なのですが、民家修復の公開ワークショップの候補日の一つとなっています。
というわけで、若干微妙な状況です。
詳細はメールでお知らせしますので。
  1. 2009/08/31(月) 22:23:15 |
  2. URL |
  3. asax #90N4AH2A
  4. [ 編集]

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