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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

晋の道 -山西巡礼(Ⅱ)

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大同の善化寺

 さてはて、みなさんが少し前の教科書で習った中国はいかがなものでしたでしょうか。ほぼ間違いなく、道路を埋め尽くす自転車の写真が掲載されていたことと思います。そのようなイメージを持ち続けて20余年。今回、初めて中国の中心市街地に来たわけですが、今や自転車の数は指を折るほど。北京から離れた大同でも自動車が中心で、その脇を数台の電動バイクや電動自転車が往来する時代。なんだか田舎者が都会に出てきたような気がして、恥ずかしくなってしまいました。

 さて、雲崗石窟を見学した後、大同南門里にある善化寺を訪れた。昨日の故宮もそうだが、市街地を歩いていていきなりこういう歴史的建造物の固まりが現れるのだから、建物の規模や印象には思わずたまげてしまう。
 善化寺は遼・金時代に伽藍が整備された寺院で、全体平面は今も当初の規模を保っている。主要な堂・門を中軸線上に配置しており、前方が「山門」、中間が「三聖殿」、後方が「大雄宝殿」となっている。この軸の周囲を回廊が巡っており、東西回廊の真ん中にそれぞれ「普賢閣」と「東楼」が建つ。このうち、大雄宝殿は遼代の建築で、普賢閣、三聖殿、山門は金代のものだが、東楼や回廊は最近の復元である。この日(2日)も、ところどころで復元整備の工事をしていた。

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P1010630-1_20090903050758.jpg 山門は間口五間の長方形平面で大壁造をしている。単層の寄棟屋根で外観はずっしりとした荘厳な印象を受ける。柱の上部には粽がみられ台輪があり、組物においても尾垂木二本付の三手先で、日本でいう禅宗様とよく似ている。一方、内部は化粧屋根裏のためか外観に比べて軽やかで、左右に立つ四天王像がより一層大きく見える。
 山門をくぐると間口五間の「三聖殿」があらわれる。まず目に入ったのはウワサに聞いた「斜栱」だ。斜栱は扇垂木上に材がひろがる独特の組物で、日本ではお目にかかれない。三聖殿のものは三手先の大型で、ちょうどハスの花が咲いたような印象を受けた。これが中備となって扁額の左右にあるのだから装飾的にも華やかだ。主な斗栱は尾垂木二本付の三手先で、屋根は山門と同様に寄棟、鴟尾、走獣がある。内部は、「華厳三聖」の塑像が並んでいるが、その来迎柱は吊束のようになっており、その手前に別の柱を立てている。ここで思い出すのは見寺の復元だが、見寺本堂の場合、来迎柱の礎石位置がセットバックしていたため、類例に倣って手前に太瓶束を設けた。しかし、三聖殿の架構の場合はその逆で、この意味はまったく不明だ。また、入ってすぐの左右の身舎柱が省かれており、そこを太瓶束のようなもので架構を組んでおり、礼堂を思わせる。しかし、同じ列の中央二本の身舎柱は存在している。
 以上、とても不思議な架構をしている。小屋組はというと、二重虹梁を立ち上げ、その上に豕叉首を組み、屋根を支えている。教授は叉首のことをもっぱら気にされていた。
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 三聖殿をぬけると、左右にそれぞれ「普賢閣」と「東楼」が見える。普賢閣は二重の楼閣で、屋根は入母屋造。薊県の独楽寺観音閣がこのスタイルでは最古のものだと教授に教えていただいた。東楼は普賢閣に倣って復元されたもので様式は金代のようだが、新築とあって見た目はやはり新しい。
 復元された回廊を通り、一番高い基壇のうえに建つ「大雄宝殿」へ。建物の前には広大な月台があり、その左右に「鐘亭」と「鼓亭」がある。大雄宝殿は間口七間の単層寄棟造で、基本構造は三聖殿と同様に二重虹梁を立ち上げ、その上に豕叉首を立ち上げる。内部の中央間の部分には「藻井」という八角形の装飾天井があるが、その他はすべて化粧屋根裏。また、扁額に隠れているが、三聖殿とは異なり、組物に五手先V字形の斜栱を確認した。斜栱は装飾的であると同時に、構造的にも優れたものであろう。また、隅の組物の納まりも複雑で、中備(巻斗)の間隔が急に狭まり、組物が密集している。
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 その後「九龍壁」を見学し、「大同市博物館」に向かう途中、華厳寺の復元と都市の整備を目の当たりにした。新しい大同市長の方針で城壁や寺院の復元が盛んにおこなわれているようだ。善化寺の復元建物もこれに関係しているかもしれない。この事業にともなって、いままであった四合院住宅や胡同は解体、撤去されている。大同は国家が「歴史文化名城」に選定している歴史都市であり、古い町並みや埋蔵文化財に敬意をもっていると思っているのだが、現実にはそれらを破壊し、新しい「復元建物」を建設し続けている。この歴史都市の未来はどうなるのだろうか。(Mr.エアポート)

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  1. 2009/09/06(日) 00:29:13|
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