隠岐出雲巡礼エピローグ2 全行程を終えた最終日の夕方、時間に余裕があったので、教授がアポをとられ、河本家住宅(県指定文化財)を訪問することになりました。
じつは、加藤家住宅修復プロジェクトの一環として裏門の復元をすることになっていて、
発掘調査した2007年にいったん復元図(基本設計図)を描いているのですが、類例調査をまったくしていないので、わたしとガード君で何棟が実測しようということになったのです。ついては、これまで研究室で調査した河本家・尾崎家などからスタートしようということで、まずは下見をさせていただきたく、河本家にお邪魔することになりました。
河本家の場合、
家相図があるところも大変な魅力です。家相における裏門がいったいどの方向にあり、どう意味づけられているのかを研究する材料としては抜群なんですね。幸運なことに、加藤家にも家相図が残っているので、両者を比較することもできます。
わたしは河本家住宅は初めての訪問でして、噂どおり、客間の欄間には驚愕しましたが、家相図の大きさにも度肝を抜かれました。畳二畳半ぐらいの大きさがある幕末の家相図です。ご夫婦のお話によると、家相図と現状の間取りには異なる点が何ヶ所かあり、土蔵の場所や庭の石の配置も少し違うそうです。そして、何より残念だったのは、裏門が今はもうなくなっていることでした。
教授によると、家相図は「改修設計図」の意味があるそうです。ある時点の建物の間取りや配置を変えることで、家相をよくする。そういう意図があるから、絵図の制作年の状況を必ずしもあらわすものではないそうです。ともかく非常に大きく精緻に描かれた家相図ですので、これをきちんと撮影し、CADで平面図・配置図をおこし、現状との異同点を知るところから出発するほかありません。

家相図の写真撮影や民家の再調査についてご夫婦にお願いすると快諾してくださいました。LABLOGの読者ならよくご存じだと思いますが、スローソックスのリーダーにして嘱託職員のタクオさんは河本家住宅で卒業論文を書かれました。タクオさんが大学に戻ってきたことをご夫婦にお伝えすると、それはそれは喜ばれまして、タクオさんのほうも近く挨拶にあがる予定だったそうです。そこで次回、河本家で調査するときはタクオさんにも同行してもらおう、ということになりました。

家相図を見せていただいた後、屋敷の内外をご主人にご案内いただきました。ご主人が子どものころまで裏門はあったそうです。その場所まで行ってみました。裏門自体はなくなってしまいましたが、家相図と関連付けて今後は調査としていきたいと思います。
家相図については、さらにうれしい情報がもたらされました。東隣のお宅にも、同じ家相師が描いた絵図が残っており、さっそくご挨拶にあがったところ、こちらでも写真撮影をご快諾いただきました。家相図との対比という点からいえば、隣宅の平面と配置も実測したほうがよいのでしょうね。
隣家へ移動する際、小路に面する河本家の脇門を発見しました。わたしたちが復元しようとしている加藤家の裏門と規模が近い門なので、次回の調査ではこの門を実測することになりました。

一回りした後、河本家住宅の裏庭に奥様がテーブルをもちだし、おいしいパンをいただきました。なんかヨーロッパのティー・ブレイクみたいにお洒落な感じです。手作りのパンも、ほんとうに美味しかったです。日本の場合、屋外で食事をとると、蚊が多いのが難点なのですが、蚊取線香を5巻もご用意いただき、蚊を撃退しました。
ここで奥様がチラシをもって来られました。河本家では、月に何回か朝食サービスのイベントを開催されているのです。参加料はわずか100円。貧乏な黒帯くんは、本気で参加しようかな、と言っていました(どうしてここまで来るのかな?)。古民家の活用を所有者みずから率先して進められていることについて、教授もいたく感心されていました。
最後になりますが、河本家のご主人様と奥様には、日暮れも近い時間にもかかわらず、大勢の学生をご接待いただきましたことを感謝申し上げます。次回の調査でも、ご迷惑をお掛けすると思いますが、なにとぞよろしくお願いいたします。 (黒猫)
- 2009/08/20(木) 04:20:56|
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