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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

「NPOによる文化財建造物活用モデル事業」(文化庁)に新規採択!

 今年のGWは外出もせず、デスクワークに集中し、文化庁の「NPOによる文化財建造物活用モデル事業」の企画提案書を作成していました。大学の研究室はNPOではないので申請資格はありませんが、2006年度、HOWTECに助成申請するにあたって技術者・文化財関係者等とともに「鳥取古民家修復プロジェクト委員会」を組織しています。文化庁の募集要項によれば、NPOに準ずる組織であればよいということで、「鳥取古民家修復プロジェクト委員会」の代表者として文化庁に企画提案書を提出しました。なお、ここにいう「NPOに準ずる組織」は定款を有する組織でなければなりません。
 活用モデル事業名称は以下のとおりです。

   「セルフビルド&ゼロエミションによる民家の持続的修復」

 7月3日にメールで「内定」の報せがあり、7月中旬には青木保文化庁長官名の「採択」通知が郵送で届きました。その後、「事業計画書」を作成し、これも受理され、昨日ようやくネット上の公開を許可する旨のメールが届き、ここにみなさまにお知らせする次第です。
 今年度、文化庁の「NPOによる文化財建造物活用モデル事業」に採択されたプロジェクトは全国で12件。鳥取県でこの事業に採択されたのは初めてのことでして、とりあえず責務の一端は果たしたという安堵感を抱いています。
 
 さて、「セルフビルド&ゼロエミションによる民家の持続的修復」という事業名称については聞き覚えのある読者も少ないないでしょう。H21とっとり「知の財産」活用推進事業に採択された「セルフビルド&ゼロエミッションによる古民家の持続的修復」とよく似ています。どこが違うかというと、「ゼロエミション(ゼロエミッション)」と「民家(古民家)」の二つの術語に微妙な差があるだけなんですが、これは文化庁の申請書で事業名称が20文字以下と定められていることから生じたもので、事業名は基本的に同一と思っていただいてかまいません。
 ただし、内容まで同じというわけではありませんよ。いずれも登録文化財加藤家住宅の修復をテーマとしていますが、「知の財産」のほうは修復そのものを対象としているのに対して、文化庁事業のほうはあくまで「活用」をテーマとしています。セルフビルドによる市民参加の修復こそが民家の「活用」であり「管理」であって、日々の修復活動に加えて公開ワークショップを2回開催することを唱っているのです。
 LABLOGの読者ならばすでにご承知のとおり、7月から公開ワークショップの準備を進めており、来たる8月27日(木)には第1回公開ワークショップ(左官工程)を開催します。これについては、ぜひこちらの広報をご覧ください。

 以下、「続き」に事業概要を掲載しますので、ご参照いただければ幸いです。


 「NPOによる文化財建造物活用モデル事業」事業計画書 抜粋


1.活用モデル事業名称
   セルフビルド&ゼロエミションによる民家の持続的修復
2.対象とする文化財
   加藤家住宅主屋(登録有形文化財)
3.所在地
   〒680-1151 鳥取県鳥取市倭文491
4.委託事業期間
   平成21年7月18日~平成22年3月14日
5.申請団体名称
   鳥取古民家修復プロジェクト委員会
    (浅川滋男委員長)                          
6.事務局
   〒689-1111 鳥取県鳥取市若葉台北1-1-1 
   鳥取環境大学 建築・環境デザイン学科 浅川研究室内
7.事業費
   999千円

8.活用モデル事業の概要
 加藤家住宅は鳥取藩御殿医の旧宅と伝えられる古民家で、建立年代は18世紀前半に遡る。空き家となって劣化の激しかった主屋を2006年より工務店と学生・教員が協働し「ローコスト」に徹した修復を続けている。08年度は研究費皆無の条件の下で、学生が卒業研究として「ツノヤ縁の修復」を実践した。09年度は、主任技術者・大工・建具職人・文化財関係者・地域住民等の支援・指導をうけながら、①解体された石張りカマドの復原、②放置された小舞壁内側の土塗り、③取り外された建具の再設置、④発掘調査に基づく裏門の復原、⑤竹雨樋の設置、などの工事を「セルフビルド&ゼロエミション」の理念を継承して実践し、経費節約・地域密着型の修復工事を完了させ、公開可能な状態に仕上げたい。また、作業工程における問題点を克服するため、修復再生に関わる公開ワークショップを2回開催する。

9. 活用モデル事業の背景と目的
 鳥取県は東部だけで400棟以上の茅葺民家が現存するものの、激しい過疎化のなかで空家が増加しており、その維持修復に多くの問題点を抱えている。なにより大きな問題は住み手の確保と経費の問題であり、本委員会は2006~07年度に県・市等からの研究助成等を受けて、学生が加藤家住宅主屋に居住しつつ調査・設計・施工補助に携わった。有限会社池田住研が施工を請け負い、基礎・軸部・屋根の修復を完了させたのだが、左官工事・建具修復などの内装工事の大部分が手つかずの状態のままになっている。そこで、地域の支援をうけながら、セルフビルドと廃材利用による経費節約により、残された内装等の工事を仕上げ、古民家のローコスト修復の完成形をモデルプランとして公開したい。修復への住民・学生等の参加こそが民家の特殊な活用例であり、とりわけ民家における公開ワークショップにより、修理技術を一般市民に知っていただく好機としたい。

10. 活用モデル事業に期待される効果
 2006~09年度の活動によって加藤家住宅の修復がほぼ完了し、ローコスト修復工事の全工程を公開すれば、多くの古民家所有者だけでなく、田舎ターンをめざす都市居住者の民家居住・田舎居住の指向性を強く刺激するであろう。この実験と経験は民家の保存にとどまらず、過疎地の景観保全や人口確保への貢献が期待される。日本の「地方」にとって過疎はなにより大きな社会問題であり、例えば棚田のオーナー制度に倣って、「休耕田+空家民家」のレンタル制度などを普及させなければ、山間部のあらゆる村落が限界集落化し始めるだろう。民家の居住者やレンタル者を確保するためには、劣化した民家を安全かつ快適な状態で居住可能に修復再生する必要があり、しかも、その費用は低コストでなければならない。本事業はそれを実現させるための解を模索しているのであり、またその活動のなかから、文化財建造物に対する住民・若者たちの愛着と敬意の念が深まることを期待している。


  1. 2009/08/19(水) 01:48:09|
  2. 建築|
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