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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

晋の道 -山西巡礼(Ⅳ)

近景


 応県木塔

 懸空寺を巡り、その圧倒的な佇まいと壮大な景観に興奮冷めやらぬ一行は、渾源市街地の永安寺(元代建築/全国重点文物保護単位)を経由したあと、昼食をはさんで応県の仏宮寺釈迦塔(全国重点文物保護単位)に足を運んだ。

 この仏宮寺釈迦塔は俗に「応県木塔」と呼ばれ、建立年代は遼の清寧二年(1056年)に遡る。中国最古の木造塔であると同時に、世界最大の木造塔としてあまりにも有名であろう。八角五重塔で初重のみ裳階つきだが、内部は複雑で各層の中間に暗層をもうけており、実際には9層の構成。八角形平面の一辺はそれぞれ三間で、初重のみ大壁で柱を隠す。
 軒を支える組物は、各層さまざまな手法が施されている。二手先・三手先・四手先を層によって使い分け、二層では中備に斜供を使っている。各層の斗供の微妙な違いは、規則的な木組の中に有機的なやわらかさを醸し出している。
 世界最大の木塔の規模は、初層直径が約30メートル、高さは相輪を含めると67メートルにも達する。一体なぜそのような高さが必要であったのか疑問に思っていたのだが、遼が北宋に対して「監視塔」の意味合いで建てられたとの説もあるらしい。たしかに、仏塔というよりは城郭の隅櫓と言ってしまった方が当てはまるかもしれない。

全景

 ただ、その木搭に一歩足を踏み入れると、内陣には高さ11メートルの釈迦像が鎮座しており、八角形の内壁には釈迦像に似た壁画が描かれている。早速、教授が写真に収めようとシャッターを切ると、なにやら監視員が近寄ってきた。案の定、撮影禁止のようである。ただ、ここだけの秘密にしてほしいのですが、田さんも交えて交渉すると、パンフレット(7元)を買ってくれれば、フラッシュなし撮影してもよいという。なんともいい加減なものである・・・
 とはいえ、一同さっそうと7元を握り締め、パンフレットを購入した。
 初層も足早に見終え、急勾配の階段を上ると暗層にたどり着き、ここで、教授から構造についてご説明いただいた。

暗層 この暗層というのは、1層にとっての天井裏に当たる部分になり、大規模な木搭を構造的に安定させるために非常に重要な部分である。その構造は、一言でいうなら校倉造。太い横木を相欠にして4~5段積み上げており、これが応県木塔の構造的安定性に大きく寄与していることは疑いない。側柱筋でも通し肘木を多用しているのは、校倉造の応用と言えなくもないだろう。なお、軒の中備にあたる箇所には、内部から控え柱と巻斗で補強している。このほかにも、各所に筋交を用いて構造の強化を図っている。また、暗層の架構は全体に木柄が太く、外観とはうって変わって城郭建築のような荒々しい印象を受けた。

破断台輪 2層にあがると周囲に高欄付きの縁が廻され、内陣には、釈迦三尊と脇侍菩薩の五体の仏像が安置されている。その開放的な空間構成もさることながら、目を奪われたのが、破断された台輪であった。荷重がうまく配分されず、集中してしまった箇所が圧縮により破断してしまったのだろう。また、斗供についても巻斗が欠損している箇所が見受けられた。聞くところによると、今現在、東北に22度近く傾いているという。もともと柱が内転びにはなっているものの、各所の傾き具合の違いが目視でも確認できるほど顕著であった。あきらかに危険な状態である。(次ページ写真参照)


傾斜

 90年代、奈文研と国家文物局(中国文物研究所)の共同調査団の一員として応県木塔を訪れた教授のお話では、その当時よりも明らかに柱の内倒れが強くなっているという。その現状を目の当たりにした教授は、厳しい顔で「これは人をあげちゃあかんで・・・」と危惧されていた。なお、90年代までは5層まであがれたが、いまは2層めまでしかあがれない。
 
 先日のエアポート君と重複してしまうが、ここ応県木塔周辺でも、多くの伝統的な村落が破壊され、境内でも大雄宝殿などの復元建物が続々と新築されている。こういう文化遺産をめぐる環境整備ばかりが進展し、肝心の応県木塔の修復が遅々として進まない現状に若干いらだちを覚えた。
 そんなことを考えながら応県木塔を後にし、五台山へと向かった。その道中、黄土高原の景観もすばらしく、出発前に先生が「バスからの風景は、ほとんど文化的景観ですよ」と言われていたのを思い出す。円仁もこの風景を目にしていたのだろうか。彼もさぞかし感嘆しているだろう、そう思い目をやった先には、すでに夢の中の黒帯君の姿があった。(タクオ)

五台山風景


  1. 2009/09/08(火) 00:53:25|
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